第28話 決戦の地へ
3日後。
「来てやったぞ。」
楯無管理官が、4名の部下を引き連れ、改修工事の終わった国立競技場に現れた。
午後10時50分。立ち入り禁止となっている場所、彼ら以外には人間はいない。
が、ナイター照明が点いている。
❝遅かったではないか。❞
入口の扉が勝手に開いた。
声の主はすでに中にいる。もう人間と数えなくなった、クサカの体を持つ悪魔が。
管理官『楯無 喜怒楽(キドラ)』
異能力『風林火山』。布で覆われた四角い箱のようなモノを左手に持っている。
『楯無 良器(りょうき)』管理官の弟。
異能力『直感』そして、姉の能力も使える?
『多妻木 アサヒ』青緑のドレス風戦闘服。
異能力『癒し』。何故か歌いながら治癒する。
『香取 ミナミ』攻撃的な美人。
異能力『御火(ミカ)』。管理官顔負けの炎を使う。
『湖西 マシロ』白装束の女剣士。
異能力『斬撃剣』。剣撃と、その速度を利用した斬撃を使う。合せ技も持つ。
「開始10分前に着いたぞ、文句を言うな。」
あくまで強気の管理官。態度大大大大、『態度4L』の女だ。
召喚に適した日時を知っている。元々は、自分たちが行う予定で準備していた。この国立競技場の改修指示も彼女だ。
❝悪魔は約束を守る、入れてやろう。❞
『この戦闘で生き残った奴に、特等席で我が召喚を見せてやろう。』あの戦闘中に言っていた。
「ふん、大嘘つきめ。」
毒づいてから、中へと入る。
悪魔が守るのは契約、これを破ると悪魔は灰になる。
だが、口約束は平気で破る、痛む良心を持たないからだ。
中へ通されるのは分かっていた。
悪魔は自尊心の塊だ。己の成功を誰もいない所でなどやらない。
楯無姉弟への警戒心も、もう無い。この3日間で、さらにパワーアップしたのだろう。
競技グラウンドに出た。
悪魔はほぼ中央の位置、宙に浮いている。
この国立競技場は、形は縦長の楕円形、北向きよりちょっとズレた、北北東を向いた楕円形。
しかし、改修で増設したモノは、きっちり東西南北をそれぞれ向いた、4つの祭壇。今、悪魔がいる位置を中心とした東西南北に祭壇がある。
人が余裕で立てるお皿のような円形の祭壇、そこに、1つずつ心臓が置かれている。
東は青龍(青島龍介の心臓)
西は白虎(白石虎蔵の心臓)
南は朱雀(朱山燕雀の心臓)
北は玄武(玄田武夫の心臓)
そして、その中央に麒麟(黄川田麟太郎の心臓)を埋め込んだ悪魔がいる。
来賓?の管理官たちは、グラウンドの南の方、管理官を4人が囲むようにして立っている。
「そういえば、まだ『名前』を聞いていなかったな?」
悪魔に対して強気に出る。
❝『アスタルト』だ。❞
「ハハッ!嘘をつけ!」
豪快に笑い飛ばす。
「たった666の生贄で、そんな大物が呼べるものか!」
それも、666人では無い。
管理官の推測では、異能力を666生贄とした。クサカが1人に幾つも埋め込んでいた。だから「あと100」からが早かった。
当たっていた。そしてクサカは、残り100のほぼ全てを、身内で消化した。他のアジトとの連絡を取らない機密性を利用して、次々アジトの団員を殺した。
1箇所に集め、無味無臭のガスで中毒死させた。その生贄で『悪魔』を呼んだ。
「悪魔『カオス』というのはどうだ?」
❝カオス……混沌か……いい名前だ。❞
ほとんどの悪魔には名前がない。昔と違って活躍の場がないから、語られないのだ。
ただし、名前がないから弱いという訳ではない。悪魔は悪魔、人間の敵う相手ではない。
「昔の思考だな。
平成生まれの私らには、『意味不明』『ごちゃごちゃ』『めちゃくちゃ』そんなんがカオスだ。」
「無理に若者を気取らなくても、『ちゃんぽん』とか『和洋折衷』とかでいいんじゃない?」
「お前は何歳だよ、アサヒ!」
「同い年でしょ?」
悪魔の前でも臆しない2人。「平成生まれ」は合っている。「21世紀生まれ」と言ってたら、弟からツッコミが入ったろうが。
❝フフフフッ。カオス(混沌)によって貴様ら人間は終わる。❞
絶望するまでは言いたい放題、強気にさせておこうという悪魔カオス。振り幅があるほど、この後が楽しみとなる。
「カオス(めちゃくちゃ)で終わるのはお前の方だ。」
管理官が睨みつけた時、ちょうど11時(23時)となった。
満月の月明かりが、
改修で増設されたキラキラのポールによって、その表面の鏡に反射し、1点に集められていく。
❝さあ、召喚の始まりだ!❞
ここからは、布陣の中にいる者は、召喚終了まで動けなくなる。悪魔とて例外ではない。
だから中で見せた方が安全、だからグラウンドへ誘い入れた。
動かせるのは口と手だけ、喋れなくては召喚の儀式が成り立たない。同様に、儀式に手の動きは良く使われる。だから手と口だけは動く。
満月の光が、召喚の力を得る中央へと集められる。その中央にいるのは、悪魔『カオス』だ。
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