第4話

その化粧品会社で特に力を入れていた研究が、美白の研究であったことはわたしにとって幸いだった。


新商品の美白美容液を、お手入れに加える。


この美白美容液は、肌の中に存在するシミの工場、メラノサイトに直接働きかけ、シミの元となるメラニンの生成を抑制、ストップさせる機能がある成分が配合されている。

国の認可を受けたれっきとした成分だ。

信頼できるだろう。


難しい話は置いといても、わたしはシミー討伐の最強アイテムを手に入れたと思った。


そんな美容ライフを送っていたある日のことだ。


ピンポーン


玄関の呼び鈴が鳴る。


インターフォンを確認すると、化粧品の訪問販売だ。


スーツを着こなし、カラフルなスカーフを首に巻いた化粧品のセールスレディがいる。


「家は間に合ってますので」

と画面越しに答えるも、次の瞬間ギョッとしてしまった。


セールスレディの頬に、恐ろしい形相のシミーがいた。



「シミーから逃げられると思っているのかやれ!」



セールスレディさんに失礼なのだが、

どす黒い汚泥のような姿で、ドスの効いた声色で言うのを確かに聞いた。


変な方言使うなあ。

思っているのかやれって、ここら辺じゃああんまり聞かない方言だ。



「シミにお悩みではございませんか」

セールスレディは言っている。


いや、あなた自分の会社の化粧品使ってその濃いシミーが頬にいるって、大丈夫なんですか。


「当社はシミ予防の研究に最先端の技術を使っております」


説得力がないんじゃありませんか。


セールスレディの声に被せるように、シミーが恐ろしい声で言う。


「シミーから逃げられると思うなやれ」


「シミーはお前にしか見えていないに」


「お前をシミーに取り込んでやるやれ」



声を失った。


どす黒いシミーが、セールスレディの頬からインターフォンの画面を飛び出してきたのだ。


わたしの体が、どす黒い汚泥のような大きく膨張したシミーに取り込まれてしまった。



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