第75話 鬼
口では強く言ったものの、生き残ったオーガと上手くやっていきたいのは事実。
とりあえずノーマルオーガは下につく意思を示してくれているため、呼びやすいように名前からつけていくか。
「色々指示を出す前に……ノーブルオーガに名前をつけたいんだがいいか?」
「僕に名前ですか? ノーブルオーガでは駄目なんですか?」
「他にノーブルオーガが生まれたら面倒だし、何よりノーブルオーガは長ったらしくて呼びにくい」
「なるほど。呼ばれ方には特にこだわりはないので、好きに読んでください」
「分かった。そういうことならお前は今日から――ゼパルと名乗れ。俺もこれからゼパルと呼ぶ」
「ゼパル……。分かりました。今日からゼパルと名乗らせてもらいます」
ペコリと頭を下げ、すんなりと名前を受け入れてくれた。
これからはゼパルにオーガ達の顔役となってもらって、指示を出していくとしよう。
「とりあえず今日は戻っていいぞ。俺達がぐしゃぐしゃにしてしまったから、オーガ達も荒れていて治めるのが大変だろ?」
「そんなことはないですよ。あっさりと敗れたことと、ゴブリンに負けてしまったことに意気消沈しています」
「そうなのか。暴れ出すオーガがいてもおかしくないと思っていたんだけどな」
「根底から負けを認めてしまっているので、暴れ出しているオーガはいないです。それよりも……ノルマとかを課さないんですか? オーガがゴブリンにしていたような」
ノルマというと、月に百キロ以上の食料を納めろってやつか。
確かに仕返しとしてやらせるのも考えたが、オーガに食料集めをやらせるのはあまりに無駄遣いだからな。
確実に戦闘要員として使うか、力仕事をやらせた方がいい。
「特に考えていない。ただこれからは自分たちの食料は自分たちで集めてくれ。また何かやってもらいたいことがあれば、そっちのして集落に使いを出す。ゼパルはオーガを完璧にまとめることに集中してくれ」
「分かりました。配慮してくださってありがとうございます」
「別に配慮した訳じゃない。別のことではガンガン働いてもらうつもりだしな。それじゃもう行っていいぞ」
「はい。失礼致します」
ゼパルは建物から出ると、そのままオーガの集落に戻っていった。
幼いオーガかと思っていたが、会話も通じたし上手いことやっていけそうな感じがある。
さて、オーガへの対応も済ませまし、ジルーガから手に入れた能力の確認にでも行こうか。
……いや、その前にアモンに会いに行こう。
バエルとニコから聞いただけで、アモンからは昨日のことをまだ聞けていない。
本当にアモンが赤いオーガを両断したのであれば、しっかりと褒めてやりたいし……どうやら進化の予兆もあったとバエルが言っていた。
アモンが目覚めているなら、一緒に能力の確認を行いたい。
そんな思考から、俺はアモンが寝泊まりしている家に向かった。
家の前にはアモンの部下であるゴブリンビレッジャー達がおり、家に入らずにオロオロとしている。
俺と同じようにアモンの様子を見に来たのだろう。
「アモンは起きているのか?」
「あっ、シるヴァさん! わ、ワカラないです。なかからオトがキコエないので、まだネテイるとオモウのですが……」
「入って確認していないのか」
「オコシてしまったらイヤなので」
「アモンは本当に慕われているんだな。昨日のオーガ戦のことは聞いたか?」
「い、いえ。まだコワくてキケテいないのと、アモンさんからチョクセツききタイのでキイテません」
今ですらこの様子じゃ、アモンが大活躍したことを聞いたら大喜びするだろうな。
その反応が見たいがために教えてしまおうかとも思ったが、流石にアモンの口から話させてやろう。
「そうか。ならアモンから直接聞いた方が良い。……遠慮していたお前達には悪いが俺は中に入るぞ」
「シるヴァさんならダイジョウブです! アモンさんのヨウスをミテきてくだサイ!」
ゴブリンビレッジャー達の許可を取ってから、俺はアモンの家に入った。
入った瞬間に感じたのは熱気。
室内温度が異様に高く、少し焦った俺はすぐに奥を見に行った。
するとそこに居たのは……アモンっぽいゴブリン。
「……アモンか?」
「あっ、シルヴァ! わざわざ俺の家まで来たのか?」
「バエルから話を聞いたからな。それより……その体は一体どうしたんだ?」
「自分でもよく分からないんだ。ただ……頭の中から聞こえた声は鬼人族に進化したと言っていた!」
鬼人族……?
聞いたこともない名前に首を捻ってしまう。
てっきりゴブリンソードマンとかへの進化をすると思っていただけに予想外すぎた。
ただとにかく……アモンは赤いオーガを捕食したことで、ゴブリンソルジャーから鬼人族へと進化したらしい。
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