ただただざまぁを繰りかえさせていただきます!

@Murakami9987

第1話

「お兄様、もう私限界なんです…またお姉様に嫌がらせを受けていて、もう我慢できません…」


 甘える声でそう兄のケルンに泣きつくのは、彼の妹であるソフィア。彼女にとって兄の婚約者アリッサは邪魔でしかなく、いかにしてその婚約を台無しにするかを考え続けていた。その先に思い付いたのがこの手段。ありもしない嫌がらせを受けていると訴え続け、自分の方へと兄の気を引こうと考えているのだった。


「もう何度も言っているのに、全く考えを変えないつもりなんだなアリッサは…自分よりもソフィアの方がかわいいからといって、そこに嫉妬してこんな手に出るだなんて…許すわけにはいかないな…」


 何度も言っているということはつまり、ソフィアによるこの行為はこれまでにも何度も繰り返し行われてきたことを意味する。そこまで含めてソフィアによる作戦ではあったものの、今回を経てようやくその念願が叶えられそうだった。


「お兄様、私はお兄様さえいて下さればそれでいいのです。そこにあんな女は必要ありません」


 その甘々しい声に彼が抵抗などできるはずもなく、婚約破棄は事実上の決定事項となった。


――――


「ゆえに、君との婚約は破棄させてもらう。何度も何度もソフィアの事を迫害したその罪は、ここを追放という形で手を打とうと思う。異論などあるまいね?」


 高圧的な口調でそう言葉を告げるケルン。そんな彼の中には、ケルンの方を疑うというつもりは全く見られなかった。


「…ケルンのための婚約破棄ですか…すべての真実を知ったとき、きっとあなたは後悔することと思いますが、それでもいいのですか?」


「負け惜しみを言っても、誰も聞きはしないぞ?誰がどう考えたって、君との婚約破棄を後悔などするはずがない。そこに理由などないだろう」


 しかしこの時、ケルンは気づくべきであった。この時のアリッサの態度は、むしろ自分たちに対して非常にやさしいものであったという事に…


――――


「次はこれ!その次はこれをお願いしますお兄様!」


 婚約破棄を成立させられたことで、ソフィアの要求は日に日にエスカレートしていった。ケルンはそれにこたえるべく行動していたものの、これほどまでに要求が重なれば、さすがの彼でも疑心を抱き始める。


「…こうなるほどの彼女の欲の深さ…まさかあの時、真に正しかったのはソフィアではなくアリッサの方だったのではないか…」


 一度その疑心を抱いてしまったなら最後、二度とその思いを払拭することはできない。彼女ほどの人物を信用せず一方的に追放したという後悔は、今後彼の背中に重くのしかかり続けることだろう…

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