第14話 テスト。

ちゃんと勉強もやりつつ、空き時間のほとんどはピアノに捧げつつ

何とか毎日を乗り切って、とうとうやってきたテスト当日。








ここで、蛇足かもしれないが、私、藤原吉弘のテスト直前期のルーティンと本学のテストについてご紹介しよう。






まず、基本コンセプトとして掲げるのは


「練習は本番のように、本番は練習のように。」


だ。


中高時代に所属した吹奏楽のスローガンでもある。


吹奏楽とはメンタルスポーツとしての側面を多分に擁しており、気の持ちよう次第で音が変わる。

つまり緊張しすぎるとまともな音は出ないし、緊張しなさすぎてもまともな音は出ない。

このことから、練習から本番モードで練習することの大事さを学んだ。


今でもピアノを練習するときはサントリーホールで大観衆の前でピアノを弾いている自分を想像しながら練習するし、お遊びのパターゴルフでも全米オープンゴルフの最終ホール首位争いの場面で入れれば優勝という場面を想定して一打一打を打つ。






自分のテスト直前期の過ごし方として、完全に自分の頭の中がテストモードに切り替わるのは当日の1週間前。

そこからは本番想定モードに入る。


なので、8日前までには完全にテスト範囲を習得している必要があるため、テスト初日の20日前くらいから意識はテストに焦点を合わせ計画を立てる。


今回は、好奇心も相まって、授業を取れるだけ取ってみたので日程も詰め込み気味である。


レジュメをもらえたのがテスト初日の21日前でよかった。






直前期に勉強する順番は、テスト日程とは逆なのが私流だ。


それは中学の頃から変わらない。


例えば、英数国理社の順番でテストがあるとすれば、社理国数英の順番で勉強する。


1日目が文系、2日目が理系ならば、テストの2日前は理系、前日は文系といった具合だ。


正直、そこまで直前になると、自分にとってはリハーサルに過ぎないので、ロックバンドなどのライブのリハーサルと似た形が効率が良いと思ったのだ。


どこかで聞いた話だが、アーティストの方々もセットリストとは逆の順番でリハーサルをすることが多いらしい。




ちなみに、直前期以前にするべきことは、自分の理解が及んでない場所の洗い出しとその克服。

理解できている場所はそれ以上磨き上げる必要はない。





大学では、時間割の関係もあり、1日や2日でテスト科目が終わることはなく、だいたい1週間程度をかけて日程を消化する。


多くの学生にとっては長々とテスト日が続くため歓迎されてないようだが、そのような勉強の仕方をする自分にとってはむしろ好都合である。






そして、一番大きな要素がある。


それは、テスト前日だからといって徹夜は絶対にしないことだ。


徹夜をすると、少しのことで勉強したことを忘れる。


また、超短期でたくさんの内容を詰め込むと、脳が情報を処理しきれずにそれらを混同することが多い。


よって私は徹夜を最も効率が悪い勉強法だと結論付けた(高2の夏、前期試験にて。)。








私が所属する、外国語学部英語学科一年生では、まず徹底的なリスニング力の強化が大きな目標としてある。


この点に関しては今更新しく勉強するほどのこともないのでパス。


そもそも、卒業までの最終目標としては、英検1級とtoeic900とされているがどちらもすでに取得している。


ここで注意すべきなのは、そのどちらもが単位修得とはみなされないことなのだ。


それほどの高得点ならば、何かしらの優遇措置があってもいいようなものだが、何も優遇措置は受けることができない。






しかし、ストレッチゴールとしてはIELTSやIBTといったより専門的な、国際的に評価の高い、英語能力を問われる試験での高得点が用意されている。


つまり私の目指すべき道、期待されていることとは、国際的に評価の高い英語系の試験で、在学中に高得点を取ることであり基礎英語能力の拡充などではないのである。




つまり、何が言いたいのかというと、一年生の英語カリキュラム程度、余裕でこなせるのだ。


むしろ、返済不要の奨学金をもらっている以上、こなせなくてはいけないし、こなせて当たり前なのである。






だからといって、外国語学部英語学科にかぎらずだが、外国語に関しては大きな落とし穴がある。






初修外国語だ。






これがなかなかに曲者で、意外と単位が取りにくい(本学調べ。異論は多分にあるだろう。)。






私が選択した初修外国語はスペイン語だ。

その単位習得の難易度の高さから鬼のイスパと呼ばれている。


別にパエリアが美味しそうだからという理由で選んだわけではない。

単純に英語と似ているから楽そうだと思っただけで、実際楽だった。


楽勝である。

なお、この感想にも異論は大いにあるだろうが

私がすごすぎたのだ。勘弁してもらいたい。



英語もスペイン語もレジュメにもざっと目を通したが、正直自分にとっては日本人大学生が小6レベルの国語をこなすレベルの問題なので初見でも問題ないレベルだった。


よって語学科目はほぼ無勉強状態で臨むつもりだ。


他にリソースを割きたいというのが本音でもある。






次に、全学生が共通で取る必要がある、全学共通科目。


これに関しては、真面目にやっていれば落とすことはほぼないと言われる。


自分は最低でもB評価を取る必要があるので、気合いを入れざるを得なかった。






これらの科目はテスト日程でいうと初日に予定されていたため、直前まで内容を詰め込んで受けたのは言うまでもない。


建学の精神や思想の基盤、人間の共生といった科目があったが、倫理ガチ勢の私にとって、それらはもはや敵ではなかったとだけいっておこう。












こうして長々と、私が今回のテストを迎えるにあたって行ってきたことを振り返っている理由は、テスト最終日最終科目の最終問題を解き終え、時間があまり過ぎているからである。






一年生にとっては初の大規模テストということもあり、教授陣もかなり甘めに作ってあるのだろう。


少し拍子抜けした部分が大きい。






結果としては、おそらく全科目A評価の可能性が高いと思われる。


あってもB評価が一つあるかないか、といったところだと予測した。








「ふぃー、終わった終わった。」


一人小さくそう呟く。




ふと周りを見渡すと、講義机に突っ伏している生徒が一人。


弓削幸祐里だ。




「おう幸祐里。どうした。」




「吉弘か…。私は退学しなければならないかもしれない、この大学を。」




「倒置法な。」




「全く手応えがなかった。」


バカな…。


この程度のテストで手応えがないなど、どうしてこの大学に入学できたのかを疑うレベルだ。




「案外なんとかなるよ。」


とってつけた慰めの言葉をかけてみる。




「ならぬものはならぬのです。」


この返答を聞くと、案外余裕そうなので放置しよう。


「さいですか。」




「モゥマヂムリ…。マリカしょ?」




「しません。それじゃあねー。」




「待ってよぉ!!!!」




このあと二人で牛めし屋いってしこたま食べた。


自分はなんだかんだ言って幸祐里に甘いと思ったので、もっと厳しくしたいと思いました。

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