短編「夜露ノ色香」(完)

不可世

一話完結

レイニーブルーな

黄昏の夜

甘い言葉も溶けて

グラスの光が揺れる


今宵のバーラウンジは

やたらとムードが漂ってる

示し合わせのならず者から

札束を抜いて


ちょっとスコッチをくぐらし

葉巻を半分足らずで捨て

ジュークボックスで

ブルースを流す

この哀愁漂う

バックナンバー1009番は

俺の中でも最低の曲

だがそれがいい


それこそブルースなんだ


俺はハットを深くかぶって

ヨレヨレのカーボンジャケットに

手を突っ伏し


バーの喧騒から

そっと遠目に

黒筋のタイトストッキングが似合う

レディーに

視線を落とし


体をなぞるように

脚部から胸部に

目を這わせ

意味ありげに

チップを渡す


「踊らないか」

なんて、チープな言葉で

わっぱをかけ


そっとラウンジを出て


夜の城下町へと消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編「夜露ノ色香」(完) 不可世 @BEST-R-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ