ちょっと未来、かもしれないし――もうこんな事が起き始めているかもしれない。
かつて生まれ育った自分はローカルな小ネタも含めて存分に愉しんだ。
だが、福岡に地縁はない、お立ち寄りの経験もない……という方でも読んでいただけると思う。
およそどんな街も、なにやら独特で臭みがあってときに暴力的なナニカを、その内部に抱えているものだ。
と、私は思う。
人の抱く郷愁はただの記憶ではなくて、ふるさとのそういった独自性と分かちがたく、心に染みついて繋がっているものではなかろうか。
それでも福岡に限らず、「ふるさと」は変わっていく。
街は変わっていく。
そこに無常や違和感を感じつつ、やはりかつて自分の一部であった一面にはこだわってしまうし、切り離すことができない。
そんな心象が精緻に描かれた、美しい一作だと思いました。