第27話 ネーミングセンス


 洞窟で狩りを行った日から五日が経過。

 この五日間はバエルと共に様々な場所に赴き、多種多様な魔物を狩ってきた。


 新しい魔物は俺がトドメを刺して捕食し、既に食べたことのある魔物は積極的にバエルにトドメを刺させて食べさせた。

 本当に手当たり次第と言った感じで狩りを行っていたため、何の知識もない魔物も狩っては食べたことで、俺ですら能力が使えない状態のものが多い。


 【魔喰】は捕食した相手の能力を奪える強い能力だが、自分で能力をイメージしないと扱えないのが厄介なところ。

 例えばスイートアピスの能力ならば、毒針を生やすとイメージし、毒針を発射させることをイメージしてようやくその能力が扱える。


 逆にどんな能力か検討もつかないと、凄まじい能力を身につけたとしても一生扱うことができないまま終わってしまう。

 だから相手の能力を引き出させてから倒すことが要求されるのだが、俺が倒すことのできるルーキーランクの魔物は、何の能力を使ったのか分からないような能力しか持っていない。


 冒険者ギルドではランク毎の魔物についての座学が行われていたし、道具屋でも魔物図鑑が並んでいるのも見かけていたが、碌に勉強をしてこなかったツケがこんなところで回って来た。

 まぁ魔物知識を全て覚えるような真面目な性格なら、そもそも冒険者なんかにはなっていないだろうし、冒険者になったとしてもシルバー止まりではないだろう。


 知識をつけてこなかったことに関しては本気で後悔をしているが、今更後悔したところでやり直せる訳でも知識がつく訳でもない。

 会得しているかどうかも分からない能力は置いておき、新たに得ることができた能力についておさらいしておこう。


 まずはポイズンリザードから手に入れた、体から毒液を出す能力。

 スイートアピスの能力と被る部分があるが、意外にも能力は似て非なるものがあり、それぞれで使う場面が変わってくる。


 ポイズンリザードの毒液は体から出すことで、触れてきた相手に毒液を付着させることができ、短剣に毒液を塗ることで毒ナイフに変えることもできる。

 今はまだ作れないが、弓矢なんかを作れるようになれば、矢に毒を付着させて毒矢にすることも可能。


 一方でスイートアピスの能力は、毒針を出すという局所的なもの。

 ただし毒の強さは段違いで、耐性がなければ刺さった相手をすぐに動けなくさせるほどの強い毒性。


 連発では使えないため、ここぞというときの能力のイメージだな。

 スライムの能力のような使えないスキルではなく、両者ともに使えるスキルなため使い分けながら重宝していくつもり。

 

 他の能力はゾンビから手に入れた悪臭を放つ能力。

 キャタピラーから手に入れた体色を茶色にさせる能力。


 ホーンラビットから手に入れた跳躍力を倍ほど強化させる能力。

 バットシケイダから手に入れた声量を強化させる能力。


 ポイズンリザード以外は使いどころがありそうでない能力ばかりであり、これらの魔物がルーキー冒険者でも倒せると判断された理由がよく分かる能力ばかりだった。

 ただ、そんな中でも一つだけ使えそうな使えそうな能力を一つ手に入れることができた。


 俺が最初から狙っていた魔物の一匹でもある、どんぐりボマーから得た能力。

 バエルが見つけてくれ、無事に爆発させることなく仕留めることができた。


 食べるのはかなりしんどかったが、炒ることで何とか渋みも誤魔化すことで食べることには成功。

 そして肝心の能力の方はだが、イメージした箇所を爆発させることができるという能力だった。


 足でも腕でも自由に爆発させることができ、殴ると同時に爆発させることで爆発によるダメージを与えることが可能な能力。

 この能力だけを見ればルーキーランクの魔物とは思えないものだが、この能力には最大の欠点があり、爆発のダメージが自分にも入るということ。


 一昨日に指先で試したのだが、未だに皮が捲れて肉が焦げた後が残っているぐらいにダメージが残っている。

 本当に強力な能力ではあるがその反動は図り知れないため、毒針よりも使いどころを選ばなくては自殺行為となってしまう。


 ……と、今現在把握できている能力はこんな感じだ。

 他にも四種類の魔物を食べてはいるのだが、能力が発現しているのかどうかも分からない状態。


 いつか扱えるようになったらいいとは思っているが、半分諦めている節はある。

 今は何の能力かも分からないものに賭けるよりも、今ある能力を自由自在に扱えることの方を優先しており、まず分かりやすいように全ての能力に【魔喰】と同じように名前をつけた。


 能力を得た順に【四足歩行】【発毛】【毒針】【粘液】【毒液】【悪臭】【変色】【跳躍力強化】【絶叫】【自爆】。

 能力に短い能力名をつけることで咄嗟でもイメージしやすくし、尚且つ間違いも起こりづらいはず。


 ネーミングセンスがなく、名前に何の捻りもないことだけがちょっと残念に思えるが、短くて分かりやすさでいえばこれがベストだし問題ない。

 能力のおさらいもしたところだし、そろそろ期間内での最後の魔物討伐に向かおうか。


 明日からはオーガに献上する獣を狩るため、自分の能力のための狩りは行えない。

 一応、既に百キロの食材の用意は既にできているが、日持ちするジャーキーはなるべく使いたくないし、ジャーキーは量に対して軽いためなるべく生の肉を渡したい。


 本当はずっと自分のための狩りだけを行っていたいところだが、今反発したところでオーガに勝てないのは目に見えている。

 着実に力をつける猶予を稼ぐためにも、当初の予定通りに動くつもりだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る