ワンコとニャンコの疑似恋愛。

猫野 尻尾

第1話:疑似恋愛。

一話完結です。


今、全国にはこういう関係の男女たくさんいるんだろうな・・・。

ネットで知り合った僕と君。


僕の名前は「ワンコ」独身、社会人。


ネットの向こうの女子は「ニャンコ」


二人ともプロフィール名だから本名は知らない・・・まったくの赤の他人。

つながるはずのない僕たちが、どこでどうやって知り合ったか・・・。


ニャンコちゃんは僕の自転車ブログを見てコメントしてくれた。

何気ないコメント。


「私も同じ自転車に乗ってますぅ」


って・・・そこから彼女のブログをフォローして、時々コメントして

あげたりコメントが来るようになった。


最初は趣味の話がほとんどだったけど、そのうちメッセージをくれる

ようになった。


ニャンコちゃんは北海道に住んでるらしい。


あ〜北海道か、ネットがなきゃ絶対知り合うことなんかない距離だな。


ニャンコちゃんとは以外と同じくらいの熱量に価値観で、ほどよく

いい関係を保ててる気がした。


最初はブログのメッセージだけでやりとりしてた。


でもそれじゃチャット形式じゃないから、リアルな気持ちを共有できない

からって言うんで・・・


とうとう個別でやりとりができるアプリに手を出した。

そこなら対面で直接話せる・・・。


なわけで北海道の女子と田舎の男子の交流がはじまった。


そこなら画像や動画も送れる。

ニャンコちゃんは最初は恥ずかしがったけど、それでも自分の自転車

「ブロ◯プトン(英国車)」と一緒に撮った写真を送ってくれた。


うん、合格・・・可愛いじゃん、ニャンコちゃん。


だからお返しに僕も写真を送り返した。

そしたら「超イケメン、一目惚れっ」て返事が返ってきた。


で、まあ自転車が趣味なんて言うから、僕はてっきりニャンコちゃんは

独身だと思っていた。


でも、話を聞いていくうちに旦那がいることが判明。

お子ちゃまはまだいないってことだった。


旦那が背後に見え隠れすると、ちょっとがっかりするよね。


自己中で優しくない旦那なんだそうだ。

そんなこと愚痴られたって・・・


「旦那、嫌いなの?」


「最初は優しくてよかったんだけど・・・結婚したとたんにカマって

くれなくなった」

「出張だとか出向だとか言って、家に帰って来ないし・・・」


「嫌なら別れたらいいじゃん?」


「そんなに簡単にはいかないの・・・」


「なんで?」


「彼のことまだ好きだから」


「あ〜なら我慢するしかしょうがないな」


「冷たいんだね」


「いやいや、僕は他人だし・・・それ以外に他に言いようがないでしょ」

「慰めてほしいの?」


「そこまでは言わないけど・・・」


「そうだけど・・・私たち、もう他人じゃないと思うけど・・・」


「え?なにそれ・・・他人でしょ?、会ったことも話したこともないんだよ」


「こうして話してるんだし、共有してることもあるでしょ、だからもう

他人じゃないよ?」


「そうなるのかな?」


「あのさ・・・僕を旦那の代わりだと思ってる? 旦那がいなくて寂しい時間を

僕でまかなってる?」


「そんなこと思ってないよ・・・ワンコちゃんと話してると楽しいからだよ・・・

時間も忘れちゃう・・・ 」


「あ、もうこんな時間」


「私、落ちるね」


「うん・・・おやすみ」


「おやすみ〜」


「ほいほいおやすみ、また明日ね〜」


「じゃ〜ね、おやすみ」


「落ちるんじゃなかったの?」


「うん、落ちるけど、おやすみ」


「落ちた?・・・ニャンコちゃん・・・落ちてないよね」


「うん、まだ・・・落ちてない・・・おやすみ〜」


「あのね、何回おやすみって言えば気が済むんだよ」


「分かった 、落ちる」


「よかった・・・落ちたか」


もう旦那の話はいいよ・・・あ〜あ、腹減った。


リアルなデートじゃなくても毎回のネットって以外と疲れるんだよな。


旦那が背後でうろちょろしてる女性となんか繋がるのやめればいいんだけど

もう僕はニャンコちゃんに依存しちゃってるのかな。


別に恋人でもないのに繋がってる僕たち・・・いつのまにか腐れ縁って

やつで、それが日々のルーティーンになっちゃってて別に繋がりを断つ

必要さえなくなってる。


僕は少なからずニャンコちゃんに恋してるんだと思う。

心地よくて淡い恋心。

これがお互い近所にでも住んでたら、めちゃヤバいかもしれない。


おしまい。

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ワンコとニャンコの疑似恋愛。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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