第28話 義妹と一緒に登校

 いつ寝たのか覚えていない。

 起き上がると、外は青空が広がっていた。……あぁ、もう朝か。

 そういえば、詩乃は……いない。


 もう起きていたのか。

 シャワーでも浴びているのかなと振り向いてみると、そこにはバスタオル姿の詩乃がいた。



「…………あ」

「あっ、お兄ちゃん。お、起きてたんだ……」



 一気に顔を赤くする詩乃は、お風呂へ逃げた。


 ……ま、まさかこのタイミングで出てくるとは思わなかった。


 朝から眼福すぎて困る。



 俺も仕度を進めた。

 今日も付き添うからだ。

 それに、幸来の様子も見に行く。



 しばらくして、詩乃は三鷹さんの部屋へ行った。制服に着替える為だ。

 少し待つと準備が整った。


 それから三鷹さんが用意してくれたパンをかじり、朝食を済ませた。


「忘れ物ないな?」

「うん、大丈夫!」


 三鷹さんに挨拶を済ませ、俺と詩乃はホテルを後にした。


 今日からしばらくは『タクシー』を使うことにした。

 お金は掛かるが……父上が昨晩、交通費を支給してくれた。俺の口座には、あきらかに交通費を超える金額が入金されている。


 父上……やりすぎだろッ!


 まあいいか、おそらくは生活費もまとめて入れてくれたのだろう。


 ここはありがたく受け取っておく!


 予約したタクシーが迎えに来た。


「詩乃、このタクシーに乗ってくれ」

「えっ!?」

「今日からタクシー通学だ」

「うそー! いいの……?」

「詩乃の安全を考えた結果だ」

「で、でもお金とか」

「お金なら心配するな。父上が負担してくれた。感謝なら父上にしてくれ」

「お義父さんが……! 嬉しいな~!」


 詩乃は、祈るように感謝していた。

 俺としても父上には頭が上がらない。

 ここまでよくして貰えるとは思わなかったからだ。

 最初の頃なんて義理の妹に迎えることすら、大反対していたのになぁ。今となってはもう家族だからな。


 タクシーに乗り込み、さっそく学校へ向かってもらう。


 十分程度で到着。


 周囲を警戒しながら降りて――そのまま学校へ。


 ふぅ、とりあえず不審者はいない。



「これなら安全に登校できるな」

「こんなにしてもらって、わたし嬉しい。ありがとね」


 詩乃は学校前だというのに、大胆にも抱きついてきた。

 な、なんだかジロジロ見られて恥ずかしいけど、悪い気はしない。


「じゃ、俺は昨日と同じように校長室で待機している」

「分かった! 行ってくるね!」


「あ、それと俺は今日、途中で学校を抜け出して病院へ行ってくる」

「病院? あ、もしかして」

「そうだ。幸来の様子を見に行く」

「うん、幸来ちゃんに会ってあげないと」


 詩乃は理解してくれたようで、了承してくれた。

 授業中に行ってくるし、その間なら襲われる心配もないだろう。女友達もいるようだし。

 それと担任と校長先生にも協力してもらう。


 これで万全だ。


 詩乃の姿を最後まで見送り、俺は校長室へ向かう。



 校内を歩き、校長室を目指していると――。



「おい、まて」

「…………!?」


「やっぱりこの学校にいたか」

「お、お前……サイトウか!」


「用務員になりすまして潜入してみたが楽勝だったな」



 コイツ、警察官の次は用務員になりすまして……!

 てかもう、いろいろと犯罪だろ!


「何なんだよ、お前は!」

「ちょっと話があってな」

「話だと? お前とする話なんてない。さっさと学校を出ていけ」


「ほう、なら詩乃がどうなってもいいんだな」


「な、なぜ義妹の名前を!」

「知ってるさ。妹に聞いたからな」



 あのメイド、個人情報を流しまくって……! クビは当然の報いだ。だが、厄介だな。この男にも知れているとか。



「もう俺たちに関わるな」

「そうはいかない。特にお前に恨みがあるからな」

「知るかよ!」


「金持ちなのもムカツクなんだよ」


「だからなんだよ。俺と詩乃の生活を邪魔しないでくれ……」


「憎い……」

「え……」


「お前が憎い!!」



 睨んでくるサイトウ。コイツ、ここでやる気か……?

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