第46話 新たなコラボの依頼
ネルさんとのコラボ以降は、俺は二日ほど特に何か活動をするでもなく、ただただのんびりと過ごしていた。
午前中いっぱい適当に家でゴロゴロした後、タマに山奥に連れてってもらい、山の散策がてら山菜をゲットし、家で調理したり。
翌日も昼過ぎに起きては、タマの新しいおもちゃを買いに大型ショッピングモールをぶらぶらしたりと、ひたすらにプライベートを満喫していた。
これまで仕事ばかりの人生だった(しかも望んでそうしたわけではなく、理不尽にやらされていた)分、せめてこれからの人生は休み休み生きていこうと決めているのだ。
ちなみに急に新しいおもちゃを買うことにした理由は、先日ネルさんが使用して効力を失った究極奥義のオーブでタマが遊んでいたところ、誤って中途半端に力が充填され、「奥義のオーブ」として復活してしまったからだ。
タマ曰く、俺が料理を作っている時暇だったのでオーブをコロコロしていたところ、なんか謎の現象が起きてこうなってしまったのだとか。
まあオーブの充填自体は(結果論としては)良いことなのだが、そんなものをおもちゃにするくらい既存のおもちゃに飽きてるなら、なんか追加で用意してあげた方がいいんじゃないかと思い、俺は新品の調達に出かけることにしたってわけだ。
ショッピングモールから帰ってきてからは、ベッドで横になって適当にスマホをいじっていた。
まずはトゥイッターの確認っと。
お……今朝投稿した「なんか使用後のオーブに力が入って『奥義のオーブ』になったみたいです」のトゥイートに早速リプライや引リツがたくさんついてるな。
@Tama_Sodachisugi ……??? どゆこと⁉
@Tama_Sodachisugi オーブの充填なんか聞いたことなくて草
@Tama_Sodachisugi 「なんか」てのが怖すぎる 無意識に因果律変えちゃったのか?
@Tama_Sodachisugi 世界中の高ランク探索者や研究者が躍起になってもできなかったことを易々とww
@Tama_Sodachisugi Oh, Jesus…
へえ、オーブの充填、今まで誰も出来たこと無いのか。
ダンジョン破壊とか、今までもタマが世界初の偉業を成し遂げたことはあったが、ついにそれを「遊んでたら偶然」やるようになってしまったか……。
「タマ、あのオーブを充填できちゃったこと、みんなに伝えたらすっごい驚いてくれてるぞ。良かったなあ」
「ごろにゃあ〜」
トゥイッターの画面を見せつつタマの頭を撫でると、タマは尻尾をピンと立てながら甘い声で鳴いた。
……そうだ。みんなの反応といえば……この間ネルさんが「このチャンネルのスレが立っている」って教えてくれたんだっけか。
掲示板のスレといえば通常ならアンチコメとかが怖くて見に行けたもんじゃないが、ネルさん曰く「タマちゃんが書き込み制限かけてるからか驚くほどアンチが皆無」とのことでもあったのでちょっと覗いてみよう。
少し探すと、「ネッコが異次元すぎるスレ」なるものが見つかった。
開いてみると……そこはタマの一挙手一投足への興奮冷めやらぬ感想が立ち並ぶ、活気のあるスレとなっていた。
「ニャの秘宝」然り「世界征服」の完コピ然り、みんな凄い盛り上がりようだな。
見てるこっちがニヤけてしまいそうだ。
おっと……そういえば完全に記憶の彼方に行ってたが、確かにあったな、空間の歪みを伴う黒い鞭による雑魚的処理。
っておい。あれ、元Sランク探索者が使う高等技術だっただと⁉︎
「闇宮家……家伝魔法術、か……。タマ、こんなのどこで覚えたんだ?」
「にゃ(テツヤがスマホを使ってない時にこっそりゲラゲラ動画見て学んでたにゃ)」
……そんなことしてたのか。
「その動画って?」
「にゃ(これにゃ)」
聞くと、タマが鳴いた直後、スマホの画面が切り替わり、ゲラゲラ動画の画面に切り替わった。
そして、「【闇宮家の秘技】打震と鞭打は俺には効かないと思う」というタイトルの動画が流れ始める。
動画の内容は、闇宮ヒロ先生のパンチを空手の世界チャンピオンが受けてみるというものだった。
流れとしては、「空手家が『そんな武術怪しいやんけ』と食ってかかり、その上で技を試しに受けてみる」という感じ。
ただ、雰囲気的にガチの喧嘩というわけではなく、あくまでエンタメとしてそういう演出にしているだけのようだった。
『じゃ、行きますね。とりあえずまずは1割以下で』
『あがっ……が゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! あかん、これアカンって!!』
防弾チョッキを着た上に特注製のミットを構え、一割以下の力で撃ってもらったにもかかわらず、打撃を受けた空手家は悶絶してのたうち回っていた。
すかさず上級治癒ポーションをグビグビ飲む世界チャンピオン。
概要欄を見る限り、この空手家はインストラクターとの兼業でBランク探索者もやっているようだ。
そして闇宮先生の方はといえばもうおばあちゃんで、どう見ても全盛期よりは衰えているとしか見えないご様子。
それでいて、この実力差……まさに次元の違う強さだな。
タマ、こんなエグいものを俺の知らない間に学習してたのか……。
――などと思っていたその時。
スマホがピコンと鳴り、メールアプリの通知が入った。
確認してみると……なんと偶然にも、メールは闇宮ヒロ先生からのものだった。
……え、急に何の用?
勝手に技を使われて怒ってたり……しないよな?
おそるおそる、震える指でメールを開いてみる。
そこには、こんな内容が書かれてあった。
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