口無し

桶星 榮美OKEHOSIーEMI

第1話巻き込み男

ヤバいだろぉマズイだろぉ

とにかく走れ俺

女達に捕まったら面倒だぞ!

死ぬ気で走れ!


「待てー!ショウター!」


待てって言われて待つかよ

昭和のドラマかよ


「あれ、ショウタ何してるんだ」

「おぉリクトいいとこで会った。走れ」


「はぁ?何で」

「いいから走れ」


こいつ本当、ガキの頃からトロイんだよなぁ


「なぁ、あの人お前の名前呼んでない?」

「そうだよ、俺を追いかけてんだよ」


言わなくても解れよ


「あれって彼女じゃないの?」

「そうだよマイナだよ

 いいから、もっと速く走れよ」


「でも、あと三人も走って来てるよ」

「そうだよ、だからマズイんだよ

 俺は今、人生最大のピンチなんだよ」


このままじゃ捕まる


「リクト、右に曲がるぞ」

「えっ⁈何で?」


「捕まったら殺されるんだよ」

「あぁ、そうなんだ」


あぁそうなんだって何を悠長に言ってんだよ

どっか隠れる所は・・・

この店でいいや


「ここ入るぞ」

「行き付けの店なの?」


そんな訳あるかよ

行き付けに行ったら見つかるだろうが


「早く入れよ」

「うっうん」


「いらっしゃいませ~」


「ここ何屋だ?」

「さぁ、なんか年寄りが多いね」


「あら~貴方達、初めてのご来店ねぇ~」


「えぇ、初めてです」


何だぁこの店は

昼間っからジジババがカラオケしてるよ


「ここに座ってねぇ~

 カラオケ喫茶は初めてなのを~」


何だ、カラオケ喫茶って?


「えぇ、俺は初めてですけど

 リクトは行った事ある?」

「いや、無い」


「あらぁ~そうなの~

 じゃぁシステムを説明するわねぇ~

 料金は1000円で~

 アルコールなら一杯

 ソフトバンクなら二杯付いて~

 カラオケは歌い放題よ~ん

 ドリンクの追加は別料金ねぇ~」


「だってさ」

「へぇ、そうなんだ」


このオバさん、いやバアさんだな

変な熊の書いてあるエプロン着けて

趣味悪すぎだろっ

それに令和だって言うのに

真っ青なアイシャドーと

真っ赤な口紅って無い無い無い


「お飲み物はどうする~」


「あぁ、俺はビールください」

「僕はアイスコーヒーお願いします」


「は~い、了解で~す」


「なんか年寄りしか居ないよな」

「そうだね」


さっきから皆ジロジロ見てるよな

なんで俺達を見てんだよ⁈

 

「お待たせしました~

 ビールとアイスコーヒーね~

 このお菓子はセットで~す

 ゆっくりしていってね~」


なんで厚化粧オバさんは

一々語尾を~って伸ばすんだよ?

 

「おい兄ちゃん達」


なんだ?隣りのジイさん


「はい、何ですか?」


「ほら、デンモクだよ歌入れな」


「えっ?」

「歌うの?」


「何言ってんだよ

 ここはカラオケを歌う所だぞ」


「はぁ」

「なるほど」


「しょうがねぇなぁ教えてやるか」


こんどは別のジイさんだよ

頼んでねぇし聞いてねぇし


「いいかぁ兄ちゃん達

 まず一曲歌うだろ

 そんで歌い終わったら次の曲を入れんだよ

 んで他の人が歌い終わったら拍手する

 わかったかい?」


いやー何だそのルールは

一々拍手なんてすんのかよ


「リクト歌えよ」

「えっ⁈あぁうん」


面倒なことは押し付けるのが一番だよな

その為に

こいつを友達の位に置いてやってんだから


「いやぁ本当に今日は参ったわぁ」

「何で追いかけられてたの?」


「それがさぁ夕べはハルヒとデートして

 俺の部屋へ連れてったのよ」

「ハルヒ?」


「そしたらユアが俺のベットに居た訳さ 

 すっ裸で」

「すっ裸⁈」


「そうなんだよユアの奴

 俺を脅かそうとして、可愛いだろぉ」

「あああ、うん・・・」


これが童貞君の反応か

笑える


「その場は上手く誤魔化して

 何とか収めかけたのに

 酔っぱらったレイカが来ちまって

 ショウタに会いたくてって

 可愛い奴だろぉ

 でも俺は顔を青くしたねマジで」

 「はぁ、レイカ・・・」


「ところがさ、

 今度は女同士の喧嘩になったのよ

 誰が俺の彼女かってさぁ」

「女の争いねぇ」


「まぁ俺は蚊帳の外で

 高みの見物ってやつぅ」

「見物ねぇ」


「余裕ぶっこんで見てたら朝になってた

 笑うだろ、ずっと喧嘩してんだぜ女達」

「凄い元気だねぇ」


「ところがよぉ朝っぱらの8時に

 マイナが来たんだよ

 朝っぱらからだぞ

 今日は休日だから掃除してあげよう

 って思ったんだってさぁ

 可愛い奴だよなぁ俺に尽くすなんて」

「まぁ、いいだねっ」


「それで新たなバトル勃発して

 矛先が急に俺に向いた訳よ

 俺は脂汗ダラダラよぉ」

「それは焦るねぇ」


「もう焦る焦る

 4人でタッグ組んで攻めてくんだぜっ

 ヤバいだろ、すっげぇ睨んでくんだぜ」

「それは怖いね。で、本命は誰なの?」


「俺はいい加減な男じゃ無いんだよ

 みんな本気で愛してる」

「あぁ全員に本気なんだぁ」


「あいつらもダメなんだよなぁ

 俺は昔からモテるんだからさぁ

 彼女は自分だけっとか

 思っちゃダメなんだつぅの」

「アハッハッ・・・」


「なぁしばらくリクトの部屋に泊めてくれよ」

「えっ⁈あぁいやぁうん、いいけど

 仕事は?」


「大丈夫だ、心配ない有給休暇が

 たっぷり残ってる」

「そうなんだ・・・」


こいつに一人暮らしを勧めておいて

良かったぁ

俺の恰好の逃げ場じゃん

ネカフェじゃ辛いもんな


「女達に合鍵渡してあるから

 あいつらが仕事で来れない間に

 鍵交換して安全確保するわ」

「大変だね」


まぁモテ無いお前には

経験できない苦労だけどな


「あら~この曲お兄さんが入れたんでしょ~

 は~い歌って~」


「よっ待ってましたリクトさん

 歌ってちょうだいね~」

「うっ、うん」


こんな奴でも

俺のために役に立つ事もあるんだなぁ

友達にしておいてマジよかった

一生友達でいてやろっ


※巻き込まれ男へ続く

両方読んで完結の物語であります。




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