第3話 逃亡

 夕方頃、アディと共に家を後にしたシェラは、最初の目的地であるリビアーヌ国へ迎う為、港へと歩みを進めていた。

 

「リビアーヌ国へ逃げても、追っ手は来るかもしれない。だから、リビアーヌ国の港〈ルダン〉に着いたら、リビアーヌ国の左端にある港〈ルドリア〉に迎う」

「わかったわ。確か、港のルドリアから、ルパニア国行きの船が出ているわよね」

「ああ、出ているよ」


 ヴァルローゼ国の港から、リビアーヌ国行きの船はいくつか出ており。リビアーヌ国とヴァルローゼ国は同盟国である。その為、捕まる可能性が高くなるかもしれないと少しばかり不安になったシェラは俯きがちに呟く。


「リビアーヌ国の左端にあるルドリアまで、無事、辿り着けるかしら」


 もし、捕まってしまったら、自分は処刑されてしまうかもしれない。目の前にいるアディも逃亡に協力した罪に問われてしまうだろう。


「大丈夫だよ、シェラ。何があっても絶対に、俺は君を死なせたりしない」


 強い気持ちが込められたアディの言葉に、シェラは顔を上げて、隣を歩くアディを見るとアディは優しい笑みを浮かべていた。



 彼女が死んでしまう度に、俺は、彼女と出会った日に戻る。彼女が死なない未来を作る為に。

 

 一度目、初めて彼女と出会った世界線で、俺と彼女は、リビアーヌ国行きの船に乗る前に、彼女を追って来た第一王子の騎士であろう者の手によって殺された。

 二度目は、リビアーヌ国に着き、リビアーヌの左端にある港に行く途中に、追っ手の騎士達に追いつかれ、俺と彼女は捕まった。しかし、彼女だけが連れて行かれてしまい。第一王子を殺したという罪で処刑された。


 彼女だけが死んでしまった二度目の世界線で、俺は自分を責めた。何があっても絶対に守ると言ったのに、守ることが出来なかった。

だから、次は自分の命に変えても彼女を守るとそう強く誓ったのだ。


 三度目は、リビアーヌ国行きの船の中に潜んでいた第一王子の騎士達の手によって、彼女が殺されそうになりかけたが、俺は彼女を守り命を落とした。だが、彼女もその後、亡くなったことを俺は知っている。意識が朦朧とする中、彼女も騎士に剣を突き刺されたのが見えたからだ。


 そして、四度目。

 四度目は何故か、彼女が倒れていた道に彼女の姿はなかった。何かがおかしい。そう感じた次の日の朝。新聞の記事で、彼女が処刑されたことを知った。


 俺は自ら命を断ち、また過去に戻った。そして、俺はまた彼女と出会う。今度こそは、彼女も俺も死なない未来になりますように。そう強く願って。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る