第5話 世界中の人から愛されるなんてマジ無理! (キミなら)
私が世界のためにとか高らかに訴えても、身の程を知れと多数から石を投げられて終わりだけど。
神岸一華がみんなに笑って貰える場所を作りたいって言うなら、叶える力があると思うし、私にも何か出来ることがあるかもしれない。
妹やお母さんからお褒めの言葉を頂く料理スキルであるとか。
陰キャバレが怖くて家庭事情を語ってないし、他のみんなに踏み込んで訊いてないから、誰かがプロ並みのスキルでも不思議じゃない。
神岸グループは職人が1からこしらえましたってくらい完璧だから、私の自慢なんて風の前の塵と同じ可能性も大あり。
「誰かのためと言いながら、高校に入ってからの最初の友人に居心地の悪さを抱かせていたとは……怜、私を殴れ」
「メロスかな!?」
他にもたくさん殴り殴られをするキャラクターいるけど、周知されてる人物を選んだ。
さすがは国語の題材、一華も走れメロスは知識として持ち合わせているご様子。
仮にメロスの状況を再現するならば、私は全裸になっていなければいけないし、一華は処刑寸前になっていなければならない。
……そして周囲には山々のように連なる人々、羞恥プレイの一端かな?
「それに! 頑張っている人を笑う権利なんて私にはないよ! てか、本来誰にも笑う権利なんてないよ! そーいうのは性格が悪い人だから無視しなきゃダメダメだよ!」
スキル発動「前のめり」――ウマ娘では中距離専用スキルだけど、人間が占める世界でだって発動をする。
本来は1ハロン距離を取りたい人材の私が言えた義理ではないけど「遊びはおしまい」「お先に失礼」が発動する可能性もあるけど。
「だがある程度の批判は受け入れなければならないだろう……うん、やはり私を殴れ」
「一回一回の失敗で殴られてたら、私なんて今ごろ宇宙の塵になってるよ!?」
失敗をしない人間なんていない。
神岸グループなら回数は少なくなるかもだけど、人生は選択の連続で一日に笑っちゃうくらいの量を選んでいて、9割方忘れているから失策に気づいていないだけでさ。
「日々挑戦をしているから悩むこともあるし、凹むこともあるし、失敗することだってあるよ……でも、怖いからってなにもしなくなっちゃうのはダメ! どうしてもダメなら私でも……その、隣にいるくらいは出来るからさ!」
失敗を糧にとか言ってもどの失敗を!? ってなっちゃう人間だけど、生憎とこの世界には偉大なる先人には事欠かない。
平和な世界だけど、平和を守るために戦う人は世界中のどこにでもいて、礎になるために命を落とした人もいて、我々は胡座をかいて平和を堪能しててはならない。
まあ、そこまで行くと話が大きくなりすぎてしまうので。
「その、ネガネガが名字でダメダメが名前みたいな変人なんてノーセンキューと言われたら教室の片隅でタンポポになってるからさ……」
「……私のことは名前で呼べと、そう言ったときのことは覚えているか? 怜」
「友達とかほとんどいなかったから覚えているけど……」
グループに所属してから半日、名字+さんづけだった私が名前(呼び捨てまたはちゃん付け)に変化をしたのは一華がそうしろと言ったから
友人っぽいことをしてなかったから、名前呼び変化に嬉しくなったのを覚えている。
友人がいないって状況がピンと来ないのか、ヤケに憐憫の表情を浮かべているけども、当たり前だったから気にしないでと言った。
傷口に自分から塩を塗っていくスタイル。
「私にとって呼称は距離感と同列だ。親しい関係ならばその呼び名で、距離があるならば適当に」
周りの人から王子様扱いをされているメッチャスーパーな人間だから、言葉選びに四苦八苦しているなんて極めてレア。
そういうのを出してこなかったんだと思うし、出そうとすまいと息巻いていたんだと思う
陽キャを演じている自分のようだなんて言えないけど、すごくシンパシー感じちゃう。
「友人だからこうせよ、ただの善意の押し付けだったんだよ……やはり私を殴れ」
「私はその言葉が嬉しかったんだよ! あなたがそう思うのは良い……でもね! 私の気持ちまで否定をしないで!」
名前で呼んでくれと言われたくらいで天に昇るレベルでハッピーとか、幸せの基準が低すぎだろpgrと煽られてもしょうがないけど……。
「私はあなたの”行為”が嬉しかった! はい! この話やめやめ!」
「……キミは、私の”好意”が嬉しかったのか」
山の頂上で空気を吸い込んだ的な表情をしているけど……なぜに?
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