第2話 秒で転入させられた。
七月一日。午前五時、あたしは誰もいない部屋の中、目覚める。……新たな命を授かってから、早十六年……。
「うん! 今日のあたしも可愛い!!」
鏡に映るあたしを見て、我ながら最強に可愛いなって思う。肩まで伸びたこのツインテールに、一番の拘りポイント、胸!! ……あたし、頑張ったよ!!
大きすぎるのはあたしのメスガキ論から却下!! 目指すはDカップ!! 大き過ぎず、小さ過ぎず、絶妙なラインを攻めるのだ!! っと幼少期時代から奮闘していた結果。
メスガキに最適な、理想の体を作り出すことに成功したのだ! これにはあたしも大満足♡
今のあたしは最近話題に上がっていた世界一位になったと報道されているモデル以上だ。やっぱりあたしは可愛い~♡
などと、鏡の前でくねくね体を動かしながら自惚れしまくっていると、時刻は既に午前七時。あたしと学園の距離を計算して、七時四十分までには登校しなければならない。
「やっば!? こんなことしてる場合じゃあない!!」
だが、いくら登校する時間が迫っていようが紫外線はあたしの天敵だ! しっかり肌を予防して高校デビューしなくちゃね!
……そして、みんなは気が付いただろうか? 七月に、あたしは初登校。
これには深いわけがあるので! あたしの今までの経験をダイジェストに紹介してあげる♡
幼少期: あたしが生まれたのは、あたしが死んだ直後だということが病室のテレビ番組から知る。
小学生: メスガキになるべく一段と奮闘する。……具体的には身体の最終調整。(運用様含んでる。ていうかほとんど運)
中学生; 社長だった両親が他界したことで、政府に影響を与えることもできる会社の跡取りに、あたしが参戦することになる。
現在: 社長の地位なんていらないあたしは、もう一人の候補者である従妹に、「権限あ~げる♡」 と返事したところ、あたしの優勢を崩そうとしていた従妹の嫌がらせによって、転校させられる。
あたし……素直に渡したんだけどなぁ~。いったいどうしてこうなったのやら。
まぁ、その後に「ごめん! まさかうちに権限くれるなんていうと思わんやん! か、代わりに衣服住宅は保証したるで!!」って、散々謝ってくれたから、寛大なあたしは許してあげたってわけ♡
……はい! なんて話をしていたら時刻は七時半!! さっさと着替えてレッツラゴー!!
◇◇◇
結局間に合わなそうなので、あたし専属のメイドちゃんに車で送って貰うことにします。反省はしません。あたし、メスガキなので♡
「お嬢様!! 反省してませんね!!」
なんて妄想を繰り広げていると運転中のメイドちゃんに叱られてしまった。
こちらの女性は「メイドちゃん」。数十年一緒に生活しているが、いまだに本当の名前も、年齢すら教えてくれないクールビューティなメイドさんだ。
「反省も何も、あたしを転校させたのはそっちでしょ~?♡ あたし、道わかんなくなっちゃった♡」
「後半は嘘ですが、確かに転校させたのはあちらですね」
予想していた反応と違うのだが。……あれ? あたしってそんなに信用無いですか?
「ちょっとはあたしのこと信用してくれてもいいんだよ?」
「えぇ、私もそう思い2年前から取り組んではいますが……全て裏切られました」
上目遣いで喋りかけてみるも、そもそも運転中なのであまり効果はなかったし、
あたしに手痛いダメージを与えてくる始末。
よし、次この車が赤信号に巻き込まれたときに、仕返しに精一杯のメスガキを披露してあげることにする。
(ふふ……悶絶するがよい!)
というわけで、あたしは赤信号になるまで、メスガキゼリフを考えながら、静かにその時を待つ。
そして、遂に――
「……くっ! 時間がないというのに!!」
――時はきたのだ!!
あたしは素早く助手席から運転席へと身を乗り出す。
「お、お嬢様?」
あはっ♡ 困惑してるね♡
あたしはメイドちゃんに追い打ちをかけるようにメイドちゃんの耳まで顔を動かし、ねっとりと話すのだ。
「ほらっ! はやく学校に連れてってよ~♡ 駄メイド♡」
「……っ!!」
歯を食いしばる音が聞こえた。こ、これは、成功か!? と思ってたのもつかの間。
「お嬢様、はやく席についてください」
と、一切表情を変えることなく、淡々と語りだすメイド。
あたしは渋々ながらも座席に座り直す。正直、この結果は予想通りだった。
なぜなら、このように時折メスガキムーブでデレを誘ってみるも、全て同じような結果になってしまうからだ。……つまり、あたし完全敗北してるの。
まぁ、今みたいにメイドちゃんの耳が少し赤いような時もあるけれど、多分気のせいでしょ。
◇◇◇
なんやかんやで学園まで到着したあたし。ものの数分で抱いた感想を伝えようと思う。
(……でっか!?)
校舎はまるでお城のように広く、正面玄関には綺麗な庭が設置されている。
いや、綺麗などとおこがましい程に美しい風景があたし達を出迎えていた。
正面玄関では、学園長の高島 安田さんが元気よく、あたしの登校を待ちわびていた。
「ごきげんよう。貴方が
「おはっようございま~す♡ そうです。あたしが
「はっははは、これはこれは、元気がよいこですなぁ!」
……ふ~ん。白髪なおじいちゃんだけど、優しそうなおじいちゃんみたいだね。
「さて、立ち話もなんですから、早速、由さんが通うクラスに案内させていただきますが、宜しいでしょうか?」
この質問はあたしに対してじゃない。メイドちゃんに向けたものだ。
「はい。お嬢様をよろしくお願いいたします」
「承りました。それでは由さん、どうぞこちらへ」
というわけで、学園長に連れられてあたしが通うクラスへと歩みを進める。
果たして、メスガキムーブが弱そうな人間はいるのかな?
◆◆◆ 第2話 秒で転入させられた。(終)
TSメスガキは秒でわからされる。 YB @Furi-za5332
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