実家の片付けで出てきた物の話
紗久間 馨
長い間、眠っていた物
2023年、私は多くの時間を家の片付けに費やした。きっかけは同居していた祖母の遺品整理だ。
「タンスの中から札束が!」
なんてことはなく、高く売れるような物も出てこない。
祖母は純金のアクセサリーを持っていたことがあったらしいが、生前に現金化して健康食品の購入に使っていた。部屋に積まれた段ボールから、期限切れの大量のサプリメントが出てきた。10年前に切れているものもあり、嫌気が差した。
そんな憂鬱な片付けの中で衝撃を受けた物を書いていく。
『伯父が書いたラブレター』
祖母の遺品の中に、遠距離恋愛中だった伯父が伯母に書いたラブレターがあった。祖母から見れば娘に送られた手紙を、どうしてずっと持っていたのかは不明だ。
内容から、結婚の話まで進んだ関係で、夏の帰省で会った後に書いた手紙であることが分かった。
「早くまた会いたい」
「占い師よると早く結納を済ませた方がいい」
そのようなことが綴られていた。私の知る伯父からは想像できないほどに情熱的で、読んだことに罪悪感を抱いてしまった。
そして、ふと思い出す。私も中学生の時に片思いをしていた男子にラブレターを書いたことを。どうか処分していてほしいと願う。
『父の成人向けあれこれ』
片付いた祖母の部屋を父が使うため、部屋から部屋へ荷物を移動させていった。父自身は片付けも何もしない。しかし、勝手に捨てたりはできないので運び入れていくだけだ。
成人向けDVDが入った収納ケースがあるとは言われていたが、透明なので中身が見えてしまう。これは精神的に苦痛を感じた。
さらに、父も存在を忘れていたであろう
父の性的嗜好に対してどうこう言うつもりはないが、そういうDVDと本くらいは自分でどうにかしてほしい。今回は移動させただけであり、将来的には再び私が片付けることになるだろうから。
そういえば、古い電動マッサージ機も出てきたのだが、これは・・・・・・。正しくマッサージ機として使っていたのだと思うことにしておく。
『母が書いた手紙』
私の産まれた直後の記録が出てきた。そこに母が父に向けて書いた手紙が挟まっていた。内容から、産まれたのが女の子だったことで周囲に何か悪く言われたのだと想像できた。
「がっかりさせてすみません」
「次は男の子を産むから見捨てないでください」
そんな言葉に「産まれてきたのが私で悪かった」と思わざるを得ない。この家に望まれていたのは後継者となる男の子なのだ。
手紙を読んでしまったことで結婚に対する嫌悪感が増した。結婚願望がなく生涯独身を決めているので問題はないのだが、そういう話題になるとうんざりする。
と、こういった物を見て精神的ダメージも受けつつ、片付けを終わらせた。そして、私自身が他人に見られたくない物は早く片付けておこうと強く思うのだった。
実家の片付けで出てきた物の話 紗久間 馨 @sakuma_kaoru
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