第49話 新しい未来
グランの精神衛生上良くないという、アリシアの判断によりグランとアリシアは家に帰ることになった。
すでにアリシアが話の内容を知っているため、一先ずアリシアが話をして、詳しい話を明日することになった。
アリシアに手を引かれながら帰るグランを見て、ギルド内にいた全員がライルに向ける目は冷たかった。
家についた二人はエリスも交えて、レオンの話について相談する。
帰って来たことでグランも元気になっていたが、その手はアリシアの手をしっかり握っていた。
「え~っとつまり、グランに学園に通って欲しいってこと? 女神ファルティナ様が?」
「はい、そうらしいです。神託を受けた方が何人もいるらしく、しかもファルティナ様から内緒にするようお願いされているようで直接レオン子爵に報告されているらしいです」
それは教会に対しても秘密にされているということで、ファルティナにしてもかなり重要なことであると推測できる
「グランはどうしたい?」
グランとしてはファルティナの魔法で命を救ってもらっており、エリスの治療もしてもらっているため、引き受けたい気持ちもあるが、エリスとアリシアと別れるのは嫌であった。
グランはエリスとアリシアの二人を困った顔で見る。
二人は顔を見合わせて笑い、グランに向けて微笑みかける。
「私のことは気にしなくて良いわ。折角私が元気になったんだもの、小さい頃からギルドで働いていたグランは自分のしたいことをしなさい」
「わたしはもちろん付いて行きますよ。前に今度はわたしが守るって言いましたよね、子爵に反対されても一緒に行けるようにします」
二人はグランを抱きしめ、グランは学園に行くこと決めた。
次の日、グランとアリシアは再びギルドマスタ―室を訪れた。
昨日は敵陣に無策でグランだけを送ってしまったことをアリシアは後悔しており、今回は助っ人を連れて来ていた。
「あ!な!た!は!どうして言っておかないといけないことを昔から面倒臭がるんですか!」
フレイアとキースである。
元筆頭聖騎士のフレイアは元聖騎士であるライルの上司であった。
年下の上司というライルにとって少しやりづらい相手であった。
そのフレイアはライルが貴族であることを黙っていたため、グランが倒れたことを聞いてカンカンであり、キースはまだ言ってなかったのかと呆れていた。
ライルがグランとフレイアに謝り倒し何とかフレイアは落ち着いた。
「グラン君、済まなかった。急に押しかけてしまい君に迷惑をかけてしまった」
レオンも申し訳なさそうにグランに謝り、話は進んで行く。
「学園のことについては私もファルティナ様に以前聞きましたが、本気だったとは」
「何人もの人に神託を上げられていて、女神様の本気度が窺える」
「ところで俺は学園に行って何をすればいいんでしょうか?」
グランは当然の疑問を口にした。
「神託では学園では好きにしていて良いらしい」
「ファルティナ様はグランさんのことを大変気にいっていましたので、学園に行って見識を深めて欲しいとかそういうことじゃないかしら?」
フレイアは学園に行く目的について嘘をついた。
転生者や転移者については世間には秘密であり、ファルティナが神託で言っていないのならば、自分が言うべきではないと考えた。
「わたしも学園に行っても良いでしょうか?」
アリシアの発言にレオンは少し困ってしまう、神託ではグランの話しか出てなかったためだ。
そこにフレイアがアリシアに助け舟を出す。
「行っても良いと思うわ。ファルティナ様はアリシアさんのことも気に入っていたもの、グランさんが行けば一緒に行くと思って神託では言わなかったのだと思うわ」
確かに元聖女であるアリシアはファルティナのお気入りであるだろうし、死んだことになっているアリシアを教会関係者に言うこともしないだろうと皆が思った。
「分かった。ではグラン君とアリシアちゃんの推薦状を用意しておく」
学園に平民が入学するには領主など地位の高い者の推薦状が必要であった。
毎年数人の平民の入学者がおり、学園に入学できるほど優秀な人物が出ることは、領地の評価を上げることに繋がるため多くの貴族は優秀な平民の教育に力を入れていたりする。
「入試の試験勉強についてはクライン家が責任をもって行う。二人は明日からクライン家に来てくれ」
「え?」
グランはてっきりそのまま入学できると思っており、試験があるとは思っていなかった。
アリシアに読み書きを習っているとはいえ、勉強などまったくやってこなかった平民である。
グランが冷や汗を流していると、アリシアが微笑みかけてくる。
「一緒に学園に通えるなんて楽しみですね。試験勉強頑張りましょう」
「そうだね」
その笑みはグランにやる気を出させるには十分であった。
(アリシアのためにも頑張ろう)
グランは心に誓った。
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