第2話 頼まれたこと

 アリーシェが王都に行くことになったのは、アリーシェが騎士として仕えるリースティアヌ王国の第一王女ティアナから頼まれたことを引き受けたのが事の始まりだ。

 ティアナから頼まれたことは、王都の文具店でティアナが頼んだいたインクとガラスペンが届いたから、代わりに取って来て欲しいというものであった。

 ティアナはやらなければいけない仕事がまだあって、自分で取りに行くことが出来ないから、ティアナの騎士の一人であるアリーシェに頼みお願いした訳である。

  

 王都に着いてから、アリーシェは文具店に赴き、ティアナが頼んでいたインクとガラスペンを受け取った。

 用を済ませたアリーシェが文具店を後にし、歩き出そうとしたその時、背後から自分の名を呼ばれ振り返ると、そこに立っていたのはこのリースティアヌ王国と第一王子であるサクヤであった。


 そして現在。


「すいません。サクヤ王子殿、私はこれから行かなければならない場所がありますので、ここらで失礼します」

「待ってくれ! 俺も付き合おうじゃないか」

 

 アリーシェは付き合わなくていい。お願いだから付いてこないで欲しい。と心の中で呟き、サクヤに軽く会釈してから足早に歩き出す。

 

「待ってくれ!」


 サクヤの声がアリーシェの耳に届くが、アリーシェが足を止めることはなかった。

 


 サクヤと共に城に帰ってきたアリーシェは王都の文具店で受け取ったインクとガラスペンをティアナに渡しに行こうとしたが、サクヤに手を掴まれたことにより歩き出そうとした足を止めざる得なくなる。


「アリーシェ、今度、一緒に出掛けようじゃないか」

「はい?」

「断られると思っていたんだが。言ってみるものだな! では、後で空いてる日を教えに行く。またな」


 サクヤはアリーシェにそう言い残し立ち去る。

 アリーシェは遠去かるサクヤの背中を見つめながら、えっ?と声を上げる。


「え、待って、どういうこと? 私、一言もいいって言ってないんだけど……」


 どうしてこうなった!とアリーシェは頭を抱えたい衝動に駆られたが、我慢し歩き出す。夏の暖かい日差しがアリーシェの姿を照らしていた。

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