第14話 はじめてのコラボ配信①
次の日の朝。
起床して顔を洗い、朝食のパンとコーヒーの準備をしていると……突如として、稲光と共に落雷音が鳴り響いた。
「うわっ!」
あまりに唐突な轟音に、思わず俺は心臓がキュッとなった。
おいおい、今日は快晴だってのに……いったいなんで雷が落ちるんだ。
てか普通、雷って光ってしばらく経ってから音が鳴り響くよな。
そのタイムラグがほとんど無かったってことは……雷が落ちた場所、結構近いのか?
とりあえずブレーカーを見に行き、問題ないことを確認する。
そうしていると、今度はインターホンが鳴った。
「はい、どなたでしょうか」
「お久しぶりです、本日コラボの約束をしていた旋律のネルです」
出てみると……相手はまさかのネルさんだった。
……いやいやいや、なんでここが分かったんだよ。
そもそもどこで何時に会うかすら、これからDMしようと思っていたところだったのに。
ピンポイントで俺の家を当てるなんて……いったいどこから情報を仕入れたんだ。
てか、いきなり家に来られても困るんだが。
「あの、申し訳ないんですが、僕まだ朝食中なのでもうちょっと待ってもらえますか?」
「それは大丈夫ですけど……ダンジョンに行く前に一旦話したいこととかもありますし、とりあえず家に入れていただけるとありがたいのですが」
今は都合が悪いことを伝えたつもりが、逆に家に入れるよう頼まれてしまった。
うーん、どうしたものか……。
「にゃ」
「ありがとうございます!」
対応に悩んでいた俺だったが……その時、タマが一声鳴いたかと思いきや、次の瞬間にはドアががちゃりと開いてしまった。
おいタマ、お前念力でドア操作したな?
なに勝手なことをしてくれる。
てか、主人を差し置いて客人にのみテレパシーを飛ばすんじゃない。
「お邪魔しまーす!」
タマの独断でネルさんが上がり込んできてしまったため、俺はネルさんを迎え入れる以外の選択肢を失ってしまった。
仕方がないので、俺はパンを食べながらネルさんと話すことにした。
◇
「あの……いったいどうやってここを知ったんですか?」
まず俺は、今一番気になっていることを尋ねてみた。
俺の家の住所なんてどうやっても入手のしようがないはずなのに、なぜネルさんはここにたどり着けたのか。
「それはですね……こんな方法を使って申し訳ないんですが、昨日トゥイッターに探索者登録試験の採点結果の写真をアップされてたじゃないですか。その写真に映り込んだ背景から、まずざっくりとさいたま市の東側に住んでるなってところまで特定しました」
「お、おう……」
なかなか衝撃的な発言が飛び出てきた。
おいおい、そんな特定厨か探偵しかやらないような真似してたのか。
しかし、それでは俺の居場所は「さいたま市東部」までしか分からないはずだが。
「そこから先はどうやって?」
「そこまで来れば、あとは適当にさいたま市の上空を飛び回ってタマちゃんの気配を探りました。一回間近で見てますし、タマちゃんの気配は分かりやすいので、ある程度近くまで来ればすぐ分かりましたね」
「えぇ……」
そしてまさかの人海戦術だったことに、俺は二度目の衝撃を受けた。
今朝の時間だけでさいたま市中を探し回ったというのか。
てかタマの気配、そんなに分かりやすいんだな。
生憎俺は気配察知スキルなど持ち合わせない一般人なので、そう言われても何のことかピンと来ないのだが。
って……上空を「飛び回った」⁉
「え、あの……ネルさんって空を飛べるんですか?」
特定方法が衝撃的すぎて一瞬スルーしそうになったが、実はどさくさに紛れてとんでもない情報が混じっていたことに気づき、気づいた時にはもうそんな質問が口をついて出てしまっていた。
タマはドラゴンなので(猫だが)空を飛べるのも納得できなくはないが、生身の人間にもそんなことが可能なのか。
「はい。『雷神飛翔』という固有スキルがありまして……ギターのネックを持って、ボディを帯電させてから行きたい方向に向ければ空を飛べるんです」
「へ、へぇ……」
帯電させて空を飛ぶって、トールハンマーかよ。
てか、さっき落雷だと思ったのはネルさんの着地によるものだったんだな。
そりゃ快晴だろうが落ちるし、稲妻と音のタイムラグも皆無なわけだ。
「帯電ですか……面白いスキルをお持ちなんですね」
「そりゃあ帯電しますよ。エレキギターですもん」
いや、エレキギターのエレキってそういう意味では無いだろ。
なんて心の中でツッコミを入れていると……ネルさんは突如我に返ったかのように、ハッとした表情でこう言いだした。
「というか、申し遅れました。私、
何かと思えば、改めて自己紹介か。
「改めまして、
「へえ、名字からして愛猫神感が半端ないですね!」
愛猫神……?
「すみません、変な冗談言っちゃって……。そんなことより、今日は一個お渡ししたいものがあるんです。これ……お礼とお詫びの印に受け取ってください!」
俺が謎コメントに気を取られている間に、ネルさんはそう続け、どこからともなく箱を一つ取り出した。
え……今どこからその箱出てきた⁉
「すみません、今どこからそれを?」
「ああ、これは異次元空間に物を出し入れする『魔法収納』というスキルです。便利なスキルなんで、スキルポイントが溜まったら早めに取ることをおすすめします」
なるほど、それもスキルだったか。
確かに便利そうだな。
「開けてみていただいていいですか?」
「え、ああ、はい……」
ネルさんの方から開封を促され、俺は箱のテープをはずして中身を取り出した。
そこに入っていたのは、少しだけ見覚えのある電子機器だった。
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