第136話 リラクゼーション1

夜が明けて、日が昇り、朝ご飯をビーチで食べた後、

我々は本格的に眠くなった。



そんな我々に提案があった。



「寝ながらエステできるわよ」



「「「な、なんですって!?!?!?!?」」」


3人の嫁たちは即座に反応した。




「寝てる間にエステしてくれるっていうサービスがあるのよ。

それ、私がして欲しくて提案してみたらできたっていうだけの話なんだけどね。

特に今日みたいな、時間のないバカンスにはぴったりよ。」




「お願いします!!!」


「是非に!!!」


「最近肌がくすんできたような気がして…。」


三者三様に、エステをご所望だった。




「じゃ俺たちは2人で遊んでくるよ。」


「え?」


「馬鹿野郎、女性たちには邪魔されたくない女の時間ってのがあるんだよ。

では、俺たちにはお気遣いなく〜。」



「え?あぁ、え?お、お気遣いなく〜。」




ということで期せずしてやってきた自由時間。

3人の嫁と霧さんの奥さんの4人と分かれた男衆2人は何をするのだろうか。




「といっても、この島でやれることは限られてる。」



「といいますと?」



「リラクゼーションとカジノだ。」



「ということは、リラクゼーションですか?」



「そうなる。」

そういって私が霧さんに連れてこられたのは桟橋。




「乗るぞ。」




そう言って霧さんが乗り込んだのは一般的に見れば十分立派なクルーザー。

訳もわからず着いていくと、船体後部のデッキについた。



そこにはベッドが2台用意されており、お美しいお姉様が何かしらの準備をしていた。




「ここで何を?」


「5分で寝落ちするヘッドスパ。」




聞いたことある!!!!

と同時にいつか行ってみたかったやつ!

という感情が私の心を支配した。




「俺、慢性的に肩こりからくる頭痛がひどくてさ。

時々眠れないくらいやばい時あんのよ。


んで何年か前から腰も痛くなってきてさ。

その時に出会ったのがこれ。


もうぐっすりだし、頭も痛く無くなるし、ほんとに最高でさ。

会社に出資して、支店をこの島に出してもらったの。


今はまだプレオープンだけど、俺毎日でも使いたいくらいだから常駐してもらってるの。」




「何と贅沢な…。」



「ここでヘッドスパしてもらいながら寝ます。」



「はーい。」



2人してバスローブに着替えて、ベッドに横たわる。

頭が揉まれ始める。




「あ、気持ちいいですねこれ…


あー、


あぁ、




そこですそこです。」




この辺から全部記憶がない。










~~~~~~一方その頃女性陣はというと……~~~~~~






「「「こ、これは…!!!」」」



「女の楽園よ!!!!」


私たちはいわゆる、ステレオタイプな南国風のスパにやってきていた。


「こんなの見たことない!」と言って籐でできた大きな椅子に腰掛ける緋奈子。




大きな南国の木の葉っぱで仰がれて


「いつかされてみたかったんだよね〜」と南国を味わう幸祐里



顔の濃いイケメンに手を取られ、民族衣装のような白衣を着た美しい施術師の待つ施術台の方に無言で向かう私。


あの時はなんか見えてた。たぶん。




我を失った我々女性陣三人にみかねて、ひとみさんが苦笑いをしながら声をかける




「ほら!こっちこっち!まずは着替えるわよ〜!」



ひとみさんの号令で我を取り戻した。



気づけば、我々3人に1人ずつ、お付きの人が寄り添って、バスローブを持っていた。



幸祐里は


「自分でできますから!」と、ウブな反応をしていたけど、


緋奈子はなぜか慣れた様子で身を任せていた。



私はというと、ぎこちないながらもひとみさんの真似をして

それなりに優雅に見えたはず。




そこから先は流されるままに、四つ並んだ施術台に案内され、女子トークに花が咲く。




「そもそも、何で3人も美女がいて、1人の男愛しちゃったの?」



ひとみさんがいきなり踏み込んだ質問をする。

思わず顔を見合わす私たち。

一瞬の間があって口火を切ったのは幸祐里。




「それ聞きます??」



苦笑いしながら幸祐里は言う。



「聞きたい!!

ほら、女の子は幾つになってもそう言う話聞きたいじゃん?」






「「「たしかに。」」」




私も他人の馴れ初めを聞くのは大好きだ。




「じゃ私から話しますね。」


幸祐里の話面白いんだよなぁ。

何回聞いてもむずむずする。

幸祐里は普段はサバサバなところがある分余計に可愛く感じる。




「まぁ、他の2人には昔話したんですけどね。

あいつ、めちゃくちゃかっこいいじゃないですか。」




たしかに。




「初めて会った時は、普通の男友達で。

深夜放送のテレビの話で盛り上がったりして。」




そういえば、ヒロ君はある深夜放送の大ファンで、

DVDが出るたびに買っている。

私はどちらかと言うとおにぎりの方が好きだった。






「かっこいいし、まぁ、私も?

それなりに容姿には自信があるし?

これはワンチャンいけるかも?みたいなこと考えてたら、


あいついきなり学校来なくなったんですよ。」




「えぇ!?それはダメねぇ。」


なんとなく、ひとみさんの反応が初々しくてかわいい。

こりゃファンが世界中にごまんといるわけだ。




「それで、大丈夫かな?って心配してたら、どうやらピアノ室にいると。

私、あいつがピアノできるなんか全然知らなかったから、

どんなもんかと覗きに行ったら、

もう逆に惚れさせられました。


もう、完膚なきまでに。


心を鷲掴みにされて。




普通なら、これでカッコ良すぎて話せない!

目も合わせられない!

とかってなると思うんですけど〜。


少年みたいなとこあるじゃないですか。あいつ。



あんなにかっこいいのに、全然変わらないの。

私のあいつを見る目が変わってるのなんか全然気づきゃしない。」






「「わかるぅ〜」」




そう、ヒロ君は鈍感なのだ。

鈍感というか、興味がない。

どう思われるかとか、あんまり考えてない。


自分が正しいと思うことに対して、直向きでまっすぐで

こうだと言ったら絶対こう!

というタイプ。


凝り性なんだよね。職人肌というか。






「っていう感じで、そのあとすぐウィーン連れて行かれて、

さらに沼に落とされて、気づいたらもうこうなってました。」




「なんか、吉弘君て、ジゴロみたいね……。」



「顔もいいから余計にタチ悪いですよ〜

ゴルフうまいし、ピアノうまいし、サックスもうまいし。

話し上手ってわけじゃないけど、空気感が穏やかだし。


優しいし。もう沼に落ちない方が不思議って感じです〜。」




「あ、この話、他の2人にも聞くからね?」




ひとみさんのキラーパスが光る。

女子会はまだまだ始まったばかり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る