塗りつぶされたサングラス
駅員に購入したチケットを見せ、改札を抜ける。スーツの胸ポケットにチケットをしまい込んでいる時、麻美さんに問いかけられた。
「探偵さん!あなたはどうしてそんな帽子の被り方をしているの?」
黒色のスーツに合わせられた灰色の帽子。シンプルだが、僕は目を隠すためにつば広い物を使っており、他人に目を合わせないよう深く被っている。
「…顔を…」
合わせたくない。
いや違うな。本当の事を言わなければ
「目を合わせたくないんだ」
麻美さんは目を少しだけ見開かせる。だが、その口は笑っていた。まるで正解を見つけた、子供のような笑顔。
「そっか。やっぱり私と…」
言いかけて、言葉を切る。彼女の視線は駅の構内にある店に向いていた。
「サングラスはどう…?!」
目を輝かせ、麻美さんが問いかける。
確かに。その手があったか。関心している隙にサングラスと油性ペンを購入している。
サングラスか…好きなんだろうか。疑問に思い、彼女を見る。
自然と顔を見ている。目を見ている。
……???!!
自身の違和感。それは麻美さんを見ても感情を読み取れない。思えば出会った時から目を合わせ喋っていた。
これが同じ存在だからなのか?
そんな疑問を他所に麻美さんが駆け寄る。
「これは…どう?!探偵さん!」
彼女の手には油性ペンで黒く塗りつぶされたサングラスが握られていた。
そのサングラスを受け取り、かける。
僕の目前には黒い景色が広がっているが、そこには人の顔はよく見えなかった。
だが。僕の目には麻美さんの白い髪が灰色として映され、彼女の事を認識できた。
「ありがとう。麻美さん」
「いいってことです!」
顔はよく見えないが自信満々そうだ。こんな性格だったか?
「…お互いの事は列車の中で話しましょうか」
その声の後、列車が近づく音―――汽笛を聞いた。
―――――
「彼は…シィーロは遠くへ行ったんだろうか…」
彼の声を、顔を。再会は出来るのだろうか。
おじいさんが階段から下りて挨拶を交わす。そして日課である新聞を取りにポストへ向かった。
「あ、秋!!」
慌てた声が入口から聞こえる。
「手紙が…彼から手紙が…!」
私は掃除を止め、おじいさんから手紙を受け取る。
―――――――
おじいさん、マスターへ
最初に。急に居なくなる事になってすまない。別れはあの時に済ませたつもりだが、やはり言い残した事がある。
僕からの餞別を受け取ってくれ。
1つ目はこの手紙の中にネックレスが入っている。僕の両親の形見でかなりの値段がするだろう。これはいつか帰ってくるという約束だ。
2つ目はお金だ。少ないが、銀行に振り込んである。2人のどちらかの名前と質問の回答を銀行員に言ってくれ。どこでも大丈夫。それを資金源にしてくれ。
最後に。
僕の名前は■■。そして住んでいる場所は●●●アパートの●番。電話番号は…だ。
僕たちの向かう先は王都グロニカ。会いたくなったら、是非探してくれ。
なんで言うのかって?ある女の子の言葉を借りるならフェアじゃないから。
また会おう。それまでどうか元気で。
――――――――
私は涙がポロポロと落ちていく。
止まらない。
「秋。行って来たらどうだ。」
おじいさんが優しく声をかける。
「でもっ…」
「ここは気にするな。彼の資金もある。最悪儂が死んでも秋には素質がある。」
「おじいさん…!」
優しさに、悲しさに、私の涙は止まらない。
「大丈夫。大丈夫だ。秋。後悔をしてはいけない。それが仕事であれ、趣味であれ、恋であれ、些細なことでも、だ。」
優しい口調で語りかけてくれる。
「ごめんね…ありがとう…ありがとう…!」
――――――
作者から
どうだったでしょうか!第二章の最初は!更新も遅くなり本当にすみません。そして作風も変わったと思います。少し変えてみたのですが…
そしてスタレ好きもバレると…w
後で事情も載せておきます(近況ノートの内容ですが)
これからも応援よろしくお願いします!!!
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