第19話リーシェ、また笑顔で魔物を惨殺する

見渡す限り瓦礫と魔物の群れ。幸い強力な魔物はいない。


ゴブリンやオーガ程度。


問題はその数。数千、いや数万は下らないだろう。 


「宝剣アゼリューゼ」


声と共に、愛剣が手に現れる。


呼吸を整えて。


やってやりましょうじゃないですか。


「・・・はぁ」


深呼吸すると、一気に駆ける。


バコッ、ゴッ、ドッ、グォッ、ブシッ


剣で斬り裂き、片手で殴り、足で蹴とばす。


私にとっては取るに足らない魔物。


数を考慮に入れなければ。




"へ? なんでこの人、突撃してるの?"


"ただの自殺志願者w"


"えぇ……(困惑)"


"なになに、どういうこと?"


”新規勢?”


”最後は中毒患者確定(笑)”




みんなに口をそろえて言われた。




『無理ゲー』


『何言ってん・・・だ?』


『マ……マジなのか?』


『絶対無理!』


 


無理? 何を言ってますの? 私を誰だと思ってますの?


数々のスタンビードや災害級の魔物を討伐する際に『絶対無理』だ。


そうと言われて『そうですね』と引き下がれる程、私は諦めが良くないのですわ。


そして、全て解決して来たからこそ剣聖の名が与えられたのですわ。


無理だからと簡単に諦めるのは誰にでも出来ること。


何事にも全力を挙げて挑戦することが一番重要。


だから私は今、ここにいますの。


私がみなを助けて見せる。


気が付くと笑みが浮かんで来た。




”笑ってる・・・”


”いつものマジキチスマイルと違う”


”それでもちょっと怖いんだけど”


” ( ゜∀゜)アハハハハハハハ”




「邪魔」




私は一言呟くと、エインヘリャルの群れを処理し始めた。


エインヘリャルは大柄な人型の魔物。群れるから意外と厄介。


その上、女の子をいやらしい目で見るし、ゲラゲラと笑い声が不気味で気味が悪い相手。


何より面倒なのが前衛、魔法支援、回復支援に弓などの長距離支援など、人間のパーティ同様に役割分担をして襲い掛かる。


・・・ちなみにイケメンはいない。




「もう少し機嫌がいい時に出直してもらえますの」




そう言うと、レールガンで一気に殲滅した。




”はぁぁぁっ?”


"俺たちのトラウマがぁぁぁぁ!"


"瞬殺ワロタ"


"人間離れしてて草"




忘れていたけど配信中だった。どうやら同業者も見ていたようで及第点をもらったみたいですわ。




"なるほど、ソロならこうやって。って無理!"


"完璧な作戦だな。不可能って点に目を瞑れば"


"ヤバ過ぎて意味わからん"


"ヤバすぎて草"




円城エリカSIDE




”あれ、魔物の動き止まってね?”


”何したんだ? よく分からない”




「一体何が?」


「魔物の動きがおかしいぞ」


「リーシェさんの言ったことは本当なんですよ!」


「魔物の攻撃が自身に帰って行く?」




”はぁっ!?”


”ガチ!?”


”この広い範囲の魔物の攻撃を反転?”


”ヤバw”


”これ、何もしなくても勝てるパターンじゃ?”




「じょ、冗談だろ・・!? ここが、どれだけ広いと思っているんだ?」


「数万はいるんですよ・・・ね?」


「だが、魔物の攻撃が反転するなら」


「・・・挑発すれば」




進藤アキラと円城エリカは魔物へ向かって行った。




☆☆☆




これから私がやることはただの殺戮。


ただし数万の魔物とのやりとりは魔力切れを引き起こし戦闘不能になる可能性がある。


ふと見るとレッドボアの大群が目に入る。


ちなみにレッドボアは中層のフロアボスを務めることが多いそこそこの魔物。




特筆すべき点は・・・。




「レッドボアのドロップするお肉美味しいのですわ」




"悲報、中層のボスを食材扱いw"


"ニッコリするリーシャちゃん見て魔物が怯えてるw"


"魔物見て食欲が出る?"


"命を賭した戦いではなく食材探しとは?"


 


そう言えば世界樹ユグドラシルに住むニーズホッグは最高に美味しいお肉をドロップしてくれましたわ。






「はあ・・・久々に最深層のフロアボスのお肉食べたいですわ」




"最深層は別世界だからやめた方がいい"


"本当にマジで死ぬぞ"


“新規勢だなw“


“その内わかる“




「いや、倒したことはありますわ。けど流石にファフニールとかニーズホッグのお肉はドロ率低くて・・・」




"は?"


"・・・冗談だよな?"


“ドロ率の問題なのか?“




そう言えば、アリスが次回の配信でメシテロを仕掛けようと言ってましたわ。


この世界の人の食の知識はどの程度? ダンジョンが出来て三年しか経ってないですわ。




「あの。スケルトンのスープ食べた人います?」




"いるかぁ!"


"マジなのか?"


"あれ食べるものなの?"


“確かにスケルトン倒すとたまに骨ドロするけど“


“それを食べようとする強者はいない・・・筈、多分“


“いたらマジキチw“




そう言われても、スケルトンの骨でとった出汁はとても美味しいのですわ。


侍女をやっていた前世で究極の料理対決に巻き込まれた時にかなり魔物料理には精通しましたわ。




荒れるチャット欄をよそに魔物を葬る作業の手は休めない。




「お肉ゲット!」




"特売品をゲットしたのかな?"


"緊張感皆無で草"


"《円城エリカ》リーシェさん、頑張って下さい!"


"え?本物のエリカちゃん?"


“ちょいちょい出てる“


“常連になりそうw“




「食材のドロ率上げる為に、じわじわ削って倒すのって大変ですわ」




"ちょっと何言ってんのか分かんない・・・"


"誰か説明希望"


"これ重大災害の現場のライブだよな?"


“ドロ率上げるのに特定のパターンがあると聞いたことはある“




「というわけで今度はスケルトン倒すのですわ!」




"早すぎて草"


"RTAかな?"




それはもう、急いでますわ。でもR T Aって何ですの?




“《円城エリカ》リーシェさん、こちらも皆で共同してあらかたかたづいた“


“ほんとだ!“


“魔物の大半がいない“


“あ! 今頃自衛隊が突入した“




戦いが終わり、アリスと合流して、私は知らされた情報に衝撃を受ける。


「リーシャ様。キリカがカレーの鍋を焦がしました」


私は絶望の淵に立たされたのですわ。

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