自動筆記実験

ピータン

自動筆記実験 1

 六角は螺旋をつめたまま転がって、青を掴んで飛び上がる。尖った白と空の丸み。対照をなす二つの水色。咲いた花は二重の芳香を放ち、獅子の咆哮は山を舐めて飛ぶ。錬成を嫌う群雀、回転する船の隙間をぬって、構造をやぶって片方の靴を湖の底へ沈める。そこに現れるは三つの線と鋭角なオレンジ三つ。雷の赤、墨滴を破り、拡散する泡のつぶ、遠く宇宙の穴となる。連続は途切れず、波は転回を急にして果てず、六から三、二から九、都市から都市、天から天、文字から窓へ。燃燈は途切れず、牧神の音、血液に咲く叫びをさまして散る。

 これは僭称される王の軛。碌々として千年の人間世をはらい、そびえたつ噴水の楼閣。星に触れようとして堕ちた王子の叫びは聞こえず、地上の蟻は定理に従って焼ける。その悲鳴は煙となって空を覆い銀色の雨は柱を溶かし、言葉のしなりから水を奪い、粘性の楽心の刷り込んで笑う。

 遊侠の徒、歩いて曰く、

「この球面をなで、この直面をたたき、月下に響く土の声。誰が聞くかは蠍の脳に聞くがよい。」

先のもの、答えて曰く

「天よ、天よ。寧のその孫、また孫よ。割れて広がる南天よ。梟の笑い、鼠の血液。哭いて哭いて共振す。」

 金星は落下を拒んで、星座の線を切る。回転はやまず。回転はやまず。巻かれた糸の束はいつしか砦を覆い、山を飲んでは吐き出す。それは胆石に似て硬く、鉄を叩いて音を上げる。洋弓はしなり、角度をもって放たれる矢は億年の後に雲を貫く。雨、やむ。鋏をもつ虫がはいでて歌う。

「暗い暗い太陽よ。雷と雨の申し子よ。亀と木の実を呼んでくれ。風に熱さを加えておくれ。」

 光は丸くねられて汲々とする。三角の連続は再び像をむすんで、大きくて温かい動物は、脈打ちながら横たわる。これが飛翔するのはまだ万年はまたねばならぬ。三つの線が奏でるのは未知の音楽。顔の中に顔があり、その顔の中に顔があり、その顔の中に顔がある。表情は怒っている。もしくは泣いている。歯には見事な彫刻。すなわち、これが天をも突くほどの塔となる。部屋は万をゆうにこえるが、どの部屋にも扉がない。水と匂いはいつでも入り、出ていくには百日をまたねばならぬ。ここに住みたいものは申し出よ。ここにて気の休まるものを鼠と鼠と鼠は探している。犬の牙には見事な緑色の柱が埋め込まれる。人呼んで緑柱石。第七番目の宝石。その輝きを見たものは回転舞踊を弾けさせ、はらわたを研磨して並べる。太陽を反射して照らし、滴の中によすがをみとめ、俗をはなれて恒久のすみかとする。


六角は螺旋をつめたまま転がって、俗をはなれて恒久のすみかとする。

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