雨止み
朝ノ夜
プロローグ
この世界には『クジラ』がいる。
『クジラ』は空にいて、誰も、本物の『クジラ』は見たことがない。
『クジラ』がどこにいるのか、どんな姿形をしているのか、どれほど大きいのか、はたまた『クジラ』なんてものが本当にいるのか。
それは誰も知らない。
どんなに頭の良い哲学者でも、
世界中を知り尽くした冒険家でも、
神に愛された天才と恐れられた科学者も。
誰も知らない。
誰も知る方法がない。
誰も知ることができない。
誰も知り得ない。
いつしか、それはただの自然現象であって『クジラ』なんてものはいない、そう言われるようになった。
そんな世界でただ一人、『クジラ』を信じ『クジラ』に恋をした少女がいた。
ほら、あの子の声がする。
この物語は、そんな少女と『クジラ』の物語。
さぁ、目を開いて。『クジラ』が鳴くよ。
雨止み 朝ノ夜 @asanoyolu
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