極上のネタの正体

 カランカラン。カランカラン...


 と沢山の客の到来をベルが告げる。


 今は昼。客足が一番多い時間帯である。


「ねぇ、店長マスター。僕はここの席を使っていいのかい?」


 僕は4人席を見下ろしつつ、疑問を口にした。


「大丈夫大丈夫!」


 店長マスターは笑顔で応えてくれる。大丈夫なはずではないのに。


 だが僕はありがとう、と感謝を述べつつ店長マスターの言葉に甘えた。

 そろそろあいつが来る時間だろう。よく昼頃に顔を出していたからな。


 ―――10分後


 カランカラン


 ―――15分後


 カランカラン


 ―――30分後


 カランカラン


 ―――40分後


 何度目か分からない、いつもの音を聞いた。だが、いつもとは1つ違った。


「よぉ。白髪ぃ」


 ―――声をかけられた。


 見上げると、扉の前にはあいつがいたのだ。


「...昨日ぶりだね」


 すると。あいつはなぜか苦笑いし、僕の声に手を振って応えた。


 ―――――――


「それで?特大のネタっていうのは?」


「焦るなぁ。コーナー1杯だぁ」


 コートを壁にかけつつ応える。そして、店長マスターに注文をした。


 店長マスターはなぜか、無言でその場で立ち尽くしていたがぼやっとするな、とあいつに言われ慌ててコーヒーを作りに行く。


 ――――――――


 あいつと一緒に出来立てのコーヒーを飲む。あいつは僕のコーヒーの分も注文していたらしく、僕も砂糖とミルクを注ぎ、茶色にしてコーヒーの味を楽しんだ。


「さて。本題といこうかぁ」


 あいつはポケットからスマホを取り出して色々操作をしている。


「...これは世間では公開されていない。―――有名で。人気で。天才で。絶対。そんな探偵が行方不明になった。現代のホームズと謳われた探偵だ」
















「.........え?」


















 そんな馬鹿な。バカな。ばかな。


「...ぅそだ」


 僕は多分消え入りそうな声で呟いただろう。店内の声によって僕の声は掻き消され、あいつの耳に届く事は無かった。


「大丈夫か?顔色が悪いぞ」


 あいつが僕を心配し、僕の顔を見た。すると、僕の感情移入が発動する――――



 そこで僕が手にした事実。それはこの話が嘘ではなく真実である事。



 吐きそうだ。キモチワルイ。


 僕はコーヒーを飲むが、その味は酷く合わない。気分ではない味。


「現代のホームズは本当にっ行方不明なのかっ!!」


 どうしようもなくなり、席を立って叫ぶ。店内の注目が僕に集まり、みな驚いた顔をする。いつのまにか静かになった。


 その沈黙を破ったのは第三者。


「それ、ほんとうなの...?」


 声の主を探そうと店内を見渡すと、昨日見たショートの白髪の女の子が扉の前に立っていた。


 麻美さんだ。


 だが、その顔は泣きそうで、恐怖を抱いているような表情をしていた。




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