第14話 幼少のソフィア

 わたしはソフィア。北欧、N国の第3王子、エディに見初められた、漆黒の魔女、アイリとの間に生まれた。

 父と母の出会いや馴れ初めはまだ詳しく教えてくれないからよくはわかってないけれど、母、アイリが、父や、王室とともに祖父母の窮地を救う活躍をしたらしく、父は母を心から愛し求婚するが、魔女である母は、王室内でもそれを認めたがらない勢力もあり、その素性からも相応しくないと辞退する。

 今は祖父母となる国王と王妃、父エディ王子の3人は、やがてはN国のより良い発展に貢献する逸材だと、王室内の反対派を時間をかけて説得、王室内をまとめ上げ、再び求婚する。母アイリは根負けし、その素性や、魔女の里の情報、漆黒の魔女の特徴の諸々を隠蔽することを条件に求婚を受け入れる。


 そう、わたしは王女〔王位継承順位第四位〕であり、そして魔女でもある。

 母は、魔女の特徴などはすべて隠匿したうえでも、人としての個の能力がずば抜けて高く、王室内のさまざまな問題を解決していったため、信頼を高め、王室内での立場も確立していった。また、母はその美しい見目からも、エディ王子との結婚は注目され、国民からの人気もかなり高かった。


 私が生まれると、漆黒の魔女の特徴でもある、黒髪黒眼の状態が続くが、外聞的には虚弱体質との理由により、写真などを含む一切の情報を遮断した状態で育てられる。しかし、普通の子供の300%くらい力を持て余す、元気一杯でお転婆なわたしは、王室内でも隔離された範囲内で駆け回る毎日を過ごしてきた。


 5歳のころ、見える世界に異変が生まれ、母アイリに相談すると、いくつかの魔法の手解きがあり、これを習得するために、部屋に籠もりがちとなった。そう、このときに自分が魔女であることを自覚する。日本アニメをよく見ていた、魔法少女に憧れていたわたしは、嬉しくて楽しくて、懸命に魔法の修練にのめり込んだ。


 6歳のころ、手解きを受けた魔法の習得が終わるころ、再び身体に異変が起こった。突然の眩い光に包まれ始めたかと思ったところで、辺りがカッと強く放った光で見えなくなるほどの眩しい状態になった。この異変に母アイリが気付き、駆け寄って来た。母が嬉しそうに言葉をかける。

「おめでとう、ソフィア。頑張ったわね。とても綺麗よ。でも前にも言ったとおり、この魔法は人前では使ってはダメよ。それに使うと髪の色も戻ってしまうから、それを見られるのもダメよ」

 わたしは、示された鏡の前に行き、全身を見て驚く。

「うわーっ! ママと同じ金髪碧眼だ、わたし可愛い、良かった。可愛い」


 それ以降、わたしは身体が丈夫になったと国中に報道され、写真も公開された。

 これには国中が反応した。


「ソフィア王女、元気になって良かったね。それにしてもなんという美しさ、可愛らしさなの? 思わず見ほれてしまうわ」


「ソフィア王女はまるで天使ね。なんと神々しいのかしら?」


「ソフィア、可愛い。生まれてきてくれてありがとう」


 それはまるで日本のアイドルを思わせる熱狂振りだった。この進んだ報道社会は瞬く間に世界中に飛び火する。世界中でソフィアフィーバーが巻き起こったほどだった。みんなが喜んでくれたのはとても嬉しいしありがたい。でも、ようやく情報隠蔽も解け、外の世界を自由に満喫できる、そう喜んでいた矢先に、異様な熱狂振りから、迂闊には王室外に出られない状況が生まれてしまう。そうして、公務以外では外に出られなくなったわたしは、王室内のオタクとして、日本のアニメたちにのめり込むことになる。


 15歳くらいまで、王室内で力を持て余すわたしは、趣味に没頭しつつも、他にあまりやることがなかった。仕方なく、学習もどんどん進めていき、飛び級で高校卒業し、大学に在籍するが、こちらも単位的にはほとんど終わってしまっていた。


 この頃、わたしは気付いていなかった。北方聖十字教の司教の息子、ケネトがN国王室への接触を図ろうとして王室に姿を現していたことを。そして、誰からか、隠匿されているはずのわたしの幼少期の特徴を知り、魔女の存在に感づいたことを。

 さまざまな謀略を企て、その一端として超能力軍事利用を目論む北の軍事大国:V国調査員の接近を促していたことを。

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