第二章 旅立ち
第7話 異世界へ
フワフワ ふわふわ
「ふふふ…」 「…ヌシサマ…」
フワフワ
「…ヌシさま…」 「ふふ…」 「フフフ」
ふわふわ
「…ぬしサマ」 「ヌシサマヌシサマ」
フワフワ
「…ん。」
なんだかとってもふわふわしてる。
懐かしい声に懐かしい感触。
ここは何処だろう…。
…
…
…!
「…っ!」
思い出した!…召喚陣!
思ったより光の大きさが広がってうっかり巻き込まれた感覚はあった。
では、ここは?
目が覚めて周りを見ると、小さな光と共に浮いている。
周りは山深い自然の中、大中様々な光と一緒にふわふわと浮いていた。
「ふふ」 「ヌシサマ」
「ぬしさま」
「フフフ」
小さな光から声が聞こえる。
これはさっきからずっと聞こえてた声だ。
…
なんだか懐かしい…。
ここは私が今井美里として生まれるずっとずっと前に居た世界?
本当に最初の最初に産まれた世界によく似ている。
そして、このフワフワと浮いている光からは私と繋がっている懐かしい気配がする。
「ヌシさま、おかえりなさい」
周りの光の中でも1番大きな光からキチンとした声が聞こえてきた。
懐かしい気配はするけど、この光っている子達は何なのだろう?
「…どう…も?
…あなた達は…いったい…?」
光のなかでも1番大きな光はどんどん大きくなり形を変える。
しばらくうねうねピカピカした後にぽんっと姿が現れた。
「ヌシさま、おかえりなさい」
現れたのは可憐な妖精。
手のひらに乗りそうな羽の生えた女の子だ。
可愛い。
「…私達は遠い遠い昔にヌシさまから生まれた者です。
人間達には精霊と呼ばれています」
嬉しそうにはねをフリフリ答えてくれた。
懐かしい気配と見覚えのない姿の可愛い精霊は嬉しそうに色々と教えてくれた。
1番最初の記憶、なんだかふわっとした存在だったなぁっと思ってた古い記憶は所謂、精霊と呼ばれる存在だった時の記憶だったようだ。
しかも、原始の精霊であり始まりの精霊らしい。
確かに最初、仲間はいなかった気がする。
ただ、思うがままにふわふわして…気付けば仲間っぽいのが増えていた気もするような…しないような…あまりに昔の事で記憶があいまいだ。
精霊によると、どうも私の力が大きくなる度に新しい精霊が産まれ、またそこから…といった形で発生していき精霊が増えていたらしい。
力をつけた精霊はまた新しい精霊を生み…と、いった形で沢山の精霊が生まれた。
つまり、精霊と呼ばれる存在の全ての元を辿ると私になるみたい。
だから、ヌシ呼ばわりされたのか。
…分裂するなんてアメーバみたいだな…。
ただ、ある日いきなり私の気配が消えた。
何か自分たちと違う大きな力が現れた瞬間、私の存在は消えていたそうだ。
多分、その時に私は違う次元に飛んでしまったのだと思われる。
そして次元を超えた先で消滅する事もなく転生を繰り返していたようだ。
「ところで、ヌシ様。
ヌシ様はなんでそんな入れ物を纏っているのですか?」
入れ物?
…あぁ、身体の事かな?
「今、私は人間だから…」
「…?」
私の言葉に不思議そうな顔をする。
「ふふふ、ヌシ様ったら、外は人間ですが気配は変わってないですよ」
「…」
…どゆこと?
「人間にはわからないかもしれませんが、私達には一目でヌシ様だとわかります。
きっとヌシ様に気付いた精霊達はみんな大喜びで挨拶にきます。
皆、ずっとヌシ様が戻ってくると信じていたので…」
ドヤ顔で話す精霊。
…
…と、いうことはわたしは人間ではないの?
私の困惑が顔に出ていたのか、精霊はちょっと慌てだす。
「あ、…とってもよく馴染んでますので人間にはわからないですよ!
…でも普通の人間とはちょっと違うので私達にはわかるのです」
そうか、よくわからないけど人間とちょっと違うのか…。
…
…
…ま、良いか。
人間だって、みんな同じってわけでもないし、みんな違ってみんな良いって聞くしね。
まぁ、そんな事もあるよね。
そんな事よりも、召喚はどうなったのだろう。
「私ってどうやってこっちに来たのかな?
…召喚されたのは私じゃ無かったと思うんだけど…」
「ヌシ様は私達が引っ張り込みました」
…
可愛い笑顔でそんな事を言う精霊に一瞬言葉を失う。
「人間達が何かやってるのを見ていたらヌシ様の気配を感じたので、みんなで頑張りました」
無邪気に話す精霊達。
「…」
「ガンバッタ」 「フフフ…ヒッパッタ」
「ホメテ」 「ヌシサマミツケタ」 「ふふ」
周りの小さい光たちも楽しそうにしている。
どうやら、召喚陣から溢れた光はこの子達の仕業だったようだ。
召喚先の近くで僅かに私の気配を見つけ全力で引き込んだらしい。
「ヌシ様を引っ張り込む事に成功してすぐにここに移動したので…人間達がその後どうなったかはわかりません」
私を引っ張り込んで満足した精霊達はみんなでここに来たらしく、誰も召喚後の様子を知っている様子はない。
彼らは2人とも陣の中に居たし、結局2人で召喚されたのだろう。
…ファンタジー好きとしては其処も気にはなる…。
…気にはなるが、とりあえずあちらの世界に帰れるかを先に知らなければ…。
「あなた達が引っ張ったって事は戻す事も出来るの?」
「…」 「…」 「…」 「…」
精霊達は一斉に黙り込んだ。
少しして、精霊が少し気まずそうに口を開く。
「…あの、…落とすのは出来るのですが、持ち上げる事は私達の力ではちょっと…」
…え、出来ないの?
ひょっとして…あの快適なJK生活を失う事になるのだろうか…
ショックを受けている私に精霊が焦り気味で話を補足する。
「あ、あの!私たちには無理ですが、もう少し力のある精霊かヌシ様なら出来ると思います!」
力のある精霊か、え…ヌシ様って私だよね、…私が自分で出来るの?
「私が?どうやって?」
「えいやぁってやれば出来ると思います!」
…
…うん。出来る気がしない。
「…、あの、…力のある精霊って?」
とりあえず、他に出来る存在が居るのなら其方をぜひ教えて貰いたい。
「…原始の頃に、ヌシ様から直接生まれた精霊達です。
あの者たちは受け取った力も強く、長い年月を過ごしているのでさらに力もいっぱいです」
そんな精霊もいるのか…しかし…
「…そんな強い精霊が…手伝ってくれるのかな…?」
「私達は生まれた時からヌシ様が大好きなので、ヌシ様のお願いを断る事なんてないと思います!」
自信満々で答えてくれた。
なるほど。
よくわからんが、大丈夫ってことだな。
…とりあえず帰る事は不可能ではなさそうで良かった。
召喚された2人の事は気になるけれど、ひとまず帰る方法を見つけるのが先かな。
「その精霊はどこに居るの?」
「…さぁ?…気にした事がなかったのでわかりません」
全く悪気のない爽やかな笑顔で精霊は答えてくれる。
周りの光たちもふわふわピカピカと楽しそうだ。
「ワカンない」 「ふふ、ヤマカナ」
「フフフ、カワカナ」 「ドコカナ」
頼りになるのか、ならないのか悩むがひとまずそれは横に置いておいて、私は強い精霊を探し出す事を心の中で決意した。
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