第16話 みんなで湯船
「あら? お帰り。何がスゴいのかしら?」
「聞いて驚くなぁ? な、なんと、温泉流し湯だよ!」
「ど、どゆこと?」
「えへへ、温泉とは、厳密には違うのだけどね。パパが沸かすのが大変なんだ、って言ったら、イルが最近近くで温泉の源泉? が発見されたらしいって言うから、じゃあちょっと掘ってみる? ってマコが200mくらい掘ってみたら、なんと、その近くの源泉の影響なのか、熱くなっている層にぶつかったんだ。本当は1000m以上掘らないと源泉には辿り着かないらしいからね。源泉からお湯を取り出す知識はないし、他人が掘ったものを拝借するのも忍びないなぁ、って言ったら、パパがありったけの水道管のもパイプを持ってきて、折り返すようにU字型に接続して穴に埋めたんだ。その片方をうちの貯水タンクに、もう片方を今日初お披露目の簡易浴槽に入るように設置して、タンクの蛇口を捻ると、熱~ぃお湯がジャーって出てきたよ。元はこっちの水だし、暖めてもらっただけだけど、雰囲気が違うよね。今日は時間がないからやらないけど、川から水を引けると、掛け流しの温泉もどきが完成するね、ってパパと話してたの。そしたらすごいよね。24時間いつでもお風呂タイムなんだよ」
「それは、すごいよ。マコちゃ、でかした! いや、でも、それスゴすぎない?」
「えへへ、まぁ、イルの機転と、パパの知識・資財調達力の賜物だよ」
「いや、だって、この短時間に200mもどうやって掘ったのよ」
「えへへ、わかる? パパの資材の中にバスケットボールくらいの直径の円筒があったの。もしかしたらと思って、回転しながら下に進めてみたらうまく進んでくれるじゃない? 5mくらい進んだら、切り取られた土を取り出していって、でも途中から進まなくなったけど、下に行くほど、固くなるみたいで、パパに頼んで、鋸みたいに円筒の片方をギザギザにしたらまた進めるようになったの。途中、石に阻まれたから、パパと一緒につぶてを撃って砕いたの。地中に向けるから、遠慮なく思いっきりぶっ放せて、スッキリしたよ。良い練習にもなったね」
「そうやって進めていくと、掘り出した土が段々熱くなってきたの。さっき言った理由で、マコたちは熱だけ拝借できれば万々歳でしょ? そしたらイルとパパで高度な議論が始まったから、マコは紐に石をくくりつけて、穴の最深部まで下ろした紐の位置から、引き上げて測ってみたら大体200mくらいだったわけ。その長さをブレインチームに伝えると、それならギリギリ水道管で往復分があるって言うじゃない。そこでU字工事大作戦に決まって、管を繋げて、タンクの蛇口を捻ると、うまくいくじゃない? そのままの方法でも、川から水を引く場合でも、高低差をつけてやると、サイフォンの原理を利用しやすくなるって言うし、今までだと地面より高い位置に湯面があって、どうしても上側に跨ぐ必要があったでしょう? 誰も見てないとはいえ、乙女的におまた丸見えは一考すべきところでしょう? だから新大浴場が丸ごと収まるように地面を掘って低くしてみたの」
「おぉーっ、なんかすごいことを、さらりと混ぜたね。でも、まぁ、最後のは一番嬉しいかもね。ありがとう、マコちゃ」
「デヘヘ。そんじゃあ、マイ大浴場へゴーしようよ?」
「OK! ケインも行くよ」
「はい」
「パパぁ、連れたきたよぉー。あぁー、パパ、ズルい。先に入ってるよ。あれっ? イルは何で入ってないの?」
「私はマコちゃんを待ってたの」
「そっかぁ。ありがとう」
「うわぁーっ! コレはすごいね? あ、ちょっと待って? シールド張り直すわ」
「え? シールドって?」
「あぁ、言ってなかったわね。今からみんなでお風呂に入ったら誰か来たときに困るでしょ? まぁ、誰か来ることもほとんどないけど、今野盗に襲撃されても対応できないしね。それで、誰かが入って来れないように、それがわかるように、それと、たぶん光学的に見えづらくなるように大きめのオーラを張るのよ」
「そうだったんだ。すごいセキュリティだね」
「でしょう? だから安心してお風呂にも入れるのよ?」
「なるほど、じゃあ、早く入ろう?」
「ほら、ケインはジンのほうに行ってくっついてなさい」
「あ、ありがとう。ジンさん、お背中流しますよ?」
「あ、じゃあ、お願いしようかな?」
ジャバーン。
振り向きざまに立ち上がりながら見上げた先にはケイン。ひとしきりのお風呂構築作業の達成感で呆けていたジンの両目に飛び込む裸体。意思とは無関係に一瞬で反応する。
「わゎ! そうだった。ヤバい! うっかりしてた」
「あ? ジンさん? もうそんなに? 大変!」
ケインは子どもたちから見えないように隠しながらジンを湯船から出す。
キラーン☆彡
そんな異変に気付かぬマコではなかった。
「えー、何々? うわぁーっ! パパのもおっきくなってるぅ。初めて見たよ。あぁ、ケインのヌードに反応しているのかな? イルー、ほんとだね? パパのはアイツよりもっとすごいよ?」
「きゃっ! 呼ばないでマコちゃん。見てたのバレちゃった」
興奮気味のマコとイルが近付いて騒ぎ出す。イルはその場にしゃがみ、顔を真っ赤にしながら慌てて手で顔を覆って恥じらいを見せるが、やはり指の間は開かれて、ガン見状態だ。
マコはただ興味津々にしゃがみ込んで見入ってる。
ケインは、子どもには毒だとばかりに手で隠そうとしていたが、隠しきれるはずもなく、早々に諦めしゃがんでいる。というか、一緒になってドキドキしながらなのか、小震いしながら見惚れている。
ママもどうしたものかと思案しながらその場にしゃがみ込む。パパからすれば、幼女含んだ美少女四人の全裸が、無防備、無警戒のすべて丸見え状態で眼前に並んでいる。
究極の興奮状態にあるようだが、さすがに純真無垢な子どもの目に晒すのは、羞恥心も極限みたいで、大胆に行動を起こす。
マコの脇に手を入れて湯船にポイッと放り込む。続けざまにイルも放り込む。
そして今の状況をウヤムヤにすべく、ケインを抱き起こし、抱える。
「ごめん、ケイン」
抱き抱えたまま湯船にザブーン。湯船の中に向き合って座り、パパはケインを抱きしめ密着状態のままキスを始める。
「むぐ、あぁ、ソフィア? このまま進めちゃうね?」
「うん。まぁ、この状況ならそれもありか」
「ごほっ、ごほっ、ごほっ。パパぁ、いきなりなにするのぉ? びっくりして少しお湯飲んじゃったよぉ」
「けぽけぼっ、けぽっ。イルはまだ身構えられたけど、びっくりしました」
「あぁ、済まなかったな?」
「あー、マコちゃもイルちゃもじっくり見過ぎたからよ? そりゃあパパだって恥ずかしいわよ」
続けてママも湯船に入ってくる。
「ケイン、可愛いよ」
そう言ってパパは、ぎゅーっとケインを強く抱き締め、唇を交わす。するとケインは、一度大きくびくんとして、またさっきみたいに小刻みな震えが始まった。あっ、ううん。小刻みなんだけど、さっきよりも力強く震えているように見える。なにか我慢しているのか、片手で口を押さえ、目は固く瞑っている様子に見える。
お風呂でのキスはそんなに気持ちいいのかな?
さっきよりも効果が絶大なのか、ケインの涙目の何か懸命に押し殺しているような表情からも、感じ入り方がスゴいように思える。と、感極まってか、唇は離れ、言葉にならない声が漏れ、溢れ出してきた。
「ん、んん、んんんんっ」
ケインが光り始める。湯船の中も明るく照らされる。
「んんん、んーーーんっ」
その一瞬、光が目映いほどに増長した直後、カッと光り弾ける。すると、光の残滓がはらはらと舞い落ちる。
「「きれーい」」
神秘的な光景にぽーっとするマコとイル。いつの間にか、パパはまたケインと唇を交わしている。ケインの目はぽゃーとして恍惚状態だ。あれっ? ケインの髪が漆黒で瞳も黒い。けれど、髪は神々しく光を帯びている。瞳の奥にも光が灯っている感じだ。
「ケインがマコみたいになっちゃった。これがもしかして「漆黒因子」ってことなの?」
「そうね。どうやら成功したんじゃないかしら? ようこそケイン。あなたもこちら側ね。体の変化に実感はあるかしら?」
「ぁぁ、ありがとうソフィア、ジンさん。生まれ変わったみたい。本当に。ジンさんのこの力、ホントにすごいのね。ソフィアの癒やしも凄まじいと思っていたけど、ジンさんのはまるで神ね」
「お、お母さんじゃなくなったの?」
「イル、何でそんなことを言うの? お母さんよ、もう大丈夫になったのよ」
「あ、あぁ、イルちゃ。お母さんはね、ジンの力が効いて、もう命の危機は去ってしまったの。まだ確認しないとわからないけど、その身体の回復と一緒に眠っていた力も呼び起こされたみたいなの。黒いのはそのせいで、なぜ黒いのかはジンの影響なのだと思うけど、その、魔力? さっきまで不思議な力って言ってた力を上手く使いこなせるようになると、髪の色も戻ると思うわ」
「え? 私の髪、黒いの?」
「うん、マコみたいになっちゃったよ? ついでに瞳の色もね?」
「えー? あぁ、そうか、それでイルはそんな風に言ったのね? 大丈夫よ。お母さんはお母さんよ。心配かけたわね」
「えーん。お母さん、もう大丈夫なのね。よかったぁ。マコちゃん、ソフィー、ジ、ジンさん? 本当にありがとうございました。このご恩決して忘れません。何もかもが、全部皆さんの言ったとおりになりました。マコちゃん、あなたに出会えて本当に良かった。これからも仲良くしてくれますか?」
「イルゥ、なに改まって言ってるの? そんなの当たり前だし、マコたち、もう家族同然って言ってたでしょ? 一緒に暮らしていくんだよ。よろしくね? お姉ちゃん。でも、イルって呼ぶけどね」
「うんうん。ありがとうマコちゃん。大好き」
「マコもイル大好き。ケインも大好き」
「私も大好きよマコちゃん。イルともどもよろしくね。それに、イルを見つけてくれたのもマコちゃんだし、私への癒やしのきっかけもマコちゃんだって聞いたわ? 私にとってあなたはまるで神の子、ううん天使ね。これからもイルをよろしくね?」
「うん。イルはとっても素敵なの。こっちこそイルを産んでくれてありがとうだよ」
「まぁまぁ、そのくらいにして、湯船を楽しみましょう? ソレにしても、このお風呂、最高だね。マコちゃ、イルちゃ、ジン、ありがとうね。毎日のお風呂が楽しみで仕方ないわね。小川から水が引けるといいわね。そしたら24時間いつでもお風呂タイムだもんね。ジン、期待してるわよ? そ、それとケインはそのままで良いから、お口だけ、私にもキスもらえるかしら? 私も今日は力を使いすぎたのか、ちょっとヘトヘトなの」
「わかった、おいでソフィア。んーーーんっ」
「あぁ、いいなぁ。マコもパパとキスがしたいなぁ」
「イ、イルもです。それと、よく考えると、この中で、私だけが魔法を使えない、ということになると思うのですが、私にも力が備わっているのなら、どうすれば使えるようになりますか?」
「刺激が強すぎるからイルちゃんが大人だったらね。あ? 待てよ。子どもで成長過程なら、もしかするとキスだけでも道は開けるんじゃないかな?」
小声で呟くパパ。
「ぷ、ぷはぁ。そ、そうかもしれないわね。じゃあ、ジンとチュッチュしてみる?」
「い、いいんですか?」
「あ、でも、乙女のファーストキッスはとっておいたほうがいいんじゃない?」
「あー、それも考えたんですけれど、こんなすごい人たちを前にしてるので、早々ときめくような男性には巡り会えそうにない気がして。そうすると、ファーストキスも随分先の話になるのかな、って思ったら、いつまでもとっとく必要もないのかなって思い始めたのと、ジンさんはもうお父さんみたいな人だと思っています。お父さんならファーストキスもノーカウントだって聞いたことがあります」
「そ、そうかぁ、そういう考え方もあるにはあるわね。ジン、どうする? チュッチュ、いっとく?」
「何? その、お酒を一本勧めるみたいなノリは。でも、イルちゃんもいいの? こんなおじさんで? イルちゃんもまだ幼いとはいえ、すごく可愛くて魅力的な女の子だから、おじさん、ん? お父さん? も躊躇しちゃうよ。それにお母さんだってそばにいるから、怒られちゃうよ?」
「え? お母さん? イルもジンさん、ううんお父さんとキスしてもいいかな?」
「いいよー。しちゃえしちゃえ。とっても気持ちいいんだから、しなきゃあ損損。あ、でも、イル? ジンさんを知っちゃうと、それこそ他の男の子にはときめかなくなるかもしれないよ? そこは大丈夫?」
「そのときは仕方ないよ。もうジンさんのすごさは知っちゃったもん。キスしてもしなくても、ときめかないものはときめかないよ」
「その覚悟があるなら、言うことは何もないよ。さぁ、してもらっちゃいな?」
「だそうです。ジ、お父さん、キスして?」
「う、わかった。ソフィアもいいんだな?」
「うん。少し気持ちは複雑だけど、家族だと思ってるし、減るものでもないし、どうぞご自由に。ジンばかりいい思いするのがしゃくだけどね。ハーレムで羨ましいわ」
「ソフィア、愛してる。チュッ」
「もう、わかったわよ。私もよ。チュッ。観念するからイルちゃにもしてあげて?」
「わかった。イルちゃんおいで?」
「はい」
「ちょっと確かめたいから、段階的にしてみてもいい?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、まずフレンチキス。チュッって一回だけ。行くよ? チュッ。どう? どんな感じ?」
初めてのキスでドキドキしてるような顔。顔が真っ赤だ。
「あ、ほぁーって、なんかきたような気がします」
「じゃあ、ちょっと長めに。チューーーッ。今度はどう?」
「は? 、あ? ハイハイ、えーっとすごくどきどきしました。えっと、さっきよりもじわじわと気持ちいいものが流れ込んできた気がします」
「うーん。やっぱりフレンチキスじゃあ、キチンと流れないみたいだね。じゃあ、ディープキスいくよ?」
「は、はい。あっ」
ビクビクビク。
イルは慌ててパパを押し退ける。
「ぷばぁ、びびびっくりしました。ちょちょっとま待ってください。怒涛の勢いに一瞬思考停止して逃げちゃいました。まさかこんなにすごい流れとは思わなくて」
「無理なら止めとこうか?」
「いえ、初めての体験でわかってはいたはずなのに、び、びっくりしたのと、なんかドバァーって流れ込んできて、びっくりしすぎただけです。すーはー、すーはー。もう心の準備は大丈夫です。たぶん」
「じゃあ、いくよ?」
「はい」
「んっ」
ふるふるふる、びくん。
イルがうっすらと光を帯びていく。
イルの表情も痛いような、感じ入っているような、複雑に表情が変化していく。
「んんん、んーーーんっ」
そして、突然カッと光る。
「ん、んん、ぷばぁ、ハァハァハァ。すごかったーー、気持ちよかったぁ」
イルも漆黒の髪に変化していた。
「成功ね。良かった?」
「良かったです。でも、呼吸の仕方を忘れたのか、息が苦しくなって止めちゃいました。もう少しだけ良いですか?」
返事も確かめずにかぶりつくようにキスするイル。
「ん、んん、ん」
「ねぇ、ママ? そんなにパパのキスは良いものなの? 楽しみだなぁ。今度はマコの番でしょ?」
「うん? マコちゃはとっくに魔力使えるから必要ないんじゃないの?」
「あぁ、えーと、そうだけど、気持ちいいんでしょ? マコも経験してみたいよぉ。マコはダメなの? マコのほうがイルより先にしたいって言ってたんだよ?」
「わかってるわよ。冗談よ。マコちゃもしてみたいよね? じゃあ、ママともしてみる?」
「いいよ。でも、パパとしたあとでね?」
「うん。わかった」
「ぷはぁ、ハァハァハァ、ごめんなさい、マコちゃん。先にしちゃって。ジンさまはみんなのものなのに、長らく独り占めしちゃったみたい」
「ジ、ジンさま?」
「あ、ああ、ご、ごめんなさい。ジン、さん? えぇと、あまりにも神々しすぎて、そんな、馴れ馴れしくなんて、よ、呼べません。どうか、ジンさまと呼ばせてくださいませ」
顔が上気して、目がハート。恋いする乙女、というより、まるで日本のアイドルの親衛隊みたいだ。大丈夫かな~? イル。
「パパぁ、やっときたきたマコの番。結局一番最後になっちゃったけど、きっと残り物には福がある、的な、何かあると良いなぁ」
「アハハハ、ないな。でも、マコトもいいのか? 大事なファーストキスなんだろ?」
「えぇー、パパとのキスはノーカウントなんですぅ。だから、キスの仕方はパパに教わるんだよーだ。チュッ」
「もぉ、マコトは可愛いなぁ。愛してるよ、マ・コ・ト。チュッ」
「ん、んん、ぷはぁ、マコもだよー。チュッ」
「ん、んん、んんんんっ、ぷ、ぷはぁ。マコトがまだ幼いからかな~? みんなみたいな特別な感じはわかんないや。でも、パパのキスはなんか暖かいエネルギーが流れ込んでくる感じがいいね。また時々キスしてくれる?」
「あぁ、もちろん。毎日だっていいよ」
「やったぁ。いつか、みんなみたいにドキドキが感じられる時が来るかなぁ?」
「あぁ、来るさ、絶対に」
「わーい。楽しみ。いつくるかわからないから、ほんとに毎日キスしてね?」
「りょ」
「アハハハ、パパ、覚えたね。ありがとう、パァパ」
「ママァ、マコもパパと毎日キスすることになったから、ママの前にしてもいい?」
「えー? なんで、マコちゃが先なのよ」
「だって、パパとママのキス、いっつも長いもん」
「あー、それもそうね、いいわよ」
「あのあの、私もそのルーティンに加えてもらってもいいですか? 末席で良いので」
「えぇ? イルちゃもしたいの?」
「あ、あああ、あー、そうですよね。私なんかがおこがましいにもほどがありますよね。出過ぎた真似をして、誠に申し訳ありませんでした」
「あ、いや、そ、そんなことはないわよ、ねー、ジン」
「あ、あぁ、家族同然って言っただろう。イルちゃんが嫌じゃなければ、娘同然と思ってマコトと同じように接していきたいんだ。だからイルちゃんもそんな恐縮しないで、娘として思いっきり甘えていいんだよ」
「ジ、ジンさま。本当によろしいのですか?」
「そのジンさまは何とかならない? ジン、か、うちの中ならパパでもいいよ。それにちょっとこっちにおいで。チュッ。こんなフレンチキスなら、挨拶代わりに何回したっていいんだから、ね?」
「えっと、あ、うん。パパ、わかった。したくなったらするでいい? それにパパもイルって呼んでくれなきゃイヤ!」
「わかった。イル。これからもよろしくな」
「うん。チュッ。チュッ。チュッ」
「マーマ?」
「何? マコち……ムグ……」
「ぷ、ぷはぁ。ママともする約束だったでしょう?」
「そういうことね。じゃあ、ママのキステク教えてあげる、ん」
「ん? んんんんっ? んんんんっんんんんっ? ぷ、ぷはぁ。ママァ、す、すごすぎる、と、とろけそう」
「そうでしょう? パパのキスは力が伝わる。ママは力はないけど技があるのだよ。ふふふ」
「すごい。ママ。ママとも毎日したいなぁ? できれば2回」
「いいよぉ。でも、マコちゃって、パパに似たのかな? まだまだ小さいけど、パパみたいな気持ちいい力みたいなのが伝わってくるね。ママこそマコちゃにキスして欲しいくらいだわ?」
「そ、そうなの? じゃあ、したくなったらいつでもしていいよ? ママ」
「そう? じゃあ、疲れたときはマコちゃからも補充できそうね。助かるわ。マコちゃ」
「ううん、マコもママに癒されたいし、ママのテク覚えたい」
「あのあの、イルもその輪っかの中に入りたい……な?」
「もう、イルちゃ、欲張りねぇ? 好奇心旺盛なのね。いいわよ。チュッ」
「ん? んん? んんんんっ」
「涙目だよ? イル」
「だってぇ、ジ、パパもスゴすぎるけど、ソフィーのは、メロメロに骨抜きにされちゃう。あ? 立てなくなっちゃった。もうソフィアさま、って呼びたいくらい」
「あらら、イルちゃ、あなた崇拝癖があるのかしら?」
「あー、ママのは罪作りキッスだね。男の子キラーかと思ってたけど、女の子にも有効なんだね」
「あのーっ、私だけ蚊帳の外な気がして。混ぜてもらってもいいかしら?」
「あー、もう、みんながみんなキスしたいんだから、したい人に好きなだけすればいいんじゃない? ケイン、ほらこっち。チュッ」
「んんんんっんんんんっ、ぷ、ぷはぁ。ハァハァ。ソフィア、私そっちにも目覚めそうだわ?」
「うーん、ケインには少し毒ね。ケインは週一くらいかしらね」
「えぇ? そ、そんなぁ。私の扱いヒドすぎません?」
「そんなことないわよ、あなたは大人で、普通はありえないくらいに、いいよ、って言ってるわよ? それにすっかり絶好調な気持ちでいるかもしれないけど、近々お亡くなりになってしまいそうな状態から復活したばかりの病み上がりのような状況のところを、むしろ超特別待遇してるでしょ?」
「そ、そうでした。自重します」
「それはそうと、みんな何か忘れてない? お風呂がすごいって駆けつけてきたから、宴がまだだよ」
「あ! お風呂もキスも気持ち良すぎて、健康も命も取り戻せて、ナイスバディに生まれ変わって、感激しすぎて忘れてたわ」
「ホントだ。マコもうっかりだよ。楽しかったね、イル?」
「うん。喜びいっぱいで、私までそっち側にもなれた。今日はいっぱい詰まった記念日です。あれっ? ギャングさん襲撃も今日の話だよね? なんか遠い昔の出来事みたい」
「あー、そうだな。忘れてた。あいつらどうやって懲らしめてやろうかな?」
「さぁ、上がるわよ? マコちゃ、イルちゃ、先に上がって飲み物チェックしてくれる?」
「「ハーイ」」
「3人ともちょっと遅いよぉ」
「あー、パパが今日は頑張りすぎたから腰が痛いっていうから、癒やしを掛けてたの」
「パパ大丈夫?」
「あぁ、もう、大丈夫。ありがとな」
「それよりなんで服着てないのよ。風邪引くわよ」
「だってぇ、寒くないし、みんなお風呂仲間だから、恥ずかしくないし」
「ダメよぉ、パパが目のやり場に困るじゃない。それにまた興奮しちゃったら大変でしょ?」
「あぁ、おっきくなるから?」
「そ、それもあるけど、そうなったら今度はみんなの目のやり場に困るじゃない? それにパパも休ませてあげないと」
「あぁ、それもそうだね」
みんなでパタパタ服を着て、乾杯をする。ケインとイルも、もうすっかり溶け込んで仲良し家族になれている。今日の出来事は盛り沢山で、尽きることなく話は弾む。大人たちはお酒を、マコとイルはお菓子を頬張り、お腹も心も満たされる。話したいことはたくさんあって、どんどん時間は過ぎていく。
夜も更けていくが、だれもかれも、楽しすぎて席を立てずにそのまま寝入る。
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