溜息グルメ

猫月ロア

プロローグ

 ────悪夢はバクが食べるもの。いつしか誰かがそう言った。だが現実も、悪夢に等しい時もある。そう思うのはきっと、僕だけじゃない。


 ……なら、起きている時にだって、そんな救いがあっても…良いじゃないか。


 絶えない揉め事、理不尽、面倒な人間関係──生活と切っても切り離せないそれらは、荊のように絡み付く。


 気疲れをするな、という方が難しい。大体笑顔を貼り付けて、それに気付かないフリをしているだけだ。


「はぁ………」「…、…はあ。」


 耳を澄まさなくても聴こえてくる。街、学校、会社、家、SNS…どこにだって広がっているそれは、そう、溜息。


 聞くと思わず自分も、芋蔓式に〝なにか〟を思い出して、欠伸の連鎖のように転び出てしまう。


 ──僕も、その餌食となっている一人だ。

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