第5話 服里くん


『では、今年も楽しい学園生活を送っていきましょう。以上で生徒会長の話を終わります。』



月木先輩の話も終わり、わたし達は教室に戻ってきた。


同じクラスの女子は月木先輩の話で盛り上がっていた。


まぁ、こうなることは予想はしてたよ…


「はぁ…琇兄のどこがいいんだか…」


「あはは…大変だね…」


隣に座っている美零が呟く。どうやら、私たちが見ている月木先輩と妹から見た


月木先輩は違うようだ。



少し経ってから、先生がガラッと教室の前のドアを開けて教壇へとたった。


「みんな、一回静かにしてくれ。転校生を紹介する。」


その一言でみんなが口を紡ぐ。


「入ってくれ。」


先生がドアに向かって声をかけると、廊下から入って来たのは


「初めまして、服里 柊來(ふくざと ひいら)です。」


朝、ハンカチを拾ってあげた。真面目そうな男の子だった。


朝の人だ…服里くんっていうんだ…と呑気に考えていたのも束の間


次の瞬間には


「きゃーー!かっこいい!」


「服里くんっていうのね、よろしく!!」


「柊來くんって呼んでもいいかしら?!!!」


………


服里くんはクラスの女子に囲まれていた。


「あちゃちゃ…」


「服里くん…転入早々、災難だね…」


私と美零とあと数人を除いて…


「はぁ、なんか…同じクラスの女子として不甲斐ないんだけど」


「なんか、私も居た堪れなくなってきた…」


美零は後ろを向いて、もう一人の女子に話しかける。


「瑠空もそう思うよねぇ〜。」


「…うん。なんかもう考えるとあれだから。私は無になろうと思う…」


「そうだね、私もそうしようかな…」


瑠空はいつも、ノリがいい。美零とはアニメの話で盛り上がっていて、いつもし


っかりしているからこういう時もしっかりしている。


心の内を話せる良き友達だ。


「いつ、服里くんは女子の輪から抜け出せ__」



「一花さん!」


「へ?!」


美零と瑠空に話しかけようとしたら、急に名前を呼ばれた。


いつの間にか、周りのキャーキャー言っていた女子の声が聞こえなくなっている


急に前から名前を呼ばれたから振り返ると、目の前には女子の輪から抜け出した


であろう服里くんが立って居た。


「一花さんも同じクラスだったんですね!今朝はありがとうございました。」


渚達とは違って制服を綺麗に着こなしている服里くんと目が合う。


そして朝とは変わらない爽やかな笑みを浮かべる。


相変わらず、綺麗な髪だな…と思う。


そう言えば………渚の髪の毛も確か、グレーっぽくて綺麗な髪をしている。


朝、服里くんを見て思い出したのは…渚に似てたからなのか…



「あ、いえ。別にそんな、とんでもないです。」


教壇からの女子の視線が痛い…まるで、なんで服里くんと仲がいいの?


服里くんとはどういう関係なの???


みたいな目をしてる…


こりゃあ、次の休み時間…質問攻めにされる奴…美零と瑠空を連れて逃げようか




「では、服里くんの席は柊の後ろだ。みんな、仲良くするように。」


「「「はーい」」」


先生がみんなの騒ぎを終わらせるように口を開いた。



後ろに服里くんかぁ〜…多分服里くんは女子に囲まれる。


他クラスからも…いや、他学年からもイケメンが転校してきた。という噂を聞いて


たくさんの女子が来るだろう…



目立つのは勘弁だ…やっぱり美零と瑠空を連れて逃げよう…



私は、そう心に決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る