目玉
@yoru_4649
短編なんで1話もクソもないです
僕は比較的普通な人生を送ってたと思う、小中高で特に問題も起こさず、テストの点も平均よりちょっと上くらい、クラスでも話しかけられれば誰でも話せてた....はず。ただ、友達と呼べる人は一人しかいなかった。
でもそれも、もう前のはなし、あの時、高校2年の冬から、僕の人生は一転した。
始まりは11月終わりの頃だったはず、僕は東北の方に住んでたから、雪が多く、冬になるとみんながスキーやらスノボなんかこぞってを楽しむ。僕もそのひとりだった。毎年のように友達と行っていて、その年も友達にスキーに誘われて自然な流れで誘いに乗っていた。毎年、それが当たり前だったから、断るなんて発想はなかった。
当日、その日はとても寒かった。
スキー場に着いてすぐ、ちょっと体の調子が悪いことに気がついた。今思えば、もしかしたら風邪をひいていたのかもしれないし、はたまたほかに原因があったのかもしれない、どうせまた来年もスキーをしに来るのだから、その日は休めばよかったと思う。しかしその時の自分にそんな考えはなかった。スキーをし始めて1時間くらいだった頃だと思う。滑ってる途中、体フラッとした、前に倒れた。顔が雪に埋もれて、起き上がってすぐ、目に激痛が走り、ゴロゴロとした感覚に襲われた、ゴロゴロとした感覚を取りたくて何回か瞬きをして、次に気になったのは視界だった。目が見えないわけではないが、霧がかかったようだった、なんにせよそこは、自分にとって知らない世界に感じられて、とても怖かった。目の異変に気づいてすぐ、友人が走ってきた。
「どうしたんだ……それ」“どうしたんだ”、視界がおかしく、パニックになっていた僕はその言葉の意味を考えることが出来なかった。「その目、どうしたんだよ!」その言葉で僕の目は外から見てもおかしいことに気がついた。友人が鏡を取り出し、僕の目を見せてくれた、僕の目は、真っ白くなっていた。それはもう、日にあてられた雪のように白く眩しかった、ある人が見れば神秘的だと思うかもしれないが、僕には、それが恐ろしく異様で気持ち悪いものに見えて仕方がなかった。そのあとの記憶はない、後から友人から聞いた話によると、それから数時間、僕はショックで気を失っていたようだ。
目が覚めて始めに見えたものは青い空ではなくどことなく見覚えがある天井だった、不思議に思った僕は、起き上がり周りを見渡しているとここが病院だということが分かった。周りには妹と母さん、友人の三人が座っていた。僕が起きたことに一番最初に気が付いたのは妹だった、「ね、お母さん!起きた!」その声に反応した友人と母さんがこちらを向いて「よかった……」とほっとしたような声をもらした。話を聞くに友人が僕を病院にまで連れてきたようだ。そのとき、ふと思い出してしまった、思い出さなければよかった、そう思ってももう遅い、僕は三人に目が見えないように下を向き目を隠した、目を何度も掻いた何度も何度も、いっそのこと取れてしまえばいいと思った、見られるのが怖かった。見られて、何を言われるかわからない。「お願い!みないで!」叫ぶように言った。何度も、見ないでほしい、そう心から思った。気づけば目から涙があふれていた。この目から涙がでた、それすら気持ち悪かった。みないで、みないでみないでみないでみないで「みないで……!」そう言った瞬間、母さんが抱きしめてきた、「つらいね、大丈夫、ここにいる人は、誰もあなたのことをおかしいなんて思わないから」その言葉につられてさっき以上に涙があふれてきた。その後数分泣いた、大泣きした。さっきまで怖かったみんなの視線が、温かいものに感じて、いつのまにか自分の目に対する嫌悪感はなくなっていた。
落ち着いて少し経ってから、お医者さんに診断してもらった、医者は「初めて見る症状で、詳しいことは何とも言えないが、転んだときに目に入った、雪の中の細菌が原因だろう」ということだがスキーをしてて転んだことだって何回もあるし、雪に顔を突っ込んでしまったことだって何度もある、だけど今までそんなことなかった、初めて見るっていうし、こいつ、やぶ医者か?と思い、ほかにもいくつか病院を回ったがどこも同じ返答が返ってきた。僕は原因こそわかるものの名前も直し方もわからない病気に罹ってしまったようだ。
家に帰るとき、お父さんに見られてなんて言われるのか不安だったが、お父さんも心配こそするものの、忌むことはなく、心配は杞憂に終わった。
幸い今は冬休み中だったため、僕はあまり外に出ないで暮らしていた。もう自分の目に対する嫌悪感はないが、人に見られるのはまだ抵抗がある。家族もそれを察してくれたのか、あまり外に出る用事には誘われなかった、冬休みも終わりに近づいて、残り一週間を切ったころ、一緒にスキーに行った友達がうちに色の濃いサングラスを持ってきた「人に見られるの嫌なら、それつけて学校行ったらいんじゃない?」と言ってきたがそれを先生が許してくれるだろうか…そう思っていると「先生には俺が説明しとくしさ!」一瞬僕はそいつがエスパーに見えてしまった、なにはともあれ確かに心配はしてたことだし、ここまで自分のことを考えてくれてる友人がいることが本気でうれしかった。「ありがとう」と言うと彼は少し照れくさそうに「うん」といった。
冬休みが終わり、学校が始まった。僕は友人にもらったサングラスをかけて家を出た、学校につくといろんな生徒が不思議そうな目でこちらを見ていたが、気にしないようにして玄関に向かった。玄関に入って、友人に会った、彼はこちらを見て、勇気づけるように「大丈夫、似合ってるよ」と声をかけてくれた。その言葉のおかげで、クラスの人にどう思われるか心配だったが怯えながらも教室に入ることができた。教室に入るとクラスのみんなが異様なものを見る様な目でこちらを見ていた。戸惑う俺をかばうように友人が「こいつちょっと目を怪我しちゃってさ、隠したいんだ、協力してくれ」そう言うとクラスのみんなはこっちを見るのをやめて友達とのおしゃべりや遊びに戻った、僕がホットしたのをみて友人は自分の席に歩いて行った、我ながらいい友達をもったと思う。心配していたが何とかなりそうだと、そう思った。
二時間目後の休み時間僕はトイレに向かった。トイレはたくさんの男子のたまり場になっている、こいつらは毎時間のようにトイレにきて、用も足さず帰っていく。その男子たちを避けるように便器の前に立つと一人の生徒が話しかけてきた「そのサングラスさ、中どうなってんの?みせてよ笑」もちろん僕は断り、用を足した。トイレを出ようとしたとき、また同じ奴が言ってきた「お願い、ちょっとだけ、ほんとに、一生のお願い!」最初は断ったが、同じように何回も頼み込んできて正直うざかった。しびれを切らした僕はサングラスを外してしまった。「えっキモwやばキモwwみんな見てこれやばい!w」その瞬間トイレの中にいたみんながこっちを見て盛り上がった、僕はとっさにサングラスをかけようとしたが手をつかまれてかけられなかった。そいつらは「キモッw」「やばいやばいww」と盛り上がっていた。僕は今すぐそこを逃げ出したかったが手をつかまれたままだと逃げられず、次の授業が始まるまで待つしかなかった。
次の授業の時間、僕は気が気でなかった、心臓がバクバクした、呼吸が荒くなった、これからどうなるんだろう、そんなことばかり考えて授業なんかまともに受けられなかった。だが意外なことにそこから一時間、二時間と経ってもなにも起きなかった。帰りの時間になり、サングラスをかけたまま、僕は家に帰った。
次の日僕は学校に行くのが怖かったが、あの後何もなかったし大丈夫、と自分に言い聞かせ、学校に行った。その日、ぼくのあだ名はメデューサになっていた。僕がふと誰かに視線を向けると「やだー!こっちみないでーww石にされる~ww」と言われる。それでも、いわれるのはあの時いた人で、かばってくれる女子もいた、大丈夫、まだ大丈夫そう思って、我慢して、一日過ごした。こんなのが次の日、そのまた次の日と続いた、僕がこうなってから四日たったある日の昼休み、ある女の子がクラスで急に大声で「もうやめなよ!」と言った。そこから口論が始まった、僕のせいで喧嘩が始まるのが耐えられなくて、思わず耳をふさいでしまう、でもたかが手で耳をふさいだ程度、喧嘩の声はずっと耳に入っていた、喧嘩が始まって数分、喧嘩を見ていた中の喧嘩してる女子と仲の良い子たち数人が言い出した「なんであの子がかばってけんかしてるのにあいつは耳をふさいでるわけ?」耳が痛かった、それにつられてまわりの人たちも「確かにそうだよな、あいつが自分からやめてって言うならまだしも」「あの子かわいそう」「メデューサやばぁw」周りの声と、喧嘩の声が頭にガンガン響く。やめて…やめてよ…だれか、助けて……うるさい…。その時、昼休み終わりのチャイムが鳴った。「あ~あ、メデューサのせいで昼休みつぶれたわ~」「それな~」いやな声が聞こえる、結局その時喧嘩は終わったが、その時から女子から向けられる視線も、痛くなっていた。
壮絶な一週間を終え、土日を迎えた、これで少しは解放される、そう思うと気が楽だった土曜日の夜、友人からRINEがきた、その内容はひどいものだった『ごめん、俺、お前を助けられなかった。俺、友達失格だわもう俺に、お前と話す権利なんてないよな。ごめんよ』意味が分からなかった。なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
俺はこの地獄の中、ただ一人の友達を、失った
日曜日は生きた心地がしなかった、次の日が学校なことが何よりも苦痛だった、多分顔が真っ青で、家族にも心配されたけど、こんなこと言えるわけがなく、無理に笑って、その場をごまかした。
嫌でも時間は経つもので、月曜日が来てしまった、重い足を無理やり動かして、なんで行くのかもわからない学校に向かった、もうこのクラス、いや、もう別のクラスにまで噂はひろまっている、この学年に居場所なんかなかった。今日も気持ち悪くなりながらクラスに向かった、道中先生に会った、無理に笑顔を作って挨拶をした、先生の元気な「はい!おはよう!」という声を聴きながら、あいつはこのクラスがどうなってるのか、なんて知りもしないんだろうなと思った。なぜならあいつらは、先生の前では悪口一つ言わない。クラスに入るとクラスの中心の男子三人組が待ち構えていた、「なに」僕がそういうとあいつはサングラスをとってきた、あまりにも一瞬の出来事で、僕は茫然としていた、だがある女子の「きゃー!」という叫び声で僕はふと我に返った。「なんで、サングラス、ない、やだ、みるな!やめろ!やめてくれ……」僕がそういってうずくまるとクラスはまた騒ぎ出した「ほんっとうに気持ちが悪い…」「こわいよ!ねぇ怖い!」という女子の声「やめてあげなよ~」という男子の声。また、頭の中で反響する、みんなの声が、気持ち悪くて、吐き気がして、教室から逃げ出した、「あいつにげたw」なんて声が後ろから聞こえる、いやだ、急いでトイレに駆け込んで、気づけば吐いていた。数分、そこでうずくまっていたら、チャイムが聞こえた。僕は荒い息を必死に戻しながら、鉛のように重くなった足を精一杯持ち上げて教室に戻った。朝のホームルームに遅れてやってきた僕に先生は何ともないような顔で「今までどこにいたんだ、早く席につけ」といった、なんで自分ばっかり、と思った。泣きそうなのを、今にも怒鳴りたいのを抑えつけて、ホームルームを終えた。今日は僕はクラスから出ることはなかった、逃げ出したいのはやまやまだけど、サングラスがない今、いろんな人に見られて、正気でいられる自身がなかった。クラスで話す友達ももういないから、休み時間はずっと寝たふりで過ごしていた。たまに、いや、よく頭に消しカスやらシャー芯やらを落とされていたけど、ここで反応してしまったらもっとひどいこと言われる気がして、起き上がれなかった。やっと長い一日が終わり帰ろうとしたとき、自分のコートがないことに気が付いた周りを見渡すと僕のコートをまるめて、キャッチボールをする奴らがいた。もう僕には、ここでやめて、なんて言い出す勇気はなかった。黙ってキャッチボールが終わるのを待っていたら、その様子に気が付いたのか僕のコートをゴミ箱に投げ入れてにやにや笑いながら帰っていった。正直頭がおかしいと思った。でも、ここで起こったことを誰かに言う勇気なんて、僕にはない。ゴミ箱の中のコートをしぶしぶ取り出してついたごみをほろい、着ようとしたとき、袖やフードが切り取られてることが分かった。肩や首の部分が切り取られたそれを僕は持ち帰りたくなかった、もし家族に見られたら、ものすごく心配をさせてしまうかもしれない、自分でやったと言ったらものすごく怒られるかもしれない、どっちにしろそれは持っていけなかった。その日の夜、風呂に入ってるとき、僕は鏡が見れなかった、最初は大丈夫だったこの目も、もう今や僕の人生を豹変させた、気持ち悪くて恐ろしい、忌むべきものとしか思えなかった。風呂場で鏡を見るたびに、発狂しそうになった、助けて、助けて、助けて、助けて、苦しい、つらい、しんどい、苦しい、つらい。明日、学校に行きたくない。
その時、僕の頭に今まで存在しなかった考えすらもしなかったに文字が浮かんだ“自殺”それですべてか解決するそう思うと今までのことが嘘みたいで、一瞬自分に女神が舞い降りたような、とてもすがすがしくて、身軽で、そんな気持ちになった。
次の日からどうやって自殺しようかを考えるようになった、学校で悪口を言われても、寝たふりをしてる時に落とされるものが消しカス→教科書→ペンとエスカレートしていっても、自殺をすればこれが終わる。そう考えたらなんでも耐えられた。自殺場所は学校にした、家でもよかったが、家族に迷惑はかけたくなかったから、調理室にある包丁でこの忌々しき目と一緒に自殺しよう。そう考えた。
そう思ってからはすぐだった、次の日朝一で学校に向かい、ちょっとした嫌がらせ程度に、『お前らのせいだ、呪ってやる』という紙に友人以外の全員の名前を書いた。あとは包丁で自分を刺すだけ、急に怖くなってきた心臓がバクバクする、手が震えてる、でも、それでも明日、明後日、一週間後、一か月後、一年後、あいつらにやられるよりはましだ。そう、それよりはましなんだ。そう自分に言い聞かせて自分の目にその包丁を刺した「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」想像を絶する痛みが襲う、今の叫び声で、周りにいた人たちが集まってくる、そいつらも人が自殺してるところを見て叫んでいる、先生たちが止めに来る前に死んじゃおう、もう片方の目にも包丁をさした「あああああああああああああああああああ……はぁ…はぁ」死ぬのってこんな痛いのか、甘かった、目を刺すだけじゃすぐ死ねない、どうしよう、どうしよう、いたいいたいいたいいたいいたい早く、早く死ななきゃ、もう痛いのは嫌だ、どこかで喉元を刺せばすぐ死ねると聞いたことがある、早く、早く死ななきゃ、いたい、「ああああああああああああああああああぁ」いたい、これで死ねる?はやく、はやくいたいいたいいたい
……もう、痛くない、死ねた?のかな、あれ、おかしいな、学校に…いる、っていうかさっきまでと同じ場所、あれ、死ねてない?なんで、おかしい、なんで………したを見ると自分の死体があった。よかった、死ねてる、でも天国とか地獄じゃないのか、なんか、さわがしい。「みんな!来ないで!みちゃだめ!」「きゃあああああああああああああ」「人が死んでる!!!」「気持ち悪い」「救急車はやく!」「手が空いてない!お前がやれ!!」「誰でもいいからはやく!!」「俺初めて死体みた!」「馬鹿なこと言うな」「俺はちがう!俺のせいじゃない」「違うでしょ!これはみんなのせいなのよ!」「ふざけんな!俺は何もわるくない!」「そうだ!あいつが勝手に死んだんだ!」
そういえば体って、死んだあとどうなるんだろう。ふとそう思った俺は、人や壁、ドアをすり抜けて、“あのトイレ”の、鏡の前に立った「は…はは…ははは…」その姿を見た俺は、笑うしかなかった、こんなのふざけてる、神様のいたずらか?「なんで、あんなに憎んで、忌んで、あんなに嫌った”目玉“になってるんだろうな」そう、皮肉なことに、俺の姿は目玉になっていた。
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