笹島 快 さま

拝啓


 挨拶は割愛です。こんにちは。


 君がお手紙では二度もお返事をくれたので、メールでもそろそろお返事をくれるのでは? と思って送ったら、まったく音沙汰なしだったので、再び筆をとった次第です。なんですか電子は無視して、紙には反応するというその変なポリシー。だから君はモテないし、友達は秋道くんだけなのです。


 と、あまり暴言を吐くと(書くと?)お手紙のお返事も貰えなくなりそうなのでこの辺にしておきます。


 さて、君が書いてきた内容に不服があったので反論です。


 私が「自分が幸せになれるかどうかの決断を、必ず間違って選択」をするとはどういう了見でしょうか。撤回を求めます。断固撤回を要求します。


 私は、君が私に告白してきたことに頷いてお付き合いしたことも、すぐに君が突然私をふった時に泣きすがったことも、決して間違った選択などと思っていません。


 それを言うなら、快くんの方が随分間違った選択をしているでしょう。そっくりそのままお言葉を返します。


 こんな面倒な女に告白したりなんかするから、納得させずに一方的にふったりするから、こうやってしつこく酒の場に誘われるのです。ざまあみろ。 


 少し真面目なことを書きます。心して聞いてください。いや、手紙だから見てくださいかな。どっちでもいいか。


 君は、バレてないと思っているかもしれませんが、私が快くんにふられた理由は、秋道くんに教えてもらいました。


 君も秘密を話す相手は吟味することです。彼はうちの部活きってのお喋り男だったのですから。 


 君は、私が一人でも、誰か複数人とでも酒を飲みに行くのを嫌がりましたね。だから、私は酒を飲むのをやめました。それが、私のふられた理由だと、秋道くんは言うのです。

 意味がわかりません。どうして、君の嫌がることをやめた途端、ふられるのですか。納得いきません。納得いかないまま別れて、卒業して、会わなくなって、そんな時にふと理由を知って、それでますます納得がいかない。こんな理不尽許されません。


 君は、私に会ってきちんと話すべきです。私が納得する理由を、話してください。でないと、私の中にずっと快くんがいるんです。 


 今の彼氏のことはもちろん好きで、結婚まで考えるくらい好きで、彼となら迷わず結婚できると思っていたのに。私の好意の100%を彼に注げない。やっぱり君が邪魔をするんです。それは3%とか、下手したら1%もないかもしれません。それでも、不純な好意になってしまう。君を好きな私が混ざってるなんて、彼にも、失礼でしょう。私がいまだ、結婚の返事を彼に言えないのは、君の所為です。


 どうしても、会いたくないなら、もう手紙でもいいです。せめて、君の言葉で、私の中の快くんの存在を消してください。

 お返事を待っています。


                 かしこ

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