第20話
翌日、エレノアを冒険者登録させるために再びギルドを訪れたのだが・・・
う〜ん、この視線は恐怖と、色目か? やっぱエレノアは超美人だから見ちゃうんだろうな〜。
「おいあれ、昨日の」
「期待の新人たちボコボコにした奴だろ?」
「てか一緒にいるエルフ美人すぎる·····」
「強い男に惹かれましたってか? クソが!」
あらら、嫉妬の視線が徐々に増えてきたよ。
まあしゃーない、エレノアは美人だし。
「すみませーん、こちらのハ·····エルフの冒険者登録お願い出来ますか?」
「あ、アルス君··········わあすっごい美人!!·····じゃなくて、冒険者登録だよね」
エレノアの登録を済ませギルドを出ようとしたら、昨日とは別のパーティが俺たちの退路を塞いだ。
ちっ、いい加減しつけーなマジで。昨日の見てなかったのか? あ〜〜〜面倒くさすぎるーーーー!!!
アルスがイラついてるな・・・昨日の今日では無理もないか。俺には止められないし、こいつらの運が無かったという事だな!
アルスは盛大にイラつき鬱陶しいオーラが前面に出ていた。一方ダイアスはアルスが明らかに不機嫌になってるのに気づいたが、色々と諦めた。
「えっと、なにか御用ですか?」
努めて笑顔で聞くアルスだが、『迷惑です』と思いっ切り顔に書いてある。だが、道を塞いでる男達は気づかなかった。
「いや、ダンジョンに入るのは初めてだろうからさ? 僕達と入って楽に稼げる場所とか教えてあげようかな〜って」
下心が透けて見える誘いにアルスは溜息をグッと堪える。
「有難い申し出ではありますが、初めてダンジョンに入るからこそゆっくり探索したいので」
「それなら尚更僕達が案内をして·····ッ!!」
次の瞬間、アルスは殺気を〝あえて〟コントロールせずにギルド全体に放つ。
机や椅子がガタガタと音を立て壁にヒビが入る。ジョッキを持つ冒険者の手や肩が震え、ギルド全体に緊張が走り重いプレッシャーがのしかかった。
「はぁ、俺はこの街が嫌いになりそうだ。 ダイアス、エレノアの感覚を取り戻すために訓練場で相手しててくれ」
「··········分かった」
ダイアスはエレノアと訓練場に移動した。
「おい、お前ら。昨日の戦い見てなかったのか? 俺もある程度の実力はあるしダイアスも同じくらいの実力がある、俺達はお前らを必要としてないのが何故わかんねえんだよ。確かにエレノアは美人だが俺の仲間だ··········次ちょっかい出してきたら殺すぞ?」
ギルド全体に放っていた殺気を今度は絡んできた男達のみへ向ける。 男達はあまりの恐怖に膝をつき、 ナルシスト冒険者は股間に丸い大きなシミが出来ていた。
「そこまでにしてもらえるか?」
髭を生やしたダンディな男が、階段から降りてきてアルスに声をかけた。
「··········ギルドマスターですか?」
「あぁそうだ、ちょっと話がしたい。上に来てくれるか?」
自分に対する敵意などは感じられなかった為、特に反論せずついて行くことにした。
「分かりました」
◆ ◆ ◆
「柄が悪い連中ばかりですまん!」
部屋に通されソファに座ると開口一番、腰を曲げて謝罪をしてきた。
「·····あなたのせいじゃないですよ、特にこういう町では」
ラビンリスのようにダンジョンの為に作られた街は、至る所から冒険者が集まる。 それを全て管理するのは事実上、無理ってことはアルスも理解していた。
「··········強いだけじゃなく、頭も回るか。こりゃ化け物が出てきたな〜! 俺の名前はディーガンだ、よろしくな! えっと、アルスだったか?」
「今すぐにでもこの街を出ていこうと考えていましたが、ギルドの長が良い人で良かったです。こちらこそよろしくお願いしますね、ディーガンさん」
「アルス達は全員Fランクだが実力はあるし、好きに攻略してもらって構わんからな」
「ありがとうございます」
ギルド長ディーガンとの話を終えた俺は、1階へと戻ってきていた。
「エレノア、感は取り戻せたか?」
「はい、ダイアスのお陰で全く問題ありません」
「アルスはどこに行ってたんだ?」
ダイアスとエレノアは先程まで激怒していたアルスが、穏やかな雰囲気に戻っているのを見て安心していた。
「上でギルドマスターと話してたんだよ、良い人だったぞ」
「それは良かった、街を壊滅させるような顔してたからな」
「んな事するわけねーじゃん! 」
先程の殺気を浴びせられた冒険者達はダイアスの言葉に、『こいつら正気か?』と思ったもののアルスの殺気の質からしてもしかしたら・・・と想像し震えた。
「じゃ、早速ダンジョン入るか! 地図とかあるらしいけど、答えみながら進んでも詰まらないから無しで行こう!!」
再び意味のわからない発言をするアルスに2人は苦笑いを浮かべ、周りの冒険者達は目が点になっていた。
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