1話 夜の会合

こんにちは。

僕は川崎千春かわさきちはると言います。

御影みかげ小学校の6年生です。

この物語は、僕と同じ団地に住む4人の幼馴染や同級生たちとの日常を描いたお話です。

僕は真人間ですが、周り…特に僕の幼馴染の4人は癖が強い粒揃いばかりです。

たわいもない話ですが、楽しんでもらえると嬉しいです。

よろしくお願いします。(ぺこり)



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とある夏の日の夜7時。

山梨県の西側にある小さな村の集落センターに、4人の小学生が集まった。

全員が小学6年生であり、同じ県営団地で暮らす幼馴染だ。

薄暗い会議室にある長机に両肘をつき、どこかのメガネのおじさんのようなポーズで椅子に腰掛けているのは川崎千春かわさきちはる

この物語の主人公である。


「県営団地2号棟の同志諸君、よくぞ集まってくれた」


千春の呼びかけで集まった幼馴染3人は、暗い部屋の中に千春の姿を見つけて全員げんなりとした表情を浮かべている。


幼馴染1人目、大野圭介おおのけいすけはため息をつきながら部屋の電気を点けた。


「お前な…電気もつけないで何してんだよ」


その圭介の横で不満そうに立っているのが幼馴染2人目、谷井里奈たにいりな


「急に何なの?くだらない内容なら捻り潰すからね!!」


キョロキョロと辺りを見ながら恐る恐る部屋に入って来たのが幼馴染3人目、水野優衣みずのゆい


「ねえねえちいちゃん、勝手に入って大丈夫なの?」


「勝手じゃない。ちゃんとセンターのおじさんから鍵を借りてる」


「ちいちゃん」こと千春はふふん、などと言いながら鍵を人差し指でくるくる回している。

それを聞いた圭介がはぁぁ、と盛大なため息をついた。


「よく借りられたな…て言うかそれなら電気つけとけよ!」


「いいから早く!皆座りたまえ!一大事なんだ!」


圭介の抗議を無視した千春は、3人に椅子に座るようにバンバンと机を叩いて促した。


「そう言えばムッティは呼んでないのか?」


ムッティ。

幼馴染4人目、原田睦月はらだむつきと言う少年の事である。

しかし睦月は会議室どころか、集落センターに来ている様子はなかった。


「そのムッティの件で呼んだんだよ」


どうやら千春は、この場にいない睦月の事で話したい事があるようだ。


「いいか諸君…よく聞きたまえ。同志の一員であるムッティに好きな人が出来た」


千春の発言を聞いた3人は、先程までとはうってかわって嬉しそうに騒ぎ始めた。


「ムッティに!?嘘っ!!」


優衣は嬉しそうに椅子に腰掛ける。


「あんた…それを早く言いなさいよ!」


里奈は不満げな声を出しつつ、ニヤニヤしながら椅子に座った。


「あのオタク男にねえ…で、相手は誰だよ?」


圭介も半笑いで椅子に腰掛けた。


「それが問題なんだよ…」


千春がはあ、とため息をついた。


「まさか、中学生とか高校生が相手とか?」


ひゃー!大人ぁ!と言いながら優衣が顔を赤らめる。


「まあ聞きたまえ。フッ…今から数時間前の放課後、学校の図書室で事は起こった」


「ちいちゃん、いつまでその喋り方続けるの?」


優衣が首を傾げながら千春に聞く。

優衣の発言を聞いた千春は、顔を赤くしながら吠えるように言った。


「優衣ちゃんっ!いいの!!この方が雰囲気が出るでしょ!!話続けるから聞いて!!」









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