第3話 「案内人」の挨拶
僕、花子、徹也、ひなた、柑奈は屋上へと走った。
ひなたはうずくまっている。
「…ここまで来れば一安心だね」と花子が教室との距離を確認しながら言った。
だが、「いや、ここも安全かわからない。もう少し距離を取ったほうが良いかもしれない」と徹也が言った。うん、僕もそう思う。さすがは『沈着メガネ』と呼ばれるだけある。
「なんでこんなことになってるのよ!私は先に帰るわよ!」柑奈は一人で帰ろうとする。だが、柑奈の目の前に突然何者かが現れた。まるで瞬間移動してきたかのようだ。
「邪魔!どいて!」一瞬物怖じするも、柑奈は強気な姿勢で威嚇した。
だがソイツは冷静に「おや?案内人に向かってそんな口を聞いていいのかな?闇川 柑奈くん」と言ってのけた。
「案内人?誰?何で私のことを知ってるの?」と柑奈はわかっていないようだ。だが僕は『案内人』の言っていることの察しがついた。
「それってつまり…僕達をここに閉じ込めたやつか!?」僕は声を上げたが、
「一旦落ち着いて聞いてほしい。まずは突然君たちを閉じ込めたことをお詫びしよう」と言いくるめられた。
「君たちはそれぞれ異名を持っているだろう?そんな君たちが生死をかけて逃げ惑うサバイバルゲームをすると面白いと思ってこのゲームを用意させてもらった。実際君達は異名に恥じないほど性格が個性的だしね。ゲームとして最高に盛り上がりそうだと思ったんだ。」
「…コジロウと力也を、返して…」
「…?すまない。『不思議系霊感女子』…いや、ひなたくん。聞こえなかった。もう一度…」
「コジロウと力也を返して!!私達をかばってあいつは死んだの。貴方のふざけたゲームのせいで…」そう言ってひなたは泣き出した。
花子がひなたをなだめながらも「案内人」を睨む。
「最後まで聞いてくれ。このゲームで誰か一人でも生き延びたら元通りの日常を送れると約束しよう。もちろん、このゲームの記憶は消え去るがね。」ソイツはまさかここまでひなたが怒るとは思わなかったようで、少し驚いているようだ。
僕は「誰も生き延びられなかったら?」と聞いてみた。
「君たちの存在はなかったことになる。そもそもこの世にいなかったということになるね。」何故かソイツは楽しそうだ。
「もう話は終わり?早く帰らせて」
「せっかちだねぇ。さすが『ヤミカワお嬢様』といったところか。ただ校門を出るだけじゃあつまらないだろう?そこで脱出を阻止するための妨害を用意した。それが、彼だ。」
ちょうどその時、屋上の扉が開かれた。彼の服にはさっきまで無かった赤い液体がべっとり着いている。花子が口を手で抑える。
「…くそ、現れたか!」
「もう二人も処理してくれたみたいだね。力也くんとコジロウくん…どちらも彼の敵では無かったようだ。」
「全員、逃げるぞ!」僕は叫んだ。
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