第20話:SAYONARA
私は危うく飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「礼央君、ふとした時の表情が利音に似てて。苗字も野宮。これは絶対そうだと思った、昔利音に小さい頃の写真を見せてもらったことがあって。それに弟が写っていた。なんとなくそれも頭に残ってて」
「あのキャンドルの香りは……」
「利音の香水の香りなの。礼央君もこの香水を持ってるって言ってた。
兄貴からもらったって。その時礼央君は利音の弟なんだって確信した。
この偶然は神様が指輪はあきらめろって私を諭してるんじゃないかって一瞬ためらった。けど……」
そう言って優樹菜ちゃんはコーヒーを選び一口飲んだ。
「もうこの指輪を取り返したら、処分して利音のこともきっぱり忘れようと思ったの」
喫茶店を出ると優樹菜ちゃんは鞄から指輪を取り出し、道路に向かって放り投げた。
宙を舞った指輪は太陽の光に反射し、青空を背景に美しく光り輝き、落下した。
ちょうどその上を教習車が通過し、指輪はぐにゃりと潰れた。
「はぁー。これでもう利音のことは吹っ切れた。後で真衣ちゃんに謝らなきゃ」
すっきりした表情で優樹菜ちゃんは言った。
「謝ること無いよ。あれは優樹菜ちゃんの指輪だったんだから」
こくんと優樹菜ちゃんは頷いた。
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