第86話 忙しい毎日の間にある日常。
今日は、オーディションに合格したので、その旨を学務に伝えにきた。
前もってメールで伝えていたので、春休みだけどちゃんと出勤してくれている。
「と言う感じで、留学できる事が決定したので、単位の認定とかその他もろもろの説明をお願いします。」
「おぉ…!
海外の音大への留学は我が学部始まって以来ですね…!
自費留学はちょこちょこ聞きますけど。
留学先もジュリアードという事で、我々も最大限バックアップさせていただきます。
つきましては、向こうで受ける授業科目は、当大学にある無し問わず、全て単位認定科目という形で認定させていただきます。
その際、向こうでのテストを現地の学生と同じように受けていただき、そのテストを担当教官からの評価を基に日本での秀優可の判定をさせていただきます。
ですので向こうのテストで原級留置となった場合、こちらでも不可とさせていただきます。
まぁつまり、向こうで日本と同じように授業を受けていただくと言った形ですね。
場所が海外に変わるだけで、極力日本と変わらないように配慮したつもりですがいかがでしょう?」
これは素直にありがたい。
いちいちやり方が変わると本当に面倒なので煩わしさがだいぶ軽減される。
「問題ありません。学費はどうですか?」
「ありがとうございます。
学費については、藤原さんは当大学の特待生で、全額免除ですよね?
ですので、破格の条件ではありますが、あちらの学費も全額免除です。
正式に申しますと、当大学で負担いたします。
負担すると申しましても、大学同士のやりとりで解決致しましたので実際に金銭が発生しているわけではないのでご安心を。
まぁこのような措置も藤原さんのGPAが学生の中でトップクラスだからできたというところですね。」
これも本当にありがたい。
正直全額払わされるかと思っていた。
提携校でもなんでもないのにうちが払うわけないでしょとか言われたら従うほかなかったし。
きっと、提携校になるためのあしがかりくらいは考えてるかもしれないが、私としては万々歳だ。
「ありがとうございます!それが1番の懸念でした…。」
「やっぱりお金の問題はそうですよね。
特に向こうの私学は学費高いし、奨学金ありきで設定してるきらいもあるよね。」
「大学のおかげでなんの心配もなく勉強できそうです、ありがとうございます!」
「はい。こちらこそありがとうね。
やっぱり学務課としては、うちの学生が世界に羽ばたくのを最大限支えたいからね。
頑張ってください!」
「はい!ありがとうございます!」
とりあえずこれで準備の8割は整った。
あとはビザとったりなんだかんだ細々したものが続くのみである。
直前でばたつくのが嫌なので、近々に済ませておくこととしよう。
「あ、タキシード。」
車で家に帰る途中、タキシードのことを突然思い出したので、そのままルート変更して、広尾に向かう。
そのとき電話で予約もする。
ちょっと使ってみたかったんだよね、Bluetoothのハンズフリー。
問題なく予約が取れたので、広尾のオーダーサロンへ。
「いらっしゃいませ、藤原様。本日対応させていただきます木下でございます。」
「はい、よろしくお願いいたします。
今日はタキシードを作りにきました。」
「かしこまりました。
ご使用の場面は結婚式か何かですか?」
「いえ、演奏会です。」
「さようでございますか、それではお色はブラックでございますね。」
「はい、お願いいたします。」
こんな感じでトントン拍子で進んでいき、ブラックフォーマルのタキシードと何故か夏用のスーツを、ベージュとネイビーの2着買っていた。
あれれぇ?おかしいぞぉ?
でも大満足なのでお金を払って家に帰る。
「あ、革靴も買わなきゃ。」
革靴といえば知ってるメーカーはほとんど分からないので、とりあえずリーガルに。
「あの、タキシードに合わせたいんですけど…。」
「でしたらこちらはいかがですか?」
そう言って店員さんが出してきたのは、オペラシューズと呼ばれるピカピカのエナメルシューズ。
こんなの売ってるんだ。
「タキシードにはこれなんですか?」
「そうですね。こちらは礼装用の靴です。
なんでピカピカかと言いますと、靴墨をつけなくても良いようにピカピカになってます。
靴墨をつけると汚れますからね。
ダンスをする際にご婦人のドレスの長いお裾が。」
雷に打たれたような衝撃だった。
そんな事があるのか!!!
そんな理由からこういう風になってるのか!!!!
いやはや驚いたのと、店員さんの知識に感動したのでお買い上げ。
スーツ用のダークブラウンのタッセルローファーも勧められたので買った。
あと革靴のお手入れ用品も勧められたので全部買った。
いいお買い物できました!
ありがとうございました!
スーツが出来上がるのが楽しみである。
完成までは約1か月といったところか。
さて帰ろう。
もう帰れるぞ!
家から出ないぞ!
こんな決意をした直後、連絡が来た。
「もしもし。」
「幸祐里だけど!
最近付き合い悪くない?
ご飯行こうよ。」
「いいけど、うちくる?
家出るのめんどくさい。」
「いいよ、なんかもってくわ。」
「あ、うち引っ越したから迎えに行くよ。
何時にどこ?」
「え?そうなの?じゃあ18時にうちの前。」
「りょうかーい。」
〜〜〜side 弓削幸祐里
よっしやあぁぁぁ!
ナイス自分!
超ナイス自分!
最近私の影薄すぎ…ってなに言わせてくれとんねん!
でも、吉弘のおうちデートとか半端ない。
マジ最高。
今から早速ご飯仕込もう。
今日は寝かさないぞ!
※なお泊まるなどとは一言も伝えてなかった模様。
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