第3話

ある日のことだ。


鏡を見たら、ようやく薄くなりはじめたシミーの横に、

新たに濃いめのシミーがいた。


「ハーイ、シミーだに!」

「はぁい、シミーだにぃ」

二つに分裂しているではないか。

薄くなったシミーは少し元気が削げている。


よくよく見れば、シミーは顔の全体、特に頬に散らばって存在していた。


「ハーイ、シミーだに!」

「ハーイ、シミーだに!」

「ハーイ、シミーだに!」




マジでか。

そんな馬鹿な。


あるわけがない。

あるわけがない。



わたしはやっと最適なお手入れを手に入れたんだぞ。


ありえない。

シミーがまだ自分の顔に存在するなんて、


許せない!



「美容部員さーん」


わたしは前回と同じコスメカウンターへ走った。



「こんにちは。こないだの方ですね!」

美容部員さんはあたたかく迎え入れてくれた。



「またシミーが増えたんです。どういうことですか」


少し怒りを滲ませて言ったのに気づいたのか、美容部員さんは深刻な表情で言った。


「今もシミーに悩まされているんですね」



一通りお肌カウンセリングというものをしてもらった。


それで判ったのだが、去年の夏に炎天下で働き、日焼け止めが滝のような汗で流れてしまっていたのに塗り直しをしていなかったことも、頑固なシミーの原因になっているのかも、ということだった。


そして、自分ですっかり頭から抜け落ちていた。


化粧品がお肌に与える影響は、約一ヶ月後におおよそわかるということだ。


お肌の生まれ変わりは一ヶ月かかる。

一ヶ月前から地道に同じスキンケアを行うことで、一ヶ月後、代謝により生まれ変わる、というのが理屈だ。



もうちょっと続けてからきても良かった。

反省である。


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