第130話 先輩登場



おめでとう!!

という言葉があちこちで響く。

周りを見渡せば振袖姿の学生に、スーツ姿の学生。




そう、今日は卒業式である。


午前中のうちに式は終わり、私も学位記を手に入れた。

そのあとは友達と軽くおしゃべりしたり、担当教官とお話をして解散したのだ。


解散したのちに私は嫁の一人と合流した。




「そっかぁ、私も卒業したのかぁ。」


「どしたの、ヒロ君。」


「なんかこの前入学したばっかなのになぁって。」


「そうだよね。早かったなぁ。」




「うん、なんかとっても駆け足で走り抜けた四年だった。

ヒロ君はとくにそうじゃない?」



「そうだね、気づいたら音楽家になってるし。」




「あの深夜番組の話をした時は考えもつかなかったよ。」

勘のいい人は気づいたかな?

この牙の取れたかわいい女の子は幸祐里だ。

いつの間にか丸くなった。

そんでデレデレになった。




「幸祐里も変わったよ。

あのおてんばがこんな清楚系美人になるなんて。」



「よくいうよ、ヒロ君が変えたくせに。」



そんなデレデレな会話をしているととんでもない車が門の外に止まっていることに気づいた。




「あっ!」


「ん?

あ、すごい車が止まってる。」



そこにはランボルギーニのチェンテナリオがドアを跳ね上げた状態で止まってた。

その横にはスマホをいじりながら背の高いイケメンが立っている。


目が合うと手を振ってくれた。


「お久しぶりです!!!!」



「ん?ヒロ君お知り合いのk…

えぇ!?!?!?大学生起業家で世界最高の異名をとった霧島さん!?!?」




「あれ、ご存知なのかな?

俺も顔出ししてないんだけど…。


あと、もう大学卒業してしばらく経つんだけどなぁ。」


照れ臭そうに頬をかく霧島さん。



「ご存知もなにも、超有名ですから…。」



「幸祐里知ってたんだね。

じゃあ今更かもだけど、こちら世界最高の起業家の一人、霧島あきらさん。


そして助手席で手を振ってらっしゃるのが奥様のひとみさん。」




「どうも〜」




「ひ、ひとみさん…!

憧れです!お会いできて嬉しいです!!」




「おっ、ファンだぞひとみ。

出てきてあげて握手のひとつもしてあげたら?」




「もちろん!」


助手席ドアを跳ね上げて出てきた女神はそれはそれは美しく、見るもの全てを圧倒するような美を持っていた。


でもうちの嫁達の方が私は好き。




「改めてよろしくね。幸祐里さん。

うちの旦那とも仲良くしてあげてね。」




「こ、こここ、ここここうえいです!!!」



「もしよかったら今度一緒にお茶しましょ?

旦那の首に鈴つける方法教えてあげる。」




「ぜ、ぜひぃ!!!

他の子達も呼んでいいですか?」



「もちろん。他のお二人もぜひ。」




幸祐里はひとみさんの信者だった。

奥様のひとみさんはインスタのフォロワー数が1000万人を突破しており、世界で最も影響力のあるインフルエンサーの一人でもある。


噂では一投稿につき100億単位のお金が動くとか。




「なんか物騒な話してんなぁ。なぁ?ヒロ。」



「まぁ私は鈴つけられても困りませんけど。」



「何を〜!?」



「ねぇ、ヒロ君、なんでこんな世界的セレブリティがうちの大学の卒業式に来てくれてるの?」



「卒業式なんですって言ったら来てくれた。」


「えぇ…。」



「おう、可愛い弟分のハレの舞台だからな。」




霧島さんは秒単位でスケジュールが埋まってる大変に忙しい方であるが、身内のためにはすべての仕事をキャンセルすることでも有名だ。


曰く、金よりも人としての信用の方が重いとのこと。


仕事キャンセルして失う信用もあるのではないか?と思うが、そんなことで失う信用ならそもそもないのと同じという暴論みたいな話で封殺された。


つまりは身内が何より大事ってことだね。


納得した。一応。






「わざわざすいませんほんとに。」




「気にするなよ。

今日と明日、開けといたから遊ぼうぜ。」



「遊ぶ!?」



「せっかくの祝い事なんだからパーっとな!

日本から出ちゃうんだろ?」



「ですね。」

私は今年の九月からアメリカに行く予定だ。

そのための準備も着々と進めている。



「そうと決まれば行くぞ!」



「えっ、どこに?」



「それはお楽しみよ。」



「とりあえず嫁全員呼べ。」



「もうすぐ来ます。」



「よろしい。」

私はどこに連れて行かれるんだろう。



しばらくして他の嫁二人が来た。



「「おまたせ〜」」

約束の時間にはまだ20分ほどあるので待たされたと言うこともないのだが。




遅れてきた二人はそこに立つ世界的セレブリティの霧島夫妻を見るなり目を剥いて驚いた。




「「なんで!?!?」」




「卒業式お祝いに来てくれました。」




「「えぇ!?!?」」




「「今日はよろしく。(ね。)」」




「わ、わかりました。」


「こちらこそお願いいたします。」




「よし、じゃあ全員揃ったので行きます!」


「車はどうするんですか?」


「後ろに止めてあるやつで。」

私が後ろに目を向けるとバスかと思うようなロールスロイスが止まってた。




「えぇ!?いつの間に!?」




「これ、特注のやつ。最大10人乗れるよ。」



「バスじゃん…。」



「さ、出発だ!!!」

霧島さんはどんな経験をさせてくれるんだろう。

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