戦☆国☆乱☆世
いそガバ
第1話 タケダ=シンネン
23世紀、半グレと中国系暴力団の跋扈する亡国・日本に、不良が2人。圧政に苦しむ2人は、暴君タケダ=シンネンの討伐を決意する。
***
ヤマナシの夏は暑い。村長によると、昔よりもずっと暑くなっているようだ。フジサンがもうもうとした土埃の向こうに微かに見えた。
コウスケが乾いた地面をほじくりながらいう。
「タバコ、ないなあ」
ケンジが応えた。
「それよかアヘンがねえんだよ、どうするんだよ」
「そういえば、いま何月だっけ?」
「9月だよ、間抜け」
「げ、そろそろじゃないか」
そろそろ、というのは、年貢の上納のことだ。ここはヤマナシの中でも高原地帯になっているところで、アヘンがたくさん栽培できる。村人たちはそれを年貢の代わりにしていた。そして毎年、9月の末ごろになるとタケダ=シンネンの手下がアヘンを取り立てに来るのだった。取り立てが毎年厳しいので、村は豊かになれずにいた。育てたアヘンを高く売り飛ばせば村人は全員大金持ちになれただろうに。
タケダ=シンネンは30年ほど前にトーキョーからやってきた成り上がりの半グレで、チューゴクとかいうところで、ヤクザをやっていたらしい。昔、トーキョーとヤマナシの同盟があった頃はあの辺りの噂話も入ってきたが、今じゃ全く聞かなくなってしまった。なんでも、おおむかし、ヤマナシにはタケダシンゲンという偉い人がいたそうで、それを聞いた半グレはタケダシンゲンを名乗ろうとしたが、もとが日本育ちでないので聞き取れず、シンネンになってしまったそうだ。
ケンジが言った。
「ったく、本当にどうすんだ。こうなったら村ごとナガノあたりに駆け落ちするしかねえぞ」
この年の夏の暑さは尋常ではなく、聞くところによるとフジサンの頂上の雪がぜんぶ溶けてしまったらしい。それほどの暑さのせいでアヘンもほとんど萎れてしまって、肝心の蕾をつけなくなってしまった。それで、隣の村でも何人か国境を超えて逃げ出す人が出たらしい。シンネンは国境に関所を設けていて、捕まると酷い目に遭うなんて噂もある。
コウスケがおもむろに口を開いた。
「返り討ちにするってのは」
ケンジが聞き返した
「は?」
「だから、返り討ちにするってのはどうだろうね。さっき、おじさんから聞いたんだけどね」
「ああ、あの気の狂ったジジイだな。ハルマゲドンとかなんとか言ってた」
最近は、ヤマナシにも流浪の僧が多くやってきている。皆、ハルマゲドンの到来やら、念仏を唱えて救われることなどを喚いていて、鬱陶しいことこの上ないが、百姓はこんなバカげた物語でも信じてしまうらしい。
「そう、そのおじさんだよ!今年のシンネンの手下はコメを食えずに弱ってる上に、見かけだけ良くするために重い鎧と先祖代々伝わるロケットランチャーを担いでくるから、倒そうと思えば倒せる、そのおじさんはそう言っていたよ。じっさい、オーツキの街ではシンネンの手下がなぶり殺されたらしいよ」
ケンジは普段ボーッとしていて、目に入った人物を片っ端から罵ることくらいしか能が無いが、人を思いっきり殴ることと薬をやることは大好きだ。ケンジはそれらに関することになると本気になる。コウスケの話を聞いていたケンジが声色を変えて言った。
「おい、コウスケ、そのジジイを追いかけるぞ」
「なぜ?」
コウスケが聞いたときにはケンジは土埃の舞う道を壊れかけの自転車に乗って疾走していた。コウスケもそれを追いかける。
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