第24話 次回デート回!(ドキドキですね)

 メッセージアプリ内で交わされた内容の一部、キミをオトすつもりとの文言を「ややダイエットか」と反応をしたのは申し訳なかった。


 「土曜日に二人で出かけたい」とかなり下手かつ直接的な表現を持ちいらせてしまったので「是非に」と返信した。


 今週は一華の都合もあり恋人dayも友人dayもなかったけれど「キミへのリサーチは怠らないよ、フフッ」と怪しい笑みを浮かべながら言われた。

 「ストーキング行為だけはやめてね」とネコが手招きするみたいなポーズをしながら言ったら、彼女は少々青白くなりつつ「フフ」と笑みをこぼすに留まった。


 ……その痛いところ突かれたみたいな表情は、心外なことを言われたからなんだよね? 有り余る財力を使って私をつぶさに調べたからじゃないよね?


 土曜日に家を空けるのは家族間で問題となるので、かれこれこういう事情でと詳らかにする。

 母に「ついに孫が」と喜ばれたけれども、我が校の規定では妊娠をすれば退学なので、中卒の我が子の出来上がりである。

 学歴を取り返すの才能もないから……いやいや待ってどうして、なぜ一華とお出かけをすると言って孫ができる前提なのかな? マンパワー?


 ここで手を上げたのは最愛の妹のありすちゃん。彼女は神妙な面持ちで言ったのだ。


「デートだったら平時よりも良い服装で赴いた方が良いんじゃないかな?」

「そうね、全身980円でも着こなせてしまうのは良いことだけど、デートで全身980円はちょっと」

「土日の部屋着が割引980円のスウェットじゃいけないかな!?」


 色気の欠片もないのは十二分に認めるけれども、70%ダウンでそのお値段だから品質的には抜群なんだからね!?


「さて、こちらにおわするは二人から回収したお年玉の一部でございます」

「おお、近々戦力外通告を受けそうな諭吉……!」

「ウマ娘の友人サポカみたいになりそうな諭吉さん……!」


 姉妹は揃って万札に頭を垂れるけれども、時給1000円でも10時間働かなきゃ手に入らないお金への敬意故。

 ちょっと母が教育間違えた感ある表情をしているのが気になるけれど。


「怜、これを持ってファッション誌から抜け出たようなイケてる女の子に変身しなさい」

「そ、素材が」

「何のためにファッションがあるのか……それは、10点を60点70点にするためよ。身だしなみというのは万人が平均点を取るための一助なの」

「おお……!」


 一華と並ぶのは難しいかもだけど、イケている人のマネをすれば「そんな風」にはなれようもん。

 お財布に万札をしまうときも「お、おぉ……」と緊張したけれど。


「ありすと二人で行きなさい。お姉ちゃんとしてしっかりするのよ」

「かしこまって候!」


 ビシッと直立して敬礼をしてみせると「それにしても青春ねぇ」とお母さんが過去回想に入りそうだったので、妹ちゃんを連れて部屋から出て行った。


 後日、姉妹でアレが似合うアレが似合わないと言い合いながら買い物を済ませる。

 そして運命の土曜日――「だいじょうぶかなぁ」と不安がる私を母も妹も「だいじょうぶ!」と励ましてくれた。

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