第74話 体の調子
オーガへの下剋上を果たした翌日。
残ったオーガ達は生かしてくれることを条件に俺の下につくと言ってきたが、実際のところは分からない。
裏切る可能性も大いにあると思っているため、様子を窺いつつ慎重に見極めたいと思っている。
ただ、もし仮に残ったオーガ三十体を従えることができるのであれば、戦力的にこれほど大きいものはない。
単純な戦闘力だけでいっても通常種ゴブリンより上であり、力仕事ももってこい。
辿々しくはあるが、言葉も発することができるため、最初から意思疎通ができるのも大きい。
勇者への復讐を目標にしている俺にとっては、是が非でもオーガを手下に加えたいところだが……。
功を焦ってしっぺ返しを食らうのだけは嫌なので、今は俺達ゴブリンのことだけを考える。
「あっ、シルヴァさん! おはようございます!」
「バエルか。昨日の今日なのに随分と元気そうだな」
「ええ! 青いオーガを喰らってから、体の調子がすこぶる良いです!」
「進化の予兆的な感じか?」
「いえ。進化の前は調子が悪くなりますので、進化の予兆ではないと思いますね」
「それじゃ単純に力がついたってことか」
「そうだと思います! シルヴァさんはどうですか?」
俺もジルーガを喰ったのだが、今のところ変化はない。
ただ、能力を使っているところをこの目で見ることができたため、ジルーガが保有していた能力は使えるようにはなっているはず。
「体の調子が良いとかはないな。オーガへの下剋上を果たせて気分はいいが」
「……もしかしたら僕も、それで調子が良いと思えているだけかもしれません」
「アモンはどうなんだろうな。ボスを倒した訳だし、一番変化があってもおかしくない」
そう。赤いオーガはニコが倒したのだとばかり思っていたが、アモンが倒したらしい。
あの両断をアモンがやれるとは到底思えないんだが……ニコも証言していたし、間違いはない。
「どうでしょうか? 姿を見ていないので、まだ寝ているのかもしれません」
「長時間寝ているとなったら、進化している可能性もありそうだな」
ゴブリンソルジャーから進化するとなったら、ゴブリンソードマンとかゴブリングラディエーターとかになるのだろうか。
まだ進化しているとも限らないし、時期尚早かもしれないが楽しみだな。
「進化しているのだとしたら、まだ起きていないかもしれませんね。……あっ、そうだ。雑談している場合じゃなく、早速ですがオーガの代表者が来ています。シルヴァさんが直接お会いになりますか?」
「早速来たのか。ああ、腹を探るという意味でも直接会いたい」
「それならついて来てください。待たせていますので案内します」
バエルに拠点までやってきたというオーガの下に案内してもらう。
どんなオーガが代表者になったのか気になるが、とりあえず話の通じる個体だったらありがたい。
「シルヴァさん、この建物で待ってもらってます。僕も同席した方がいいですか?」
「別にどっちでも大丈夫だ。何か他にやることがあるなら、バエルは外しても大丈夫だぞ」
「なら、外させてもらいます。通常種のゴブリン達にも色々と説明をしないといけないので、僕はそっちの対応を行いますね」
「ああ。よろしく頼む」
ペコリと頭を下げてから去って行ったバエル。
改めて本当に有能だし、非常にありがたい存在。
バエルが俺の一つ前に生まれてきてくれて本当に助かった。
この部分だけは神に感謝しつつ、俺は中で待っているというオーガに会うため中に入った。
中の椅子で座って待っていたのは……一際体の小さなオーガ。
体色は赤いことからも、もしかしたらボスだったオーガの子供かもしれない。
「待たせて悪かったな。言葉は話せるのか?」
「はい。話せます」
ムッとした表情が気になるが、親や仲間を殺されたんだし仕方がないか。
……いや、オーガは元々こういう顔だったか?
まぁ何にせよ、ボスだったオーガよりもちゃんと話すことができそうだ。
「それなら良かった。まず自己紹介からさせてもらうが、俺がゴブリン達のリーダーを努めているシルヴァだ」
「はい、よく知っています。僕は新しくオーガ族の長を務めることになりましたノーブルオーガです」
「ノーブルオーガ? 通常種オーガとはやはり違うのか」
「はい。赤い体色をしたオーガはノーブルオーガです」
「へー。ちなみに、以前ボスだったオーガと血縁関係があったりするのか?」
「全く関係ありません。ですので、気を使わなくて大丈夫ですよ」
俺が多少の気を使っていたことに気づいたのか、ノーブルオーガの方からそう言ってくれた。
仇とじゃなかったことは素直に良かったと思おう。
「そうだったのか。てっきりあのボスの子どもだと思っていた」
「違います。どちらかといえば、同じノーブルオーガとして疎まれていましたので、ボスだったオーガが死んだことに関しては済々していますので」
「オーガの中にも色々あるのか。とりあえず次のオーガの長がノーブルオーガということは分かった。俺に従う以上は滅ぼすつもりはないとだけ伝えておく。――ただ裏切った時は容赦なく皆殺しだ。これだけは覚えておいてくれ」
声のトーンを変え、圧を発しながらそう忠告する。
ムスッとしていた顔に動揺の様子が窺えたため、しっかりと脅しは効いているようで安心した。
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