第17話 告白

 アリーシェはサクヤに呼び出され、サクヤがいる執務室にいた。


「仕事中なのに、呼び出してしまって申し訳ない」

「はい、まあ、大丈夫です。それで、何用ですか?」

「できたら明日、王都にでも一緒に出掛けないか?」

「いいですよ」

 

 誘いを断られると思っていたサクヤは、アリーシェの返事に拍子抜けする。


「まさかいいと返事してくれるとは思っていなかった」

「そうなんですね。では、私は仕事がありますので、失礼致します」


 アリーシェはサクヤにそう告げてから部屋を後にした。部屋に残されたサクヤはため息をつく。


「はぁ…… 早く明日になって欲しい」



 翌日の昼前頃。アリーシェはサクヤと共に王都に訪れていた。王都の街並みを歩きながらアリーシェとサクヤは会話し始める。


「しかし、アリーシェと二人きりで王都に来れるなんて、嬉しいな」

「そうなんですね」

「ああ。あ! アリーシェ、何か欲しい物はないか?」

「欲しい物ですか…… んー、特にないですね」


 サクヤはそんなアリーシェに、何故か満面の笑みを向けて告げる。


「そうか、じゃあ、今日は俺の買い物に付き合ってくれ!」

「いいですよ」

「よし、では、逸れないように手を繋いでおこう!」

「え?」


 アリーシェの返事を待たずにサクヤはアリーシェの右手を握ってくる。アリーシェはサクヤに握られた手を離そうとするが、サクヤは逃がすまいとアリーシェの手を強く握りしめてくる。


「サクヤ王子殿下、強引すぎます!」

「まあ、いいだろう? 今だけだ。許してくれ」


 そう言ったサクヤの顔がどことなくカッコよく見えたアリーシェは、思わず顔を逸らし、横を向く。


「仕方ないですね。今日だけですよ?」

「ああ、ありがとう。アリーシェ」



 お昼はカフェでランチをし、その後も王都にある店を巡り歩いたアリーシェとサクヤ。

 あっという間に時間が過ぎていか、気付けば空が茜色に染まりつつあった。


「サクヤ王子殿下、そろそろ帰りませんか?」

「ああ、そうだな。アリーシェ、帰る前に少しだけ行きたい所があるんだがいいか?」

「行きたい所ですか?」

「ああ、此処からそんな遠くない場所にあるんだ」

「そうなんですね。わかりました。いいですよ」


アリーシェがそう言えば、サクヤから嬉しそうな顔で、ありがとう。と礼を言われる。



「着いたぞ」


 サクヤは行きたいと言った場所に着いたことをアリーシェに伝える。アリーシェはサクヤが行きたいと言っていた場所が自分が小さい頃、よく遊んでいた公園だったことに、少しばかり驚く。


「どうして此処に来たかったんですか?」


 サクヤが行きたいと心から思って来た場所ではない気がして、アリーシェはサクヤの顔を見て問う。


「欲しい物はないと言っていたから、懐かしい場所に連れて行ってやろうと思ってな。勿論、俺もアリーシェが小さい頃、遊んだ公園に来てみたいと思っていたがな」

「そうだったんですね。ありがとうございます」


 アリーシェは嬉しそうに礼を伝えれば、サクヤはアリーシェを見て優しく笑う。


「俺はアリーシェが好きだ。いつも伝えているが、俺はこの先もアリーシェ、お前と一緒に生きていきたいと思っている」

「なんかプロポーズみたいですよ」

「ああ、そうだが? 俺の婚約者になってくれないだろうか?」


 いつもとは違う真剣な顔で、サクヤからの思いが込められた言葉を聞いたアリーシェは、いつもみたいに軽く受け流すことはできないなと思った。


「少し考えさせてください」

「ああ、わかった」



 その日の夜。

 アリーシェは中々眠れずにいた。いつもとは違ったサクヤの真剣な顔が未だにアリーシェの頭から離れない。


「あー、眠れない。ほんと、どうしよう……」


 アリーシェはサクヤのことが嫌いな訳ではないが、自分もサクヤのことを好きなのかが、まだよくわからないでいた。

 考えているとますます眠れなくなる。と思いつつも、アリーシェはサクヤのことをどう思っているのか考えてしまう。


「私、サクヤ王子のこと嫌いではないんだよなぁ……」


 暗い部屋の中、アリーシェはベット寝転がりながら呟いた。

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