第7話 探り合い……動き出す『敵』
楯無管理官が向かったのは、警察病院だった。
所在も詳細も、知られていない秘密の警察病院。
「どうだ?何か白状する気になったか?」
病室に入るなり、寝たきりの連中をせかす管理官。
両手首と両足首、それと股間の大事な部分の無い4人の男がそこに寝ていた。
「で?……誰なんだ、貴様は?」
奥に寝ている、昨日はピエロの覆面を被っていた男に問いただす。
銀行強盗犯4人の指紋照合は済んでいる。
回収した手首から、簡単に身元は割れた。4人全員の現住所と氏名は分かっている。
しかし、
「……そうですね。条件付きで話しましょう。」
さっきまでロクに動けず、点滴で生かされているような状態だった男が、急に笑顔になって話し始めた。
「では、改めまして、始めまして楯無管理官。」
「始めてじゃないだろ。昨日も貴様とソイツ、コロコロ入れ替わってたよな?」
同一人物を「貴様」「ソイツ」と呼んだ。
「……気付いてましたか。」
ピエロの覆面ではなく、ソイツの顔で笑う謎の人物。
この4人部屋の病室に今いるのは、寝たきりの強盗犯4人と、管理官、秘書官。
部屋の外には制服の若い女性が1人待機。ただの運転手なのか、あるいは護衛なのかはまだ分からない。
「では、ゲームをしましょう。貴方が勝ったら、名前と、次の犯行声明を答えます。」
元覆面ピエロが、不気味に笑った。
「貴様が仕切ってんじゃねえよ。」
管理官が言い返した時、
元ピエロと、他の3人の目が同時に光った。
「?!」
結界が張られた。
病室が『敵』の結界に包まれた。
外で待機していた女性警官が中へ飛び込もうとしたが、結界に弾かれて入れない。彼女は護衛だったようだ。
「特別な結界です。
ここへ運ばれた時から、ずっと準備していました。」
してやられた……ようだ。
「ゲームのルールを説明しましょう。
3体を別の攻撃方法で倒せば、貴方の勝ちです。」
そして、ゲームが始まった。
ほとんど寝たきりだった元ピエロ以外の3人が、変貌し、前日の巨大ゴリラよりも不気味な魔獣へと姿を変えた。欠けていた手足も生えている。
「だから、
貴様が仕切ってんじゃねえよ!」
楯無管理官の異能力『幻影』が動いた。
『風』の力が一体を吹き飛ばす。
元ピエロに直撃しそうになり、慌てて避けた。宙に浮く『念動力』の異能力(トリック)で回避した。
吹き飛ばされた一体は、壁に激突して潰れた。避けなければ元ピエロも潰れていただろう。
「情報を引き出す前に殺す気ですか?」
浮いたままのピエロが管理官へと向き直った時、
2体目はすでに『火』に包まれていた。
3体目がやっと攻撃を仕掛けた。もうコイツしか残っていない。
が、見えない壁に阻まれ、管理官には届かない。『山』に阻まれるかのようだ。
それどころか、
グシャ!
見えない壁に逆に押され、壁に挟まれて潰れされた。
……
あっという間に、ゲームクリア。
「驚きました……」
宙に浮いたままの元ピエロ、絶句するかと思いきや、
「噂の『風林火山』の異能力、見せて戴きました。」
満足そうに笑った。
「できたら『林』も見せて戴けませんかねえ?」
更に笑うのを管理官が睨みつけると、
「ああ、そうでした。
『ムクロ団』と申します。」
ついに『敵』が名を明かした。
「6(ろく)9(きゅー)6(ろく)と書いて
『696(ムクロ)団』です。私はクサカ、
『クサカ ショウマ』です。」
顔も姿も不明だが、名前と組織は判明した。
「厨二病だな。」
バッサリと一言。
しかし、瞬殺した余裕も、勝ち誇る素振りもない。
(まだ……見えて来ない……)
変貌した連中は、もう人間には戻れない。だから躊躇なく始末した。
696団……異能力者(トリッカー)を増やせる組織、一般人を異能力者(トリッカー)に改造できる組織だとしたら、
(厄介な相手かも知れない……)
もう少し情報を引き出したい。
「……では、犯行声明の方を、」
足がかりになる情報だろうか?
「貴方の部下を、これから襲って殺します。」
?!
『これから』襲う?!
秘書官と、外にいる女性警官が大きく動揺している。仲間を心配している。
が、
管理官はまず2人、この場にいる2人を守ることを考えた。彼女たちも部下なのだ。
「この結界、特殊でしてね。」
元ピエロが笑う。
「貴方が今使った『幻影』、弟さんの方に戻せますかねえ?」
『幻影』も 外に出さない結界、そう言いたいのだ。
「術者が死んでも3時間は持続する結界です。
『林』は弟さんの方にあるんですか?
私はあちらで確認させて戴きます。」
そう言い残して笑い、元ピエロは自決した。
リョウきゅん♡が危ない!!
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