激闘キャンプ編【現在進行中!】

『キャンプ』をカジって飛んだ趣味イナゴな僕は①

 なんかサァ。アウトドアブームって定期的にくるよね。

 一時期、父がオートキャンプにはまって……いたと思う。案の定というか、数年でパッタリと、連れて行ってもらった記憶が途切れている。

 飽きたのか? 血は争えないな。


 まぁしばらくはね、ごくたまに行ってたんだよ。今回の趣味イナゴシリーズは、僕が最後にいったキャンプについて、つらつら書いてみよう。


 一度行ったらアレはなかなかに中毒性がある。キャンプ場というのは、たしかに所詮、整備された自然だ。それでも緑の中というのはいい。そして怖い。森林で明かす夜というのは、一度は体験しておくべきだと思う。

 ……ではあるのだが。

 大人になって自分の手でやるとなると、色々趣きが違ってくる。

 なんせ責任が伴う。好き勝手に焚火できない。エアガンで撃ちあったりできない。深夜に森で絶叫するのもできない。

 これは、『そんなやっちゃいけない事が大体できちゃう穴場』に友人たちと何度か出かけたキャンプのうちの、とある回想となる。ああいや、上記のようなことを全部やったわけじゃないぞ。大体はやった。


 しかしこの穴場、なかなかに大変なんだ。

 キャンプ遊びするぐらいなので、ホドホドに山の中にある。だが駐車場がない。さらにいえば、辿り着くのに舗装路がない。

 小型のトラクターなら自走できるような道はあるが……うーん、軽ならギリいけるかな。いや、やっぱ道の幅があやしいかな。わだちもしっかりないし、脱輪しそう。

 そんな道なので、もろもろの物資はバックパックに背負い台車に積んでのぼる。いい年こいた大人がねェ。まあ、それだけの価値がある場所なのだ。


 ……待てよ。台車使ったよな。あの台車はどうしたんだ?

 なんであんなものを使えたんだ。


 ええとね、まず我々は最寄りのローカル駅で降りました。

 近くのなんか農協っぽいスーパーで、買い出しをしました。

 そしてキャンプ地まで汗をたらし息を切らしながら物資を運びあげました。バックパックと台車で。

 あの台車はマジでどうしたんだっけか。

 盗んだりなんて絶対にないぞ。往路で借りたんだろうな。近くのおじさんやらに頼んで借りたんだろう。で、空っぽにしてから返却したんだろう。


 アレを調達してきたのはわれわれ三名のうち、森田くんだったからな。超ファインプレーだった。彼は当時すでに自衛官だったはずだ。確か日程あわせるのが一番大変だったの、森田だ。

 ……しないだろう、あの森田がそんなことは。

 返したに違いない。真面目でけっこうイイ男だ。とにかく、テントと食料その他をそれなりの勾配を踏破し、目的地に運び上げた。この台車と森田くんの脚力に、ずいぶんと助けられた。

 で、もう一人。

 大屋くん。彼は元ラグビー部で、消防士だ。ボディビルを意識した生活とかしないのに体脂肪率がひとケタだ。なので、コイツの体は水に沈む。泳いでないと沈んで死ぬ。体質と訓練の賜物だろうか。謎の生物である。あれだけ炭水化物も脂もガツガツ食うのになんでそんな体脂肪率になるんだ。ともかく大屋も、人間重機のようなパワーで坂道をガンガン登った。


 そうだ。大屋のパワーを示す、恐ろしいエピソードがある。

 何のときだったか忘れたが俺と大屋は貯水池のほとりで水切りをしていた。多分、釣りにでも行ったんだろう。よっしゃ何回跳ねたァ、とキャッキャウフフ遊んでいるうちにこの男、おもむろにコブシ大ぐらいの石を手に取ったのだ。

(何をする気だ……?)

 と呆ける俺をよそにヤツは助走をつけた。

 そしてコブシ大ストーンを思い切り横投げで放った。跳ねた。めっちゃ跳ねた。水音っていうよりもこう、ドッ、ドッ、ドゥッ、みたいな重い音出して跳ねた。最後のほう、水面を転がってる感じだった。そしてあろうことか石は数十メートルぐらいある対岸にまで到達した。

 そしてゴツン! 対岸のコンクリに当たって、やっと沈んでいった。記憶が正しければだが、25mプールが二つ分ぐらいの距離がゆうにあった。俺はボーゼンとした。大屋は大爆笑していた。

 いや大屋さ、水切りってね? 

 平たい石選んだり回転付けたりとか工夫するもんだろ。技術の遊びだろ。パワーで全解決するなよ。水面と平行に超剛速球を放っただけだろうコレ。

〝跳ねた回数〟でいえば、勝負はいい線いったかもしれない。だがあの、最後の水面を転がった感じ……の部分は何にカウントすればいいのか? あと迫力で完全に負けている。

 コイツとは口喧嘩以上は決してしない、と俺は誓った。あとコイツが機動隊に石を投げたりする、荒れた世の中にならないよう神に祈った。警察の人がすごく痛そう。そういう頼れる恐ろしい男である。

 俺自身、悪い夢だったのだと思いたいのだが……実話である。でなきゃエッセイに書かない。実際これ、いくら鍛えてるとはいえ、ホモサピエンスの腕力で可能なのだろうか? 

 物理に詳しい人がいたら是非教えてほしい。あいつは人間なのかを。


 えー、気を取り直していこう。

 俺は会社員。怠惰な一市民。

 こんな三人パーティだ。

 自衛官・森田! 消防士・大屋! 会社員・秋島!


 俺ひとりが群を抜いてモヤシっぽい。たしかに二人ほど頑丈ではない。でも誓って、ラクなんてしてないぞ。大汗かいて台車を押し上げた。

 そのキャンプ地にはなんと、近くに公衆トイレがある。

 紙? お嬢さん、さすがに紙はないぜ。あと超汚い。

 とはいえだな。ちゃんと個室がある公衆トイレなんだよね。全然、公衆はいないんだけど。貸し切り状態なのだけれど。

 だから、公費で建てられたんじゃないかと思うんだ。フツー、個人が道楽で公衆トイレは建てない……よな。

 おそらくは登山道などとして整備されたんじゃないかと思う。だがそのくせ、全く人の気配がない。本っ当に誰にも会わない。なんでこうなったのかね? 登山のことはよくわからないが……行政がミスったとかはありえる?

「整備したけど、実はこっち側から登る人がほぼいなかった」

 みたいな。そういうのかな。そういうこともあるのかなァ。バブルとかブームの残滓とか。とにかく滞在中、遭遇した俺ら以外の人間はたった一人だった。でもイノシシは二度みた。

 ふふ、どうだ。なかなかすごい穴場だろう。

 トイレがあるので、嬉しいことに水道も来ているわけだ。そのへんから横にそれて、木々を突っ切る。しばらく緩い勾配をくだると、河原があり渓流が流れている。これ全部、まるっと俺たちのフィールドだ。サイコーだろ。


 さて輸送を終えた我々は、テント設営に取り掛かる。誰も早起きするべきだとか言わなかった。なので、すでに時刻は16時前ぐらいになっていた。

 確かに夏なので、日は長い。

 しかし16時って、仮にも山遊びの到着時間としてかなり遅い。ノンビリできない。幸いドーム型テントだった。小一時間でテント設営は終了。ペグ(固定杭)は四隅と、数本くらいしか打たなかった。

 タープなんてかさばるものは持って行かない。なので、テントに荷物を全部放り込むわけだよ。さらに樹とか岩とかにロープ引いとけば、多少の風は大丈夫。ヘーキヘーキ。ロープを掛ける樹の幹は、傷まないよう、ちゃんと新聞紙でカバーする。

 テントの中にはスーパーでもらった段ボールを敷く。マットってかさばるからね。現地調達って大事だよね。ちょっと地面が痛いけど、そういうのに文句言う我々ではない。

 

 一休みしたらついにメシだ。

 バーベキュー? 言っている意味が分からない。

 炊飯? パックご飯がある。湯であたためる。

 カレー? レトルトがある。けっこう重い。

 あと棒ラーメンと、『うまかっちゃん』やらの袋麺はメッチャある。

 ベーコンとかハム、チャーシューやウインナーの加工肉もメッチャある。真空パックのヤツ。ツマミにもなりラーメンの具にもなる。で、おやつ代わりにちょいちょいツマミ食いする。塩分とタンパクは補給しないとバテるからね。お湯で温めるか、そのまま食う。ガスバーナー持参してないから。

 カリっと焼いたのもいいけれど、しょっぱければそれでウマい。塩分が身体に沁みわたっていくのが分かるんだ。ベーコン食って温泉みたいな多幸感を感じるんだ。

 あとは重かったけど、ビールだけはしっかりあるよ。

 ふふ。……ビールはだなァ。河に石でこう、小さな囲いを作ってだな? 沈めて冷やすのだァ。流れないようにして渓流で冷やす。これ最高の調味料な。ビールものすごい美味しくなる……気がする。こんなもんだって。自然の中で食えばなんでもウマい。


 これは、オートキャンプや家族でのレジャー等を除いた上での、あくまで私見なのだが……。回数を重ねれば重ねる程、水気のあるものをメシに選ばなくなる。レトルトカレーでさえ水気があるので敬遠したい。重いだけだから。

 ということでね、最終的に生鮮品は一切なくなる。肉も野菜もかさばるうえ、温度管理が大変だ。氷も保冷剤も邪魔。そのうえクーラーボックスは大荷物だ。

 結果、メシが極端に質素になる。最強は乾麺。

 パスタは……ソースがいるので面倒くさい。粉末のワカメスープは持っていく。あとはチップの乾燥野菜とか。そのまま何にでもぶち込める。あるいは100均サプリでビタミンを補う。まぁせいぜい3泊とか4泊なら要らないっちゃ要らない。カップ麺はゴミがかさばるので、あまり良くないと思う。コップ代わりに使えるのは嬉しい。

 で、やはり塩分は命綱だ。ラーメンやら加工肉やら、なんやら。ナッツ類もあるぞ! やはりツマミになるし。

 あの……確かにそうなんだよ。キャンプ用の美味しいドライ食品は、たくさん出ている。だけどこう。

「山に来てまで旨いものは……別にいらないのでは?」

「映画館のポップコーンに、味を追求するのはどこかヘンでは?」

「お祭りの屋台は、微妙な味のくせに高いから風情があるのでは?」

 なんかそういう感じ。俺たちはそういう感じの奴らである。このを分かってくれ。


 で、ガスがないので、肝心の熱源だ。どうしてもお湯は要る。 

 まずテキトーな材料でかまどっぽいのを作る。

 だいたい、その辺の石を積み、土手の赤土とかを粘土にしてバランスとったりする。いびつでもコの字型かCの型になればいいだけなのだが、けっこう大変。大屋がなぜかこの作業が好きなので、任せる。

 俺と森田は薪っていうか、流木とか木の枝を拾いに行く。なるべく乾燥したやつを集める。焚き付けはあの、たくさん落ちてるトゲトゲの葉っぱ。あれはスギの葉なのかな? なぜかどこにでもあって、スゴイ便利だよね。

 俺たちにとって、この時はラッキーがあった。

 なんと、道路の側溝にセットしてある、鉄のアミが落ちていた。落ち葉除けっていうのかな。アレだよ、あの側溝の鉄のアミ。

 ぶっちゃけ不法投棄物だったのかもしれん。だが、おおいに助かった。おかげで安定したカマドが一瞬でできた。石の上にこのドデカい鉄格子乗っけるだけで焚火場作りが終わった。

 この重さなら、多少の事じゃズレたり傾いたりしない。火加減を間違ってキャンプファイヤーぐらいになっちゃっても、コイツの太さと頑強さなら耐える。軟弱な焼き網みたいに、ボロボロにならない。

 スタンダードに枝を組んで、100円ライターで着火。火元はライターのみ。これは確実に親指を軽くヤケドするから、本当はあの、いわゆるチャッカマンにしようね。すぐ河で指冷やすから、平気だったけれど。


 夕飯はチャーシュー乗せたラーメン。6玉ゆでる。だって実質、一食目なんだ。大き目の鍋でゆでる。というかナベ類はこれしか持ってきていない。しかも拾った生木をテキトーに燃やしている。ケムリはスゴイし、ススで鍋は真っ黒けになる。

 一人2玉。輸送に消費したエネルギーと汗のおかげでメチャクチャ美味い。正直、足りなかったぐらい。ちなみにお皿はすべて紙皿かプラ皿。シェラカップは一人ずつ、さすがにある。


 山の太陽は、翳りだしたら秒で落ちる。あっという間に周囲は真っ暗。

 例のトイレにも照明はない。昔はあったのかもしれない。が、切れている。電灯はないに等しい。街灯はかなり下らないと引かれていない。

 まあ足元さえ照られせば、さほど怖くはないものだ。実際に野山をうろついた経験がある人はご存じだと思う。月とか星は結構明るい。中途半端に灯りが多いと、むしろ景色は見づらい。

 もちろん木々の下やらは真の闇で、あちこち根が張ってデコボコだからすごく危ないけど。電池のランタンはテント内でしか使わなかった。


 うっわ。書いてて楽しいとおもったら、余裕で四千超えてたァ。もうこれ、分割しよ。連作にしよ。

 続く!

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