夜十丸くんは憑かれてる。
40会
1.中神さんと夜十丸くん
簡単に説明すると超自然的存在、いわゆる霊と人間の仲介役をすることなんです。
その仲介人を
私、
なので、ここまで苦労してきました。
小さい頃から、見えるのが当たり前だったので
普通の人には見えないモノや聞こえない声の事を喋ったりすると、気持ち悪がられました。
おかげで中学生まではろくに友達も出来ず、
しかし、高校ではそんな生活したくない
そう思って、関西にある実家を離れ、関東に引越して来て夢の一人暮らしを手に入れることが出来きました。
ここまで色々ありましたが、ようやく私のきらめく高校生活が始まるのです。
いや、始まったと思っていました、今日までは。
入学して間もない授業中、私のきらめく高校生活を脅かす存在に出会ってしまったのです。
それが、隣の席に座っている男の子。
名前は、
いつもぼーっとしてて、何を考えているのかよく分かないしちょっと怖い。なので、隣の席なのにあんまり話したことありません。
そんな彼には今、とても無視出来ないほどの強大な悪霊が憑いています。しかも3人。
1人目は、某ホラー映画に出てくるようなロングヘアーに白いワンピースの女性。夜十丸くんの席の真正面に立ち、物凄い形相で夜十丸くんを睨んでいます。
2人目は、立派な髭に軍服を着て銃を持っている外国人のおじさん。夜十丸くんの席の後ろに立ち、恨みでもあるのか銃口を後頭部に向けています。
3人目は、アニメや漫画でしか見た事のない、海賊帽を被った骸骨。夜十丸くんの席の横に立ち、怒ってるのか大きな剣を夜十丸くんの首に突き立てています。
今まで憑かれやすい体質の人は何人か見てきたけど、ここまで憑かれてる人は初めて見たかも。
しれっと授業を受けてる夜十丸くんが不思議になるくらいの悪霊が一気に3人も憑くなんて。
というか、一体何をしたらそんなことになるの?
こんなのがいたら授業に集中できないんですけど。
「ユーラシア大陸を東へ西へと繋ぐ交易路がありまして…」
先生の話に集中しようとしてもダメだ、全然入ってこない。気になりすぎる。
このままでは今後の授業に支障をきたしてしまうので
悪霊と話をして出ていってもらえるように頼んでみようかな。
私は、霊が見える、声が聞こえる以外にも霊と会話をしたり、悪霊を除霊したりすることも出来るのです。
除霊は訳あってやりたくないので、話し合いで解決できるように試してみることにします。話してみたら意外と分かり合えるかも知れないし。
霊との会話は、声を使って直接話すのとテレパシーのようなもので話すのと2通りあります。
直接話した方が強い霊力を使って伝えることが出来るので確実なのですが、人が大勢いる所では使えません。
テレパシーなら力は劣るかわりに周り人にのバレる心配はありません。
私は早速テレパシーを使って話しかけてみることにしました。
(あの、すみません…)
(殺スゾ)
アカン、会話にならへん。
ごっつい悪霊や、この人ら。
ついつい関西弁が出てしまうくらいの悪霊3人組と会話するのは一旦諦めて、3人がどういう会話をしているか耳を澄ませて見ることにしました。
(コイツ殺ス?)
(絶対殺ス)
(落トシテ殺ス)
(ドコデ落トシテ殺ス?)
ダメだ、会話に殺意しかない。
これじゃあ聞く耳もってくれないか
「この交易路で中国から絹を大量に運んだことからシルクロードと呼ばれていて…」
(シルクロードデ殺ス)
(イイネ)
なんか授業は聞いてない?
私の話には聞く耳持たなかったのに。
というか、まずい。このまま放っておくと夜十丸くんが呪い殺されてしまう。
入学早々にクラスメイトが1人呪い殺されてしまうのを見過ごす訳にはいかない。どこかで直接悪霊たちと話そう。
そう決意して、この日1日隙を伺いましたが、結局上手くいかずに放課後のチャイムを迎えてしまいました。
ど、どうしよう。
こうなったらもう、こっそり夜十丸くんを追いかけてなんとかするしかない。
覚悟を決めた私の隣で悪霊に憑かれたまま夜十丸くんは教室を出ていきました。
早く追いかけきゃ。
「中神さん!」
「はひっ!?」
夜十丸くんを追いかけて教室から出ようとした時、クラスメイト声をかけられました。
声をかけてきたのは綺麗なブロンドヘアーに淡い青の瞳の女の子。
うわぁ、綺麗、外国人さんかな?
本当に住んでる世界同じ?というか、こんな子が私になんの用事?
「あの、今からクラスの女の子何人かで親睦会やろうかなと思ってるんだけど、中神さんもどうかな?」
えぇー、そんなの。
めちゃくちゃ行きたい。
こんな綺麗な人が私を誘ってくれるなんて。
私なんてまだほとんどクラスのこの名前も覚えられてないのに。なんて優しい人、絶対に友達になりたい。
ああ、私の描いていたきらめく高校生への第1歩が目の前に。
でも、今は悪霊トリオをどうにかしないと
こんなチャンスは二度とないだろうけど
隣の席の子が死んじゃうよりはマシだから。
「ごめんなさい!すごく行きたいけど、今日はどうしても外せない用事があって!でも迷惑じゃかったらまた誘ってください!お願いします!」
全力で頭を下げて、教室を駆け抜けて廊下に出ました。
さらば、私のきらめく高校生活。
「あれ、どこ行ったんだろう?」
クラスの子と話しているうちに夜十丸くんを見失ってしまいました。
落ち着いて、霊が言ってたことを思い出そう
たしか、落として殺すとか言ってたっけ
ということは、夜十丸くんを高いところに向かわせるはず
ここから1番近くて高いのは屋上だ。
夜十丸くんを屋上に向かわせてそこから落とす気なんだ。
そうと分かれば急がないと
私は走って屋上へと急ぎました。
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