第51話 魔物討伐依頼

 グランとアリシアは午前中はクライン家で勉強をし、午後はギルドで依頼をこなし、夜はアリシアと一緒に今朝の復習をするという生活を送っていた。

 二人で依頼をこなすことで効率的になり、グランはDランクにアリシアはEランクになっていた。


 ランクがDともなると魔獣や、魔物の討伐も行うランクである。

 そんな中カレンが二人に依頼を持ってきた。


「レッサーデーモンの討伐ですか?」


「そう、グラン君もDランクになったし、そろそろ魔物や魔獣の討伐もしたほうが良いってギルドで話になってね。それでこの依頼ってわけ」


 レッサーデーモンは空を飛ぶことが出来るが、初級の魔法しか使うことが出来ない、弱い部類の魔物であった。

 ただ魔物であるため知恵があるため、油断をすることは厳禁である。

 そういう意味では魔物討伐の自信をつけるためのうってつけの相手であった。


「分かりました。この依頼受けます」


「ちなみにアリシアちゃんも連れて行って良いよ。キースさんの推薦もあるし」


 ギルドとしては推奨されない自分より上のランクに受けることについて、ギルドのエースであるキースが推薦しているということでカレンは許可を出した。


「ありがとうございます。グランお供します」


「うん。背中は任せるよ」


 仲のいい二人をみてカレンは笑顔で見送った。




 ヒュレン近くの深い森の中に二人は入っていく。

 グランが斥候として前を歩き、アリシアが付いて行きつつ後ろから来る敵の警戒をしていく。

 二人がレッサーデーモンが目撃されたとする場所の近くまで来ると上の方から鳴き声が聞こえた。

 猿のような甲高いその声の方を見ると紫色の肌をした少年のようなサイズのものが翼をはためかせながら飛んでいたのである。

 それには小さな角と細長い尻尾もついていた。

 レッサーデーモンである。


 レッサーデーモンは二人を馬鹿にするかのように頭上を飛んでいた。

 実際に弓を持っていない二人は飛んでいるレッサーデーモンに攻撃できないと舐められていたのだろう。

 二人は顔を見合わせると、言葉を交わす必要もなく行動を決めた。

 一度深呼吸をしたアリシアは集中し、放つ速度と制御をを意識し唱える。


「『ホーリーランス』」


 一瞬で構築と発射を行った『ホーリーランス』はレッサーデーモンの虚を突き、狙い通り羽に当たった。

 ただそれだけでは羽を破壊することはできなかったのか、ふらふらしながら森の奥に飛んでいてしまう。


「待ちなさい!」


 アリシアは追って森のさらに奥に入ってしまい、グランも慌てて後を追った。


 グランが一歩遅れてアリシアに追いつくと、そこはオークの村であった。

 二十匹近くのオークが周りにおり、その様子をレッサーデーモンは木の上に腰掛けながらこちらを眺めながら笑っていた。


「ごめんなさい、迂闊でした」


「問題ないよ」


 初めての魔物討伐で焦ってしまったアリシアは申し訳なさそう謝るが、グランは笑ってフォローする。


 グランは手投げナイフ取り出すともに強化し投げつける。

 アリシアに注目していたため、反応できなかったレッサーデーモンに刺さり地面に落ちると、それを合図にオークが襲い掛かってくる。


 グランはアリシアを庇うように前に出て剣を振るう、突出してきたオークは斬り払われるが、後続は怯まずに駆けてくる

 グランはオークたちを袈裟切りや突きで倒していくが、数で上回るオークたちはグランを包囲していく。


「『ホーリバレット』! 『ホーリーランス』!」


 グラン相手に回り込んでくる相手はアリシアが『ホーリーバレット』で牽制し『ホーリーランス』で止めをさしていく。

 アリシアを信頼しているため、グランは回り込んでくる相手はアリシアに任せていた。

 アリシアはその信頼が心地良く、それに答えようと魔法を放つ。


 十体ほど倒した頃に剣の切れ味が悪くなってきたため、剣を捨てる。

 それをオークは勝機と勘違いしたのか一斉に攻め込んでくるが、オークの頭をグランの拳が殴り飛ばした。

 入れ代わるように木の棍棒を持っているオークが振り下ろしてくるがそれをステップで躱し、オークを蹴りつける。


 グランが剣を捨てたあたりでアリシアはグランの援護を止めて、周囲に対して魔力感知を行うが、隠れているオークや新手などはいなかった。

 グランが最後のオークを殴り倒すと、アリシアは声をかける。


「お疲れ様。隠れていたり、新手はいません」


「アリシアの方こそお疲れ様。後ろを気にしなくて良かったから戦いやすかったよ」


 グラン達はレッサーデーモンを回収し、オークの討伐証明として右耳をはぎ取って袋に詰めていく。

 本来であれば素材を回収しない魔物は他の魔獣などを呼び寄せたりするため、焼却か埋める必要があるが、森の中のためそれはできなかった。

 それにすでに近くには狼がうろついており、すでに手遅れのため放置して、ギルドに帰っていく。




「レッサーデーモンとオークの討伐お疲れさまでした。報酬は金貨1枚でしたが、分配しやすい様に大銀貨10枚にしておきました。」


(DランクとEランクの冒険者二人でDランクのレッサーデーモンとオーク二十匹を倒すのはさすがね~。ギルドマスタ―に報告しないと)


 カレンが二人の報告をどうするか考えている間、グランとアリシアは何を買おうか楽しそうに話していた。

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