第2話
なんだかんだ過ごすうちに、この世界に転生してから3年が経った。
俺の家はセントリア男爵家、この家の次男アルスとして生まれた。
両親は元冒険者で、父親のマルスは剣豪と呼ばれ大陸中に名前が知られている。母親はアリシア、凄腕の魔法使いである。ある時ドラゴン討伐の褒美として、国から男爵を貰った。あらゆる貴族から自営に取り込もうと誘われるも、全て断りリューゼント辺境伯の余騎として男爵になった。
中央貴族達に反感を持たれたらしいが、両親はどこ吹く風って感じ。なんでも冒険者の時にリューゼント辺境伯にはお世話になったらしく、割とズブズブな関係なんだとか。
父親には第二夫人がいる。
中央貴族のパリシェット伯爵家の次女クレア。父親に一目惚れして猛アピール、第一夫人はアリシアで良いならと条件をつけて婚姻した。
お家騒動とか勘弁してくれって思ったが、母同士の関係は良好で問題は皆無らしい。
「アルス坊っちゃま、また瞑想ですか? 勉学の時間ですので移動を」
「···············ん、サリーか? 俺まだ3歳だよ? 早い気がするけど·····」
「何を言っているのです! ジーク坊っちゃまはこの時期には始めていらっしゃいましたよ!?」
専属従女のサリーに促され勉強スタート。
長男のジークは5歳ながら読み書きは完璧で知識欲が凄い、ワンチャン転生者じゃね?と思うくらいには天才だ。
ジーク兄さんがこの家を継いだら凄まじく発展するだろう。
「アルス坊っちゃまは読み書きが苦手ですから、本日は違う勉強をしましょう!」
「·····分かったよ」
この世界の文字は超ムズい。
日本語を覚えてるのが逆に足を引っ張ってるんだろうな〜、古代文明の勉強してる気しかしない。
今日のサリーによる勉強は地理だった。
俺がいる国はバーバント王国、大陸の1.2を争う大国だ。西には同じく大国のペスタリカ帝国。北にはスノウゼン王国。南には複数の小国が治めるフリッツェント連邦国がある。
中でもバーバント王国は特殊で、東側に〝死の森〟と言われる魔物が大量に出る森がある。 量だけでなく魔物の質も他の場所とは比べ物にならないとか。俺の両親も緊急時は死の森へ狩りに向かう契約をリューゼント辺境伯と結んでいる。
「··········サリー、この家に必要なのは力じゃないの? 知識は兄上が豊富なんだから大丈夫だよ」
「それでも最低限の知識は必要です!」
サリーの有無を言わせない圧に負けて渋々ながら勉強を頑張るアルス。
◆ ◆ ◆
神様に言われた通りこれといった力は持って無かった、全ての人にある魔力すらも無くほぼ前世の人間みたいなもんだ。
ただアルスにもアドバンテージはあった。
この世界に来てからずっと視力が悪かった。いや、悪いと思っていた。アルスには〝魔素〟が視認できた、視界全体に映るモヤモヤは魔素だったのだ。
これを操れれば魔法も使えるようになるかもしれない。そう思った俺は某少年マンガからインスピレーションを受けて練習を始めた。
某忍者がカエルと一緒に修行し習得した仙人モー・・・・俺はこれに〝魔素干渉〟と名付け生後すぐから瞑想を続けた。
魔素をエネルギーと捉えて〝親密度〟を上げるよう瞑想をした結果、よく聞く身体強化魔法を独自に改良し、体に纏うように魔素を集めて身体能力を上げる«魔鎧»、魔素を圧縮させながら集束し発射する«魔弾»や«魔槍»を開発した。
「たぶん自分を守れるくらいの力だとは思うけど、死の森で試したいよな〜··········この能力は誰にも話してないけど、父さんにだけ許可貰うために話しておくか」
寝る前の瞑想を終えた俺は眠りについた。
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