第2話 宝石

2年後。

弥生やよい聖也しょうや飛鳥あすか。この中から、好きな色を選んでごらん」

三つ子の父・颯太しょうたが言った。

ほぼおんなじタイミングで、三つ子は宝石を取った。

長女・弥生は、

「これ可愛い!」

猛スピードでローズサファイヤへ手を伸ばした。

長男、聖也は、

「これがいいです、美しいいろあい」

そっとアクアマリンを手にした。

次女、飛鳥は、

「綺麗…」

アメジストを取った。

「被るかと思ったけど、綺麗に別れたな」

フッと笑った後、颯太はこう言った。

「この宝石…大事にするんだぞ。返事は?」

「「「はーい!」」」

「元気いいな。父さん、会社行ってくるよ」

「ぱぱ、お仕事休んでよー寂しいよー」

寂しがり屋の弥生が言う。

「ねーさん…いつまでもそうじゃ、大人になれないよ」

聖也が口を挟む。しかし、

「いいもん!やっちゃん、大人になんない!」

やっちゃんとは、弥生の愛称である。

姉に反論されてしまった。

「やっちゃん。悪いけど、今朝は重要な仕事生放送のニュースの撮影があるから、朝は行かないといけないんだ。お昼は帰ってくるよ」

「ままは?」

心配そうに弥生が聞く。ここ数週間、美代みよと会っていない。

『美代、世界ツアー中だからな…今日帰ってくるけど。世界ツアーって、子供にどう伝えよう?』

「ままは?ままは?」

「今日、帰ってくるよ」

「やったー!」



3つの宝石には、チカラが秘められていた。

ローズサファイヤには、モノを浮かせられる。

アクアマリンには、モノになれる。

アメジストには、思考を読み取れる。


しかし、その事を知るのは、三つ子が5歳になってからだ。

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