第43話 本領発揮
翌日。
今日から本格的に活動を再開するつもりではあるが、狩りをしつつ実戦で確かめるという目的が大きい。
俺ですら、一気に上がった身体能力のせいでちゃんと体を扱いきれていないからな。
少しずつ慣れていき、下克上までに今の体を完璧に操れるようにしておきたい。
「それじゃニコ。俺達は狩りに行ってくるから留守番を頼む」
「…………ウガ」
一人だけ進化できていないニコが完全に拗ねているが、こればかりはどうしようもないから暫く我慢してもらうしかない。
昨日も羨ましそうにイチとサブを見ていたのを知っているし、明日からはニコと一緒にニコを強くするためだけの魔物狩りを行っても良さそうだ。
今のニコならば、本能に逆らって魔物を喰うことができそうだしな。
この辺りは無理強いするつもりはないため、最終判断はニコ自身に任せるつもり。
そんなことを考えながら、俺達は獣をよく見かける場所までやってきた。
いつもならここに罠を仕掛けてすぐに立ち去るのだが、今日は俺達が自分たちで見つけて狩りを行う。
「まずは誰から行くか?」
「ボクからイカせてくださイ! アッサリとしとめてミセます!」
「確かにサブからでいいかもな。この中で一番狩りに向いていそうだし」
「ねらうエモノはナンでもいいですカ?」
「もちろん。サブが狩れると思ったものを狙ってくれ」
サブは俺の言葉に小さく頷くと、弓を構えながら前に出て索敵を始めた。
俺達はサブを遠くから見守る感じで待機し、一挙手一投足に集中する。
近くに獣の姿を見かけていないし、俺は集中モードに入ったのが少し早いと思ったのだが、どうやらサブは俺が思いもしていなかった獲物を狙っているらしい。
早くも弓を引き、狙いを定めると――あっさりと一射目を放った。
狩りを始めて数分の出来事であり、傍から見ている分では何もないところを射たようにしか見えていないのだが……。
サブは俺達の方を見ると、ガッツポーズをしてみせた。
「バエル、サブが何を射たのか分かったか?」
「すみません。獣がいたようにも見えませんでしたし、僕には何も分からなかったです」
「いや、謝らなくていい。俺も何を射たのか分からなかった」
「ヨロコんでましたガ、ホントウにエモノをしとめたンですかネ? オレもワカラなかったデスよ!」
流石に矢が当たっていないのに喜びはしないと思うのだが、俺もバエルも分かっていないということはその線もあり得るのか?
イチの言葉で少し疑った目を向けていると、矢を放った方向に向かって行ったサブは手に中サイズの鳥を持って戻ってきた。
まさか空に逃げることのできる鳥を狩るとは思っていなかった。
もはや俺達の狩り適性を見るまでもなく、サブに狩りを任せてもいいんじゃないかと思うレベル。
「シるヴァさん! かるコトができましタ!」
「動く獲物は射ることができないと思ってたが、あっさりと鳥を仕留めたな。正直驚きを隠せない」
「ありガとうゴザいまス! ウゴくまえにシトめてシマえばいいダケなのデ、カンタンにシトめられましタ!」
「俺の想像を超えていた。これからサブに狩りは一任してもいいと思ったが、一応バエルとイチもやるか?」
「僕はやらせてもらいたいですね。サブほど簡単に狩ることはできないと思いますが、実戦形式で能力を扱うのに慣れたいという気持ちが強いです」
「オレもやりたイです! ガンばりまス!」
二人はやる気のようだし、このまま続行ってことでいいか。
イチは正直駄目だと思っているが、バエルの方は期待が持てている。
俺もバエルと同じ理由で狩りを行いたいし、このまま継続で狩りは続けることに決めた。
……のだが、サブが鳥を狩ってから約二時間ほどが経過しても今のところ成果がゼロ。
サブがあまりにも早く狩ったせいで時間がかかっている感じがするが、そもそも獣と出会えていない。
鳥は頻繁に見かけるものの、追いかけた瞬間に空に逃げてしまうからな。
バエルも気功術や魔法で打ち落とそうとしていたが、精度がなくいたずらに時間を使っただけに終わっており、昨日は驚いたがまだまだ練度の方が足らないことが分かる。
かくいう俺も鳥には逃げられており、【跳躍力強化】であと一歩というところまで来たが逃げられてしまった。
もう【毒針】で殺すことも頭を過ったが、鳥相手に【毒針】を使うのはないと判断し、ここまで成果ゼロに終わっている。
「ここまで獣と出会えないと思ってませんでした。昔は結構な頻度で出会えていたはずなんですけどね」
「探した途端、見つからなくなるってのはあるあるだな。でも一定数の獣がこの森にいることは知っているから、根気よく探していれば――ほら、言った傍から現れた」
数十メートル先に、大きめのイノシシが横切ったのを視界に捉えた。
二時間かかって、ようやく狩る機会が回ってきたな。
誰が行くか揉めそうだが、あのイノシシを罠を使わずに狩ることができたら非常に大きい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます